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第一章
第二話 お節介な人間
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一つ目の妖は急に押さえ付けていた四肢を手離した。時雨は体重を全て預けていたため腰が抜けたように木の根元に座り込む。
「うっ、ひっく、」
目の前に自分を襲っていた妖がいるのにも関わらず完全に敵意喪失した彼は俯いたまま地面に濃い染みを増やしている。時々目元を擦りしゃくり上げる彼をそのままに妖は森へ逃げていった。
「誰かいるのか?」
ふと誰かの声が森に響き、その後すぐに大袈裟に思えるほど草木を揺らす音が鳴ったが啜り泣く時雨の耳には届かなかった。
一つ目の妖が逃げたのは声の主の気配を察知したためだったのだ。
「うおっ、転校生」
こんな所で何してるの?という声が聞こえてやっと顔を上げた時雨。思わず逃げようと立ち上がるが腕を掴まれつんのめってしまう。涙ぐみながらも手を離せと睨みを効かせたが、そこでやっと時雨と声の主である同級生の瞳がかち合った。
「どうしたのその格好、それに怪我してる」
長袖長ズボンのため四肢を押さえられて付いた痣は見られていないがパッと見だけでも木の枝で引っ掛けたのかボタンが足りない服。転けたときについた膝は土で汚れている。その姿は無意識に他人の心配を誘うほどだった。
時雨は痛みも忘れるほど焦っていた。やけに真剣な表情で問われ冗談を言って流すことも、ましてや妖に襲われたなど口が裂けてもいえず噤むことしか出来なかったからだ。
目線を彷徨わせる彼の姿で何を解釈したのか「無理に聞かないから一旦家おいで」と腕を引っ張る。
「い、いい。帰る」
「親御さんに連絡入れる?スマホ貸してくれたら俺がしたげる」
「いや、別に、「こんなとこにいたのか、大丈夫か?」
「…!」
渋っていたところに時雨の妖力を辿ってきたらしい紅葉が話を遮りながらやってきた。どうやら帰りが遅いことを心配して探していたようだ。彼の怪我や服の乱れ、妖力の混ざり具合などから何があったのか大まか把握したようだ。
「親共働きだから今の時間いないよ?心配しなくても大丈夫だって」
「やっかいなの絡まれたな友達か?」
「そういう訳じゃ」
「なら怪我の手当だけでもさせて」
「え、あ、ちが、」
自分の事を転校生と呼ぶ彼の反応から分かるように今の紅葉は自分以外に視えていない。そう、彼は妖なのだ。妖力が高いと人に認識させられるようにしたり他のものに化けるようなことも出来るらしい。(元々人型のため人に見えるようになるだけだが)けれど今は状況がこれ以上拗れないように視えない姿でいたらしい。
視える人間からしたら違いなど判らないので反射的にいつもと同じように返事をしてしまったが今会話しているのは人間の方である。相手も一対一での会話を前提としているため俺が何かを発すれば必然的に自分へ向けた言葉だと解釈するだろう。偶然噛み合ってしまったが。
「視えた方が良かったか…」
着物着た見た目成人男性が俺を探しに森の中に来るのも変だと思うけど…と脳が現実逃避し始めた。そんな考えを知らない彼に手を引かれるまま彼の家へ向かった。
「ただいまー」
扉を開けてすぐ溌剌とした声で帰宅を告げる所から家族間の仲が良いと伺える。上がってと時雨に言うと、靴を脱ぎ玄関に上がるまでをにこにこと監視するかのように見つめていた。
「お邪魔します…」
返事が帰ってこなかったことから先程言っていたように留守だったのだろうと予想はつくが、家主の許可も得ずにずかずかと上がり込むには気が引けたため挨拶をして行儀正しく靴を揃えた。
洗面所を借りて手を洗い、促されてソファーに浅く腰掛けた。もちろん彼には視えていないだろうが紅葉も隣に深く腰掛けて足を組んでいる。(なんと様になることか。)
彼はリビングに置いてあった紙を見て「じゃあ遅くなるのかな」とぼそりと呟き、「これ一旦入れてからでもいいかな?冷凍食品買っちゃって」と声をかけてくる。首肯を返し、そういえば彼の片手には学生鞄とエコバックがかかっていたような気がしたなと思い出す。親は共働きだと言っていたし代わりに学校帰りに買い物をしてきたのだろう。
ちらりと周りを見渡せば落ち着いた雰囲気の部屋に似合わず壁に向かって無造作に投げつけられたように蹲る赤や黒のランドセル。その近くには可愛らしいぬいぐるみや小物がじゃらじゃらと付けられたスクールバック。テレビ台には楽しげに映る家族写真が立ててある。時雨は少し惨めになって半ば反射的に目を逸らした。
「ごめん、お待たせ。あ、飲み物いる?」
「…いらない」
彼の手には救急箱。目的は忘れていなかったようだ。あわよくばそのまま返してくれないかななどと思っていた時雨は期待を良い意味で裏切られた。彼は本当にお人好しらしい。
少し手当すれば満足して解放してくれるだろうと手などの擦り傷を見せるが、まだあるだろうとズボンを捲られあちこちの傷を手当されてしまった。手当をされていて気付いたのだが、どうやら手足首の痣は見えていないらしかった。
紅葉はというと座って眺めているのが飽きたのか人様の家を(相手に見えていないとはいえ)ウロウロと見回っていた。
「じゃあまた明日」
「ん。また。……ありがと」
手厚く手当され、外まで見送られてやっと帰路に着く。怪我が多いと自覚済みの時雨は過保護な彼にはまた絡まれそうだとため息をついた。
「日が落ちてきたな。夕日が綺麗だ。」
「うん。綺麗」
大きな夕日がゆっくりと落ちてくる。真っ赤な日があたりを照らしそれに向かって鴉が羽ばたく。あの鳥も家族の元へ帰るのだろうか。夕焼けを見ていると心がいつも密かに、静かに、沈んでいく。
「にしても今日は災難だったな」
「ほんとだよ。転校初日なのに」
「厄介なとこはどこの人も妖も変わらず、だな。」
「あははっ言えてる」
──
─
「ただいまー疲れたあ…」
帰ってすぐソファーへ雪崩込む。やはり自分の家が落ち着く、と深く息を吐いた。
「お疲れさん。」
労わるように頭を撫でてくれる紅葉に疲れきっている時雨はすぐに瞼の奥に宝石を隠した。その後暫し細く柔らかな猫っ毛を毛並みに沿って撫でる。その手付きは宝物を愛でるかのように恵愛に溢れている。彼、時雨が深く眠った後自分が着ている羽織りを毛布替わりに掛けてやる。
「…面倒なことになったな」
思わず声に出てしまったが本当に面倒な事になった。時雨の妖力にまとわりつくように絡む別の妖力。特に強く感じる胸には恐らく印があるはずだ。頭を抱えたくなるのを抑え、それよりも食事だと思考を変える。とりあえず夕食ができるまで寝かせておこうとその場を離れた。
─
──
「風呂沸いたから行ってこい」
夕食を食べ、時雨がソファーで寛いでいるところに皿を洗っていた紅葉が声をかけた。こくこくと揺れ動く後頭部が見えたためだ。
「…ん……。」
曖昧な返事。恐らく反射的に返事をしただけで内容までは理解していないと窺えた。仕方なく手を引き脱衣所まで連れて行くが、腕を上げたまま動かない時雨の服を脱がせ風呂場へ促す。
脱いだ時に見た肌にはやはり印があった。走って疲れたとはいえここまで眠そうにするのも印が関係しているのだろう。
風呂から上がった時雨の髪を乾かし布団に連れて行ったりと甲斐甲斐しく世話を焼く姿は母親のそれだ。寝付いたことを確認しさらりと甘い匂いのする髪の毛を撫で小さく「行ってくる」と声を掛けた。
少し風があるが丁度良い気温。気合を入れるため袖を襷でまとめ、木々の生い茂る森へと足を進めた。
「さて、と。どこだ?」
昔森に住んでいたことがある紅葉はお陰様で夜目が利く。とはいえわざわざ夜に探しに来たのは探し物が時雨の学生鞄であるからだ。明日も朝から学校があるため視覚や微かに残った妖力を追って探しているのだ。
時々木の枝に感じる時雨の濃い妖力(おそらく血液だろう)などに顔を歪めながらも何とか見つけることができた時には夜中とも朝方とも表現しずらい時間となっていた。
妖怪に三大欲求など存在しないが人間である時雨と生活していくうちに習慣となってしまった眠気を感じ欠伸を噛み殺す。
帰り道、ふと空を見上げ都会ではあまり見れなかった星空が視界に広がり目を見開く。日の出前の遠くの空が琥珀色に色付きグラデーションのように濃藍と混ざり合っている。濃藍に散りばめられた星はまるで宝石の様。
感嘆の溜息をもらしそうになるが、ぐっと堪え目線をずらした。
「これはあいつと一緒じゃなきゃな。」
美しいものは共有し、共感したい。紅葉も時雨も想いは同じだ。見て見ぬふりをする訳では無いが今は一瞬忘れて彼の待つ新居へと向かうのだ。ここはきっと星空が綺麗だという土産話をぶら下げて。
「うっ、ひっく、」
目の前に自分を襲っていた妖がいるのにも関わらず完全に敵意喪失した彼は俯いたまま地面に濃い染みを増やしている。時々目元を擦りしゃくり上げる彼をそのままに妖は森へ逃げていった。
「誰かいるのか?」
ふと誰かの声が森に響き、その後すぐに大袈裟に思えるほど草木を揺らす音が鳴ったが啜り泣く時雨の耳には届かなかった。
一つ目の妖が逃げたのは声の主の気配を察知したためだったのだ。
「うおっ、転校生」
こんな所で何してるの?という声が聞こえてやっと顔を上げた時雨。思わず逃げようと立ち上がるが腕を掴まれつんのめってしまう。涙ぐみながらも手を離せと睨みを効かせたが、そこでやっと時雨と声の主である同級生の瞳がかち合った。
「どうしたのその格好、それに怪我してる」
長袖長ズボンのため四肢を押さえられて付いた痣は見られていないがパッと見だけでも木の枝で引っ掛けたのかボタンが足りない服。転けたときについた膝は土で汚れている。その姿は無意識に他人の心配を誘うほどだった。
時雨は痛みも忘れるほど焦っていた。やけに真剣な表情で問われ冗談を言って流すことも、ましてや妖に襲われたなど口が裂けてもいえず噤むことしか出来なかったからだ。
目線を彷徨わせる彼の姿で何を解釈したのか「無理に聞かないから一旦家おいで」と腕を引っ張る。
「い、いい。帰る」
「親御さんに連絡入れる?スマホ貸してくれたら俺がしたげる」
「いや、別に、「こんなとこにいたのか、大丈夫か?」
「…!」
渋っていたところに時雨の妖力を辿ってきたらしい紅葉が話を遮りながらやってきた。どうやら帰りが遅いことを心配して探していたようだ。彼の怪我や服の乱れ、妖力の混ざり具合などから何があったのか大まか把握したようだ。
「親共働きだから今の時間いないよ?心配しなくても大丈夫だって」
「やっかいなの絡まれたな友達か?」
「そういう訳じゃ」
「なら怪我の手当だけでもさせて」
「え、あ、ちが、」
自分の事を転校生と呼ぶ彼の反応から分かるように今の紅葉は自分以外に視えていない。そう、彼は妖なのだ。妖力が高いと人に認識させられるようにしたり他のものに化けるようなことも出来るらしい。(元々人型のため人に見えるようになるだけだが)けれど今は状況がこれ以上拗れないように視えない姿でいたらしい。
視える人間からしたら違いなど判らないので反射的にいつもと同じように返事をしてしまったが今会話しているのは人間の方である。相手も一対一での会話を前提としているため俺が何かを発すれば必然的に自分へ向けた言葉だと解釈するだろう。偶然噛み合ってしまったが。
「視えた方が良かったか…」
着物着た見た目成人男性が俺を探しに森の中に来るのも変だと思うけど…と脳が現実逃避し始めた。そんな考えを知らない彼に手を引かれるまま彼の家へ向かった。
「ただいまー」
扉を開けてすぐ溌剌とした声で帰宅を告げる所から家族間の仲が良いと伺える。上がってと時雨に言うと、靴を脱ぎ玄関に上がるまでをにこにこと監視するかのように見つめていた。
「お邪魔します…」
返事が帰ってこなかったことから先程言っていたように留守だったのだろうと予想はつくが、家主の許可も得ずにずかずかと上がり込むには気が引けたため挨拶をして行儀正しく靴を揃えた。
洗面所を借りて手を洗い、促されてソファーに浅く腰掛けた。もちろん彼には視えていないだろうが紅葉も隣に深く腰掛けて足を組んでいる。(なんと様になることか。)
彼はリビングに置いてあった紙を見て「じゃあ遅くなるのかな」とぼそりと呟き、「これ一旦入れてからでもいいかな?冷凍食品買っちゃって」と声をかけてくる。首肯を返し、そういえば彼の片手には学生鞄とエコバックがかかっていたような気がしたなと思い出す。親は共働きだと言っていたし代わりに学校帰りに買い物をしてきたのだろう。
ちらりと周りを見渡せば落ち着いた雰囲気の部屋に似合わず壁に向かって無造作に投げつけられたように蹲る赤や黒のランドセル。その近くには可愛らしいぬいぐるみや小物がじゃらじゃらと付けられたスクールバック。テレビ台には楽しげに映る家族写真が立ててある。時雨は少し惨めになって半ば反射的に目を逸らした。
「ごめん、お待たせ。あ、飲み物いる?」
「…いらない」
彼の手には救急箱。目的は忘れていなかったようだ。あわよくばそのまま返してくれないかななどと思っていた時雨は期待を良い意味で裏切られた。彼は本当にお人好しらしい。
少し手当すれば満足して解放してくれるだろうと手などの擦り傷を見せるが、まだあるだろうとズボンを捲られあちこちの傷を手当されてしまった。手当をされていて気付いたのだが、どうやら手足首の痣は見えていないらしかった。
紅葉はというと座って眺めているのが飽きたのか人様の家を(相手に見えていないとはいえ)ウロウロと見回っていた。
「じゃあまた明日」
「ん。また。……ありがと」
手厚く手当され、外まで見送られてやっと帰路に着く。怪我が多いと自覚済みの時雨は過保護な彼にはまた絡まれそうだとため息をついた。
「日が落ちてきたな。夕日が綺麗だ。」
「うん。綺麗」
大きな夕日がゆっくりと落ちてくる。真っ赤な日があたりを照らしそれに向かって鴉が羽ばたく。あの鳥も家族の元へ帰るのだろうか。夕焼けを見ていると心がいつも密かに、静かに、沈んでいく。
「にしても今日は災難だったな」
「ほんとだよ。転校初日なのに」
「厄介なとこはどこの人も妖も変わらず、だな。」
「あははっ言えてる」
──
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「ただいまー疲れたあ…」
帰ってすぐソファーへ雪崩込む。やはり自分の家が落ち着く、と深く息を吐いた。
「お疲れさん。」
労わるように頭を撫でてくれる紅葉に疲れきっている時雨はすぐに瞼の奥に宝石を隠した。その後暫し細く柔らかな猫っ毛を毛並みに沿って撫でる。その手付きは宝物を愛でるかのように恵愛に溢れている。彼、時雨が深く眠った後自分が着ている羽織りを毛布替わりに掛けてやる。
「…面倒なことになったな」
思わず声に出てしまったが本当に面倒な事になった。時雨の妖力にまとわりつくように絡む別の妖力。特に強く感じる胸には恐らく印があるはずだ。頭を抱えたくなるのを抑え、それよりも食事だと思考を変える。とりあえず夕食ができるまで寝かせておこうとその場を離れた。
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「風呂沸いたから行ってこい」
夕食を食べ、時雨がソファーで寛いでいるところに皿を洗っていた紅葉が声をかけた。こくこくと揺れ動く後頭部が見えたためだ。
「…ん……。」
曖昧な返事。恐らく反射的に返事をしただけで内容までは理解していないと窺えた。仕方なく手を引き脱衣所まで連れて行くが、腕を上げたまま動かない時雨の服を脱がせ風呂場へ促す。
脱いだ時に見た肌にはやはり印があった。走って疲れたとはいえここまで眠そうにするのも印が関係しているのだろう。
風呂から上がった時雨の髪を乾かし布団に連れて行ったりと甲斐甲斐しく世話を焼く姿は母親のそれだ。寝付いたことを確認しさらりと甘い匂いのする髪の毛を撫で小さく「行ってくる」と声を掛けた。
少し風があるが丁度良い気温。気合を入れるため袖を襷でまとめ、木々の生い茂る森へと足を進めた。
「さて、と。どこだ?」
昔森に住んでいたことがある紅葉はお陰様で夜目が利く。とはいえわざわざ夜に探しに来たのは探し物が時雨の学生鞄であるからだ。明日も朝から学校があるため視覚や微かに残った妖力を追って探しているのだ。
時々木の枝に感じる時雨の濃い妖力(おそらく血液だろう)などに顔を歪めながらも何とか見つけることができた時には夜中とも朝方とも表現しずらい時間となっていた。
妖怪に三大欲求など存在しないが人間である時雨と生活していくうちに習慣となってしまった眠気を感じ欠伸を噛み殺す。
帰り道、ふと空を見上げ都会ではあまり見れなかった星空が視界に広がり目を見開く。日の出前の遠くの空が琥珀色に色付きグラデーションのように濃藍と混ざり合っている。濃藍に散りばめられた星はまるで宝石の様。
感嘆の溜息をもらしそうになるが、ぐっと堪え目線をずらした。
「これはあいつと一緒じゃなきゃな。」
美しいものは共有し、共感したい。紅葉も時雨も想いは同じだ。見て見ぬふりをする訳では無いが今は一瞬忘れて彼の待つ新居へと向かうのだ。ここはきっと星空が綺麗だという土産話をぶら下げて。
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