異世界マイスターの知恵は一番強いチートだった

Impulse

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俺は王国の兵士長

ヴァルの本懐

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「うぁああああああああああああああああああああああああああああぁ!」

 俺は叫びながら奈落の底へと落ち続けていた。
 近づいてくる「死」を、瞬時には受け止められなかった。
 まだ体は重く、魔法も含めて自分の力を全く使えなかった。
 飛ぶ以外にも助かる方法はあったのだが、それが出来なくちゃあもう死ぬ。

 どんどん光から遠ざかっていく。
 もう俺は目をつぶり死ぬという現実を受け止めた。
 姫様の声が聞こえてくるが、本当に聞こえてきているのか幻聴なのかは一生分からないだろう。もう死ぬのだから。


――あなたは死んではいけない


 誰だ・・・・・?


 どこからか声が聞こえてきている。
 たぶん幻聴だろう。


――ヴァルキュリアです


 ヴァルキュリア・・・・・ヴァルって呼べなかったな・・・・・ごめんな・・・ヴァル・・。


――もう一回呼んでください


 え?・・・・・・ヴァル?


 何故か自然と涙が流れて来る。
 呼べなかったことを悔まずにすんだからだな・・・・・。
 死ぬ間際なのに笑みがこぼれてしまった。


――もう一回


 ヴァル


――もう一回


 ヴァ・・・・・ル?


――セカイさん、大好きです


 そう聞こえたとたんから唇に何か柔らかい感触があった。
 目を開けると、白髪のとてもきれいな女の子が俺にキスをしていた。
 死ぬ間際にファーストキスが出来てよかった。

「お、おまっ・・・・・何を・・・・・」
「セカイさんともっとキスしたかったのですが、残念です。」

 その声は完全に女神の声だった。ヴァルと連呼したのが恥ずかしい。
 笑みを浮かべたヴァルの姿は、女神のようにかわいかった。いや、女神なんだよな。

「では戻りましょう。」
「戻る?」

 今落下中なのに・・・・・落下中?

「う・・・・ううう・・・浮いてる!?」

 落下していなく、ヴァルに抱かれて浮いていた。色々と当たって気持ちいい。
 ヴァルが言ったことは、地上に戻してくれるということだと俺は気づいた。

「でもお前、宝石になったんじゃ・・・・・」
「なりましたけど、ヴァルって聞いた途端なんか湧き上がってくるものがあって、それで宝石が壊れちゃって・・・・・そっからこうなったので、助けてキスしました。」
「いやちょっと待て・・・・・何でキスした?」
「セカイさんが大好きだからです!」

 この状況で言われてもそこまでうれしいとは思えないのだが。
 どんどんヴァルは上昇していき、光が近くなっていく。

「大好きって軽々しく言うなよ・・・・・」
「私は本気ですよ。」

 そう言うと穴の出口はもう目前のとこまで迫っていた。

「セカァアアアアアアアアアアアアアアアアアァイ!」

「姫様・・・・・」
「それじゃあ行きますよ!」

 勢いよく空中に飛び出した。
 天まで届く高さまで飛び、そのまま急降下していく。
 見てみると、全然歯が立っていなかったがレイが魔物と戦っていた。
 傷だらけで辛そうで・・・・・・・

「セカイさん、エンシェントブレイドをもう一回出してください。」

 そう言われたので、空中で叫ぶ。

「エンシェントブレイド!」

 重力操作から解き放たれていた体は、負荷がかからずエンシェントブレイドを出せた。

「どうすんだ?」
属性付与エンチャントをエンシェントブレイドにします。」
「分かった。何をすればいい」

 急降下しているはずなのだが全然地上につかない。

「闇に勝てるのはなんだと思いますか?」
「は?・・・・・光とか?」
「それもありますが、闇に勝てるのは、光ともっと強い闇です! 私は闇の力を剣に込めます。ですからセカイさんは・・・・・」
「光だな!」
「はいっ!」

 女神なのに闇ってどうなんだと思ったが今はどうでもいいので考えることをやめた。
 俺は意識を剣に集中させ、光の力を剣に注いでいく。

「出来ました!」

 そう言ってエンシェントブレイドを見たら、白と黒の何かがエンシェントブレイドの元の形が見えないほどまで包み込んでいた。

「なんだこれ!」
「名付けてゼロエンチャントです。プラスマイナスゼロですから、光と闇で。」
「お、おう・・・・・」

 どんどん地上が近づいてくる。
 このままだと顔面が当たる。

「行きますよ!」

 そう言って体制を整わせてくれた。

「ああ!」

 そう言って大きな音を立てて着地した。
 ヴァルはずっと抱きしめてくれていた。
 剣先をキーサードを向けて俺は言う。


「さあキーサード、本番と行こうじゃないか!」

 
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