無能鑑定人のムューラ

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魔術式拷問は古い。

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特無官であるから
「それは流石に看過できませんね。同僚殺しですか」「な、お前!どうして動け?」

担がれた姿勢から首をへし折るなんて造作も無い。壊れた腕は全てこの時のためのブラフ。

「ふぅ、偽装がうまく行って助かりましたよ。ほら少年も立ってください、聴取しないといけないことだらけなので」「……」

明らかに少年を殺す機会を窺っていたヴェン。右目で火を出してこっちに集中させ左目でその隙に偽装させることにより完璧に術中へ嵌め込めた。

「良いですか。特無官を殺そうなどと子供が思わないことです」「……」「無口なのは構いませんが。逃げれませんし口は割らせてもらいますよ」

精霊で捉えた少年を担ぎ上げる。もちろん自分が同じことをされることはない様にしてある。

「両腕を折っても無口なんて、よほど良い訓練を受けていますね。とりあえずヴェンの死体と貴方を特無官の基地へ運びまーす!」

捕虜手続と死体処理の手続を取り地下室へ向かう。特定行動の隠匿にはもってこいである。魔力を使えない人による拷問は裏を返せば警察では捜査不能な案件となる。
特無官の特権を特無として行使する。犯罪に転用されたらたまったもんじゃない。
その対策で報告書があるのだが。

「もしここでの違法行為が見つかっても……そうですね、特無官がその場合出ますけど特無官はこの行いを良しと考えているので隠しますね」

腕の折られた少年は大人しく椅子に巻かれている。魔術の使用を封じるために特殊な結界を貼り作業を開始する。

「では貴方の依頼人から答えてもらいましょうか」「……」「なんてね、嘘ですよ。世間話でもしましょ、兄弟はいますか?お兄ちゃん、弟、妹、お姉ちゃん……なるほど弟ですか?」

自白魔術なんてものも俗世にはあるが、使用者への影響や対象者の後遺症などを加味するとこちらの方が効果的である。反応で探る方法、対象が幼いほどわかりやすい。

「私は一人っ子なので分からないですけど。どうしてこんな仕事を?」「……」「殺しをやるとしたら人質がいる、両親の仇を追っている。どれも違いますね」

目を見あう。瞳の奥に見えるものをムューラは感じとる。精霊特有のソレを利用して。

「繋がりました。薬、病あたりですね」「……!」「っと、足も折っておくべきでした」

反動を付けて椅子に縛られたまま、少年は蹴りを繰り出した。ムューラは足首を掴み地面に叩き付けようとするが、足に絡まれ逆に関節を取られる形で地面へと倒れ込んだ。

「女の子に手荒な真似はって習いませんでした?」「暗殺対象に情けはいらない!」「ようやく喋ってくれましたね。では過激精霊」

少年を弾き飛ばす衝撃波。壁にぶつかり、口から血を吹く少年。

「まださっき受けた内臓の傷は癒せていませんか」「ぐっ」「時期に死ぬので問題はないですが、哀れですね」

死んだ目で見下ろすムューラ。粉砕した椅子を口に咥えて威嚇をしている少年だが威勢はない。

「貴方の怒りを精霊で読み取り大体の事情はわかりました。残念ですが弟さんは貴方の仲間により毒されていたようですし。もう死にますよ」「……俺の記憶を読んだ?それだけで勝手に推測して弟が死んだ?ふざけるな!」

首を勢いよく振り口の中に作った細かい木のかけらをムューラへと飛ばす少年。

「おっと、と。暗殺者ならこれだけ動ければ自殺しますよ?これですから中途半端に人質を取られている殺し屋は」「うるさい!弟は俺が守るんだ!だから俺は死んじゃいけない!」

魔力が暴走するのを感じる。魔術は防止されているが、バチバチと制御魔術を破壊するほどの高濃度な魔力。それがあたりを焦がしていく。

「それだけの才能があって殺しに使われるなんて。学徒となれば今頃は塔の魔女にでも成れましたよ」「んだと、俺ら平民を見下す政府の犬が」

ムューラは首を傾げてしばらく下を見る。その言葉は死ぬほど聞いた。お前ら政府の犬は我々の税で飯を食って、人を殺すと。

「政府の犬ですか……ではその犬っころに追い詰められている人々は、ボールといったところですか?玩具相手に加減はいらないですよね?」「は?何をいって」

それは命を刈り取る鎌、素早い蹴りが腕ごと少年の肋骨をへし砕く。

「精霊……癒してあげてください」

少年の傷が癒えていく。先ほど受けた戦闘の傷さえ塞がり、まるで何もなかったかのように。

「逃げれるとでも?」「っ!」

治った矢先にドアから逃げようとする少年の襟首を掴み壁へと投げ捨てる。

「たまーに勘違いされる方がいるのですよ。私が優しいと」「……っ」

無抵抗だから、無反応だから、無干渉だから。それでいて攻撃者に最大の敬意を払い対応するから。自称であるが。

「信じていませんね?精霊、彼を癒してあげて」

精神的ダメージからか少年は逃げ出そうという動きを見せない。だが、目は反抗的である。
残念ではある、ここで若い芽を摘むのは。精神を壊してしまうのは――

「まったく、事前に言いましたよね?税を肥やしているだけと思っては困りますよと」

義手の重さは約19000グランハイ(hg)近い重さで表すと五歳前後の子供くらいである。ムューラサイズの少女は平均体重が32000グランハイであり、腕はその6%を占める1900グランハイなので約十倍である。
その腕から振るわれる打撃は軽々しくフィナの骨を粉砕する。

「まだやる気ですか?バレないよう口に仕込んだ木の針、どこを狙うつもりですか」「やってみないとわからないだろ」

フィナが息を口に溜め、構える。勿論そんなものを撃たせるつもりはない。口ごと死なない程度に撃ち抜くだけだ。

「ったく。本当に懲りない子供でした。政府はもう少し暗殺者団体への圧力を……と言いましても彼等はそれで成り上がった人もいますからね」

歯が折れ曲がり、壁に白目を向いたまま埋まるフィナ。

「精霊、彼を戻してください」
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