世界を救った勇者は迫害され、獣人と空中領地で都市を築く。

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実行当日

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宿の床に並べられた魔導具とポーション、それからいくつかの残骸をリリーはエアに説明していた。「ってこと。まぁとりあえず八種類と予備で二種類だけは覚えるように。それからアクラムから頼まれた人化の秘薬」マジックボックスにしまい立ち上がる。「アクラムの家に行くけど着いてくる?」エアに問いかけるとエアは無言で頷いた。宿を後にして屋敷へ向かうとすぐにアクラムが飛んできた。暇をしていたのかそれとも暇だったのか。「秘薬ができた。そっちは例の方を進めているか?」部屋に通されすぐに秘薬を渡したリリーはそう聞いた。アクラムは返答の代わりに複数枚の書類を手渡した。「本当にあの期間で用意するなんて」「それは僕のセリフですよ。ところで弁当箱の感想を聞き忘れてましたが」リリーはアクラムの耳元で「明日くらいに王様の前で美味しさを説いてやるから来なよ」と告げた。アクラムはニヤつき外野のメイドとエアは顔を見合わせるばかりだった。
屋敷から出て獣人の多いと言われる地区に向かった。「リリー、何しに行くんだ?」「実は計画に伴って協力者を募っていたのさ」人間側に着き多くの益を得た獣人達が独自に作った集落だ。役人が入口に立っているがこれは中からも外からも干渉させない為の特別措置。特殊な事例がない限りは入れない。「国交に伴っての視察で中を見たいと申請していたセオリィ・キサリギィだ」ここに来てからほとんど出番の無かった偽名を再び口にする。役人が魔導具で体を上から下まで検査し、その後許可証が発行された。「くれぐれも刺激しないように」
土地の広さはざっと50マオジだ。農村部の耕作者が持つ平均耕作地が3マオジほどと考えれば小さい。しかしこの国で虐げられている獣人が一国内に専用区画として持つにはとても広大だ。「くれぐれもとは言われたけど、何をしたら怒らないかとか分からないけどね」ため息をつきながら探知をかける。「りり…セオリィは本当に全て獣人を受け入れる予定なのか?」人気のない通路を奥へ進む。「ここに居るのは生き残る為に最善を尽くした者達だ、村長に話は通してある」
ラアカ・バランシードこと村長が目の前に現れた。「すまんの、息子不在で私のみで話しを進めることになるんじゃが」犬系か毛が多く表情が読みにくい。「いえいえ、こんな馬鹿げた話を聞いてくれるだけでも御の字です」村長の家に通されエアと座る。冷たい土の感触がやや心地よい。「お茶を三つと菓子を頼む」奥の台所にいる女の子に声をかけると景気良く「はーい」と帰ってきた。「孫娘でな、可愛いんじゃ」こればかりは顔の動きが読めたと喜ぶリリー。「それで本題ですが、今いるこの区画より広く身分も安定した暮らしに反対意見が2割ほど出ていると」リリーの提案は美味すぎるのだ。うますぎるがゆえに疑心暗鬼になる者もいた。「そうじゃな、可能ならば一度何人かを視察に行かせたいと言ったじゃろ?アレは可能か」「少し時間を貰えたらちゃちゃっと作れますよ」村長の家を出てすぐにある普段使われない集会場にリリーは転送陣を組んでいく。「魔石をここに置いて、そこから……」何度組んでも複雑な式を暗記するのは難しい。

転送陣-
生物を構成する五つの基礎がある。表として肌、その対比に肉。それからまた表に骨、対比で内蔵。最後真ん中に頭。これが近代では支流の考え方であり、これを応用して五つの石に情報を刻み元の物体を分解、転送先で構築といった流れを取る。
成功率は12%であり殆どの国でも設計書を持つこと自体が投獄は免れない重罪である。

「転送陣、なんてものを」村長が忌避するほど危険性、違法性のあるものだ。「安心してください、転送陣ですがこれは亜空間に接続し、その中で一度安全なルートを構築し転送先に繋げるものです」作りながらリリーが細かい説明をしていく。転送陣に使われる魔石は無色で六角のもの。それを三角形に配置して真ん中にマジックボックス。起動させてマジックボックスの上に立つと一度吸い込まれ、亜空間に飛ばされる。亜空間は特殊な魔法で固定を行い転送先の陣まで持ってくる。
「ほか質問は?」「亜空間についてじゃが」

亜空間-
亜空間とは最初に見つけられた異質な空間、魔王城やらが世界の理に違反をした事でその歪みを治す為に現れたとされている。歪みは推定で億単位の年数を超えても消えないほどだ。その空間は魔法で固定すればいつでも行き来できる。マジックボックスの搬入口は4箇所に固定軸と底面に移動記録反映軸と言われる機構が備わっていてそれによりどこに移動しても同じものを取り出せる。
その一方で人が入らないのはそもそもマジックボックスの入り口が小さいや、途中で閉ざされた場合の生還率が0に近いほどリスクがあるから。

「ほとんどの危険要素は回避できるように作ってありますよ。試しに私と入りますか?」村長と一緒に陣の真ん中へ立つ。「魔導具-ワフィプクリスション」配置された石が輝き出して2人を包み込んだ。リリーと村長は亜空間に来ていた。「ここが亜空間、何とも居心地の悪い」整備したとはいえ定期的に歪みが治っては増えてを繰り返すせいで道標に敷いた線が全てぐにゃぐにゃになっている。「どうですか?このままあと十歩ほどのところに見える光が出口ですよ」外に出ると一風変わった場所に出た。小さな村といえば納得はできるが村長は獣特有のソレからかなりの高度にコレがあると知る。「ようこそ、私の村へ」「驚きじゃコレは」村長と村を見て回る。子供達が数人気付きこちらにやってきた。「りりー!りりー!」むらむらと足回りを固められ動けなくなるリリー。「モビラサ村の子達じゃないか」村長の言葉にユノが反応する。「ラアカのじぃ?!」「おぉアロンの孫娘か立派に育ったなぁ。してアロンの奴はどこじゃ」まだあまり語っていなかったこの村が、ここにきた経緯を嘘を交えつつ全て話した。「なんと惨い、ワシらとの契約なんて初めから紙切れとでも思っていたのか!」バランシードが後悔の涙をこぼす。「今日乗った魔法陣の特大版をもう作ってある。どうする?」少しだけ考えたいと言うバランシードを子供たちのところに置いてリリーは領土拡大を始めた。特殊魔石の上に貼ってある魔術刻印へ魔力を注ぐ。モビラサ村と呼ばれた地域の土を転移でこちらに持ってきて地面を広げる。木材と石材は腐るほど、村のマジックボックスに入っている。支度は完璧だ。リリーが外に出るとバランシードが頭を下げていた。「これから世話になる、よろしく頼むのぅ」反対派を後はどうするかと言う問題に直面したが、反対派も連れてくれば納得すると言うことで計画は最終段階へすすんだ。
エアのいる週会場まで戻り、村長の家に入ると少女が少し怒り気味で立っていた。「エアくん何も教えてくれないし!」「ヒスイ仕方ない、僕は何も聞いていないんだ」「もー!」2人はいつのまにか仲良くなっていたようだ。帰りが遅い三人を心配して集会場に呼びにきたところから始まり今に至るのだからどこか獣としての順応でも働いたのだろう。「ひ孫も見れるのがノゥ、楽しみじゃ」ぼそっと呟きながら村長は数枚の紙を書き出した。「今から書く文書を配達物に紛れ込ませてもらいたい。コレはワシらしか読めない特殊な文字じゃ」すでに賛成派が何回にも渡り外に出てある程度の周知はしているらしいが、表に獣人を出さない家が多かったりして難航している。「後は反対派と人間派の動きか」リリーが訝しげな表情をする。村長はとあることを言った。「うちの村と王城を行き来するブルンズと言う獣人が裏切り者じゃ。あいつは益のためにしか動かん」リリーは少し考えた後、何かに納得をつけた。「よしっ、後はコレ配って明日に備えるだけだな」帰り支度をしようとすると村長の孫娘ことヒスイが泊まっていかないかと言い出した。「そうだね、宿はあるけど別にあんま使ってないし。とりあえず入り口の人に伝えとくよ」役人は1人だけになっていた。壁にもたれてゆっくり煙草を吸っていた。「ふぅ、明日は荒れそうだな」「隣失礼するよ」役人にこちらに迎えを寄越してほしいと話した。「獣人達と寝泊まりか、あいや……別に、俺もこの国に生まれてなければ彼等と和解できたのかもな」美味しそうに煙草を吸う役人。「俺が何でこんな仕事してるかわかるか?」「分からないけど、アンタがここの担当してからはかなり良好なんだろ?」情報収集の際に何度も名前が上がり数人からは彼も村に引き入れてほしいなんて意見が出る程の男。「生まれも育ちもこの国で、両親が優しいのはともかく使用人の獣人も何かあればすぐに駆けつけてくれたし、面白いこともたくさん聞けた。今は侍従関係があったからだと思うが、それでもあの時間は、ああやって過ごした俺は確かに獣人達と共に、もしくは近くで暮らしたいって言ってんだ」リリーがどこからともなく酒を取り出した。「安心してくれ明日には獣人たちみんなを救い出す」酒を受け取ると勢いよく飲み干した役人。「改めて自己紹介だ、俺はビースタ・クホン・エノシだ」「クホン、東系……私が最初っから偽ってること知ってたな?私はリリーだ」すっかり夕暮れだ。この辺は獣人専用区画の外でも獣人が多く一般人が少ない。「リリーは壮大な計画を遂行しようとしてるみたいだけど、成功の見込みは?」「過大評価するなら35パーは超える」リスクは高機能演算機で毎回算出される村長の死や村長の孫娘の死、それから……。「それから私達の計画が遂行されればクホン、お前は死ぬ」「別に構わないよ、計算が正しければ僕が死ぬことで最善の結果が得られるんだろ。多くの犠牲より僕1人の犠牲で済むなら安いさ」震える手で酒の入ったコップを口に運ぶクホン。「そんな顔して命を安売りするな。怖いなら私のところに来るかい?」「あぁ、それもいいな。でも俺はもう遅いからな」コップを地面に置くとクホンはフラッと消えていった。

不安要素をいくつか残したままリリーとエアは王城へやってきた。入り口から帰るまでのルートを構築していくリリー、看守の位置と癖を的確に探る。「お二人方、もう少し辛抱ください。あと6回ほど階段を上がればつきますので」ただ長いだけでなく何度も魔導具によるスキャニングをされている。百歩に一回ほどのペースでタイルには仕掛けがある。照明には照明から発せられる特殊な光を壁の絵が吸収して特殊な波形に変える魔導具、最先端過ぎる厳重装備。「参考に聞きたいんだけど、これって何商会のもの?」案内人は別に気付いたことに反応を示さず淡々と説明し出した。「そうですねラゴニハ商会とクラージュ商会から多大な支援を得ています。まぁ東の国ですとクラージュ商会ですか?あのあたりが防犯として有能ですよ」「確かにうちの国にも販売業者が何度か来ていたね。高度な刻印技術には舌を巻いたよ」ラゴニハ商会は言わずと知れた大国系商会で、年商は上位冒険者の年間に稼ぐ額600万相当で見るとその冒険者を100万人規模で抱えることが出来るほどだ。主に感知系に力を入れていたはずである。ラゴニハ商会がバックに絡んでいるのは当たり前だ。彼らは奴隷制度が整備される以前から働き手として獣人を起用してかなり酷使していた関係で今はこの国の工場でしか大量生産のラインを確保出来ない。となればズブズブなのはいうまでも無い。問題はクラージュ商会だ、イスール家が買収した軍事商会で数多くの国で軍備契約などを結んでいる。武器は本来個々に合わせた調整が必要で大量生産されたものを使うより合わせられたものを使った方が格段に差が出る。その個々に合わせたものを沢山安価で提供するのがクラージュ商会。商会の中でも稀有な特殊取引制度まで有している。「クラージュ商会の魔導具かー」
アクラムからは事前にかなりの情報を貰っていた。アクラムがこの国に来た目的はこの国の獣人を全て人に変えて自国で身元不明人の受け取りを名目に救い出すというものだった。その為、クラージュ商会を買収して、この国に防犯用の魔導具を売るとき特殊魔石内部に記憶刻印を刻み付け、定期検査とは名ばかりの調査を行い続けたという。
「我が国も誇るべく特制なのでね、君達の国とも今後は良い取引を続けたいと思うよ」「ですね、特制ということは軍事面において一歩踏み込んだ設計開発が可能ですものね」特に意味のない会話。今稼いでいる商会やギルドの話、それから…
商会とギルドの関係悪化についてが特に強い情報だった。イスール家が管轄する商会であるパテニエラ商会が冒険者ギルドの大手であるフィジンド・バッラフと討伐した魔物の処遇で大揉めした。これによりイラリンナとアービアシアの国家情勢も悪化しているという。イラリンナは主に冒険者を多く抱えている為にフィジンド・バッラフを擁護し、アービアシアは魔石の原産国を謳うだけあってパテニエラ商会を擁護。元々別事情で争っていた二国がこれを気にかなり危ないラインまで来ているという。もちろん獣人を多く起用するこの国では冒険者などいない。商会擁護派であり、これにより獣人が居なくなればこの衝突問題にこの国は冒険者ギルドと。それから多くの商会からの信用を失い崩壊する。イスール家がこの国で土地を建てる為の権利をその領土の7割程買い占めている。この国は隣のロージビンエ国と裏で通じて今回の衝突問題について看破しているはずだが、それは獣人あってのもである。
最終演算ではこの国を崩壊させて書類などの名義上はイスール家が国民受け入れをしてそれから私の領土に住人として迎え入れる。アクラムには領土を認めるために必要な様々な書類、王族審議認状や帝国領認状まで全てを揃えてもらった。アービアシアの身元認定証までセットだ。「この扉を抜ければ王室となっております。無礼のないように」思考を巡らせている間についてしまったようだ。金の造形が輝く印、家名の三匹の蛇が絡み合う短剣。ラブリスフィラアド家の物だ。気付けば案内人は消えていた。閑散とした廊下はどこか異質な気配を漂わせている。「エアこの先は罠だが突き進む、しっかりとついてきなよ」扉を勢いよく開けてすぐに魔導具を構える。「よくぞまいられた」椅子に座る王様に向かってリリーは魔法を放った。「魔導具-マジックカットクラゥスセッション!」空間が断裂され、鏡が割れるように全てがズレていく。王様も柱も、床も天井に下がった照明も全てがバラバラになり砕けていく。「リリーこれは?!」「空間に掛けられた魔術的視覚操作を叩き切った。本当の道はこのまま真っ直ぐだ」2人で走りそのまま奥へと進んでいく。3本目の柱があったであろう位置あたりでリリーは静止を促した。「出てこいよ居るんだろ?」「誰が?!」黒い空間から突然足が出てきた。「魔将軍と恐れられた魔導具マイスター!そうこの俺を見抜くとっがぁっ?!」漆黒の装備をつけた男はリリーの魔導具に殴られて天へと上がる。「くだらない肩書きに溺れるようじゃまだまだだ」天井に突き刺さったと思った魔将軍はすぐに地面へと落下してきた。「まてぇい、人の話を聞かずに殴るとはこの小娘!俺はヴィラン・アック・ニーンだ!このアック様相手にそう易々と勝てると思うなよ!」「なんだこのウルセェのは。エア先に行け、何かあったらこいつを押せばすぐに私の所へ戻れる」魔導具を投げ渡しエアを先に走らせるリリー。それを見てアックはニヤリと笑う。「何がおかしいんだい?」「後ろに控えている奴らは俺がやられた時の保険ということを考えて送り出したのか?バカだろ!!」リリーはその返事を魔法で返した。「わっぶ!危ねぇなぁ見たことのない魔導具を使うし余程の自身か?殺してバラバラにするのが楽しみだぁ!」アックの兜にはめこまれた宝石が輝きを放つ。「宝石魔法か、っと!」普通の魔法と違い宝石のカットした断面から放出される魔法はどの角度から放出されるか読みにくい特殊な魔法、避けれるかは相手の性格を知っているかどうか。「魔導具-プレミアムレーザー!!」全方位に放たれる赤黒い光線が砕けてなお滞留する空間のカケラにあたり乱反射を起こした。「見境なしか、ならこっちも魔導具-ストイムラップ」光線は物体のように固まる。それを蹴りながらアックの懐に入り短剣を喉へ突き刺した。「な、んで」空気の抜けるような声でそう呟き地面に倒れたアック、それを踏み台にリリーは加速する。「この戦闘に70秒くらいか、ならまだ」リリーが進むとエアがカラスを模したマスクをつけた男と武器をぶつけ合っていたがストイムラップの効果で2人とも静止したままだった。「危なかった、私中心でしかも解除対象は死亡時のみだからね」男を蹴り飛ばしエアを支える。「魔導具-フラッシュボム!」魔導具、龍の指先が開き球体を発射する。ストイムラップの効果範囲外に出たカラスマスクの目を閃光が燃やし切る。「ふぅ危なかった。エア大丈夫?」突然解除されたエアはあたふたするがすぐに気を取りなおす。「リリー早かったね」「相手に言われるまでそもそも先にいる奴が強いなんて想定してなかったから」特殊な刻印の入った短剣を取り出してカラスマスクに近付くリリー。「リリー気を付けて、そいつは対人間用の魔導具で固めているから」カラスマスクの間合に入ってすぐリリーは距離を置く。「パラライズ…スケアクロウ」鈍い声がそう呟く。距離を置いたはずがリリーは足と手が麻痺していた。「しまった、僕は気付かなかったけどここに来た時点でもうアイツは毒を撒いていたんだ」エアが鎌を振り下ろすカラスマスクに高速接近してリリーを守る。「エヴォーカ…リスクファクティア、ナイフ」だが遅い、突然カラスマスクの袖から大量のナイフが飛んでくる。「こいつ、リリーと同じで特殊な魔導具を!」ナイフがエアの頬を裂く。リリーがナイフに当たらないように手を広げて自分が猛撃を喰らう。「つっ、はぁぁぁ!!!僕だって魔法の一つくらい扱えるさ!」剣を構え停止する。「大地を統べる地精よ、天から見下ろす風精よ、水災を運ぶ水精よ、火災を運ぶ火精よ、光纏し雷精よ、いまこの地に住まいし我に力を恵みたまえ。我が名はエア!」極限にまで研ぎ澄まされた眼前には停止空間とは違った形の停止世界が広がる。エアは駆け出しナイフを斬っていく。「これで終わりだ!スラッシュ」風を纏った斬撃がガラスマスクを切り裂き吹き飛ばす。見えない壁にぶつかりそのまま力尽きたようだ。「リリー大丈夫?」「大丈夫だけど正直いうとこんな茶番終わらせてこの国の民を根絶や……ふぅ、なぁエアってさ勇者を知っているか?」リリーは痺れた指を無理やり動かしてグーパーと繰り返す。「うん、でもどうして?」それはエア自身も何かを察していたからこその問い。本人が隠すのなら追求はしない、でも話す機会に迷っているのなら教えてくれという意志。「本当にエアはいい奴だ。それに強い」立ち上がり魔導具を取り外した。マジックボックスにしまい込むと軽く伸びをしてから剣を取り出した。「かつて魔王を倒した者がいた、そのものは次の魔王になるのでは?と怯えられていた。そのせいかどこかに身を潜めひっそりと生活をすると誓った」鞘から抜かれた剣先が薄紫に霞む。「魔剣-シルリア、君に頼る時が来たよ」魔王の剣だ、使いたくはなかったがこれしかない。一度使えば聖職者でさえ闇の根底に堕ち這い上がれなくなるというアーティファクト。これを持っているのは勇者しかいない。いや、正確には今扱えるものは勇者しかいないだ。
エアはどこか頼もしげだった。後ろを着いてきながら上機嫌に鼻歌を歌う。リリーはその歌に合わせ剣技を振るう。相手がどれほど秀逸であれ、相手がどれほど卑怯であれ魔剣シルリアには及ばない。出てきてすぐに脚を、手を、それから胴体に首とバラバラにされていく。黄金に煌めく甲冑は砕かれ、ドワーフしか錬成不可能な不壊の金属であるカーポリセルダンダすら真っ二つに割いていく。今のリリーにとっては楽しみたいより煩わしさが勝っていたようだった。
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