異世界マイスターの知恵は一番強いチートだった

Impulse

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俺は王国の兵士長

勝ち目が無いバトルほど面白いものはない

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 さっきから同じことを繰り返し続けている。
 攻撃して避けて攻撃して避けての繰り返しだ。

「シャインバレット! シャインバレット! シャインバレット!」

 撃って撃って撃ちまくるが、ハードメテオで破られる。
 まず竜と戦ってまともでいることが奇跡なのだから、勝とうなんて100年早い。
 そんな事をしていると、先に手を出したのは竜の方だった。

 飛んできて剣を振り下ろしたのだが、その剣のあふれ出てくる魔力は今までとは比べ物にならなかった。
 それを受け止めたのだが、エンシェントブレイドはもたなかった。崩れ散ってしまった。次に出すにはあと1日はかかるだろう。

「・・・・・嘘だろ。ちょっと強すぎはしませんか?」
「グェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェ」

 奇声は止まらない。勝ちが確定したと思って喜びの声を張り上げたのだろうか。
 竜の猛攻も止まらない。剣をゆっくりと持ち上げ、こちらに近づいてくる。気迫は普通の人間じゃ失神しちゃいそうなものだった。
 受け止めるものは俺には無く、避けるしかなかった。

「クッソが・・・・・倒せないし体力もなくなってきたし………」

 俺の欠点を見つけた。光の勇者の動きはできるが体力までは補えない。体力が減る量が少なかっただけで、体力が増えたわけではない。
 俺の災難はまだ続く。
 竜の魔力が増え続けていることだ。俺は下がり続けている中、竜は上がり続ける。まさに絶体絶命だ。
 光の勇者は完結していない話だ。その時俺が考えていた設定を思い出せれば勝てるのだが、そこまでは覚えていない。当時は本気で忘れようとしたんだからな。

「くぅうぅぅぅ・・・・・これはまだ使いたくなかったんだけどな~」

 完全に死の間際にいるのに、躊躇する奴は本気でアホだと思う。
 俺は残り少ない魔力を使って、ある魔法・・・・・攻撃魔法ではない魔法を放つ。
 怒涛の剣撃を見せつけられる中、隙を出さずにどうやって長時間の時間を得られるか。
 禁忌に触れるには、どんどん新しい魔法を使っていくしかない。

「リロケイション!」

 完璧に避けられる魔法・・・・リロケイション(relocation)。相手と自分の位置のみを入れ替える。簡単そうに見えるが、とても高度な魔法だ。
 そして入れ替えて竜が戸惑っている瞬間に、俺は庭園の草木の中に隠れる。
 竜は歩くのが遅く、飛んだらこっちから丸見えなので簡単に逃げられた。それにあっちから見えないよう透化の魔法をかけている。短時間だが救済措置で光の勇者に覚えさせといたのだ。

「はぁはぁはぁ・・・・・疲れた・・・もう・・・・限界。」

 もう体力は限界を達していた。
 だからもう躊躇しない。

死亡通告デスチャイム・・・・・」

 そのままの意味の魔法だ。ただの死亡通告だ・・・・相手にとっての。
 相手を殺すと宣言する魔法だ。なら殺すために必要なのは? 力だ。
 この魔法は自分の体の限界を解き放つ魔法だ。
 庭園中に何かのチャイムが鳴り響く。俺が鳴らしている音が鳴り響いている。

 魔法発動完了には一分くらいかかってしまう。見つかる可能性があるまま、起動の過程に入る。
 胸、頭、手足、全身に痛みが走る。叫びたくても叫べない状況にもがき苦しむ。

「く・・・・くぁ・・・きっ・・・・・かぁぁ・・・・」

 苦しい。でも耐えなきゃいけない。ただ異世界に来ちゃいけなかったと痛感しそうになったが、俺はそう思うのをやめた。
 そして一分が経った。時が来たのだ。

「絶対にやってやらぁあああああああああああああああぁ」

 その叫び声に気付いた竜は奇声を放つ。

「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ」

 俺は力がとてもじゃないほどみなぎって来た。魔力、体力、筋力、すべての力が高まっていく。
 痛みが治まってきて、俺は立ち上がった。戦場に、立ち上がった。
 竜が剣先を俺に向けて飛んでくる。

雷斬ライキリ!」

 先ほどとは比べ物にならない雷斬ライキリを放った。
 剣を合わせた時に分かる、不利の二文字。俺はその時改心した。勝ち目がないバトルほど面白いものはないと。
 互角に近いが、竜の方がまだ力強い。だが、先ほどよりは断然強くなっている。

「はぁあああああああああああああああああああああああああぁ!」
「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ」

 奇声のバトルにも入った。
 今まで出したこともない声を出したと思う。
 
 俺は一回後方に下がり体制を整える。
 俺は高まっている魔力で確信した。シャインバレットよりも、ドラグシャイニングよりも強い魔法が使えると。

「光の槍!」

 俺は手を天にかざし、光と雷でできた槍上の魔法を出現させた。
 威力はドラグシャイニングを大きく上回る5倍の威力。
 竜殺しの一撃とまで言われた魔法だ。黒歴史ワールドでは、世界破滅級とまで言われたレベルだな。

 そして天に掲げている手を、勢いよく前に向ける。
 その衝動で槍が高速で竜に向かって動き出す。
 俺は期待と不安で喉を大きく鳴らした。大爆発が起き、竜の周りは煙に包まれた。



《ここのコーナーは、当分お休みです。ああ、私の出番が・・・・・・_| ̄|○》
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