乙女ゲーの愛され聖女に憑依したはずが、めちゃくちゃ嫌われている。

星名こころ

文字の大きさ
1 / 43

01 私は誰、あなたも誰

しおりを挟む

 ――苦しい。
 息が苦しい。
 というか、息が、できない……っ――水の中!?

「がばばぼぼぼぼ!」

 叫び声を上げながら必死でもがくと、ガラスか何かが割れたような音が響き、体がどさりと硬い床に落ちた。
 床に手をつき咳き込みながら何度も深呼吸する。
 いったい何事。
 私、溺れてたの!?
 そう思って顔を上げて周囲を見回し……固まった。
 見知らぬ広い空間。白い円柱に白い大理石の床。私が座っているのは、一段高くなっている場所だった。
 私の周りには砕け散ったクリスタルのようなものと、水。

 ここ、どこ?

 再び視線を落として目に入ったのは、床についているゆるく波打つ淡い金色の髪。
 え、私、髪を染めた覚えなんてないよ? 普通に黒だったのに。しかもこんなに長くないし。
 手も……形も大きさも違う。
 服装は、床につきそうなほど長いスカートの白いワンピース。
 しかも不思議なことに、髪も服も濡れていない。

 どういうこと?
 鏡、どこかに鏡……。

 キョロキョロと周囲を見回していると、正面の両開きの扉が勢いよく開かれて、ビクッと体を震わせる。
 四人の男性がバタバタと駆け込んできた。
 三人は、なんというか、聖職者のような服装をしている。一人だけ騎士のような格好をしていた。
 聖職者に騎士って……コスプレ? 今日ハロウィンだっけ?

「聖女様……!」

「聖女様がお戻りになられた!」

 ……えっ。
 何言ってるの。なに、聖女様って。

 戸惑う私に、ひときわ地位が高そうな聖職者らしき男性が一歩近づく。
 サラサラな銀色の髪に、氷のようなアイスブルーの瞳。
 うっわ……すごい美形。日本人じゃないよね?
 彼は私の目の前まで来ると、片膝をついて視線を合わせた。
 イケメンに至近距離で見られるというあまりにも慣れないシチュエーションに、思わず目が泳ぐ。

「オリヴィア様?」

 問いかけるように彼が言う。
 私は首をかしげた。

「オリヴィアって……? 私は……」

「まだ記憶が混乱しておられるようですね」

 彼が私の言葉を遮るように言って、にこりと笑う。
 あ……怖い。この人、目が笑ってない。

「聖女様はお戻りになられたばかりでまだ混乱していらっしゃるようだ。私が部屋までお連れする」

「承知いたしました、大神官様」

 大神官と呼ばれた銀髪イケメンに手を引かれ、立たされる。
 手つきは優しいけど、有無を言わせぬ何かがある。
 逆らえないまま彼に手を引かれ、謎の部屋を出てやっぱり見覚えのない広く長い廊下を歩く。

 ここはどこなの。一体何が起きているの……!?

 奥まった場所にある扉の前で彼の足が止まり、彼が扉を開ける。
 高級ホテルのスイートルームのような広くて豪華な部屋だった。
 促されるままそこに入り、ひとまずソファに腰掛ける。
 混乱しすぎて頭が痛い。
 彼は額に手をやる私の横に立ち、私を見下ろした。
 そうしてにこりと笑う。目が笑っていない笑顔ってこんなに怖いものなんだ。

「私の質問に正直に答えてください。あなたは誰ですか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...