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特無官の苦手とするところ。
しおりを挟む回復と攻撃の繰り返しで流石に心が折れたのか。壁にもたれかかり動かなくなってしまった。
「さて、依頼人の名前をあなた直に話してもらいましょうか」「……あ、あーへりむ……しゃ…………しゃちょ、なめいれいし、」
髪の毛を持ち顔を引き上げると歯抜けな声でそう答えた。
「音声証拠確保と、これで対外執行手続きに移れます」「お、おとーとだけはたす、」「えぇ、別にあなたを闇雲に虐めていたわけではありませんよ。これより殺し屋ティナおよびその親族は、特務官の保護システム下に置きます……っと誰ですか?」
壊れた扉の枠に手をかけてタバコを蒸す大柄な男。黒色の制服が群をあらわす。帽子には羽根のマークが付いている。
「FD……」「早速だが、本案件はうちが継ぐ事になった。あんたは別の仕事だ」「ただ冷やかしに来たわけではないのですね。はぁ」
FD.妖精の落とし物。国軍の八師団隷下、その執行権は特無官にまで及ぶと言われている。
FD.は特殊教育を乗りきれる者でありながら、第九位界上の魔力を有する者、またそれを扱える者。
互いに国命で動いているが、時にぶつかり合うのだ。
国軍八師団.中央総司令官の膝下にある一番でかい師団。10から14までの数字を持つ歩兵連隊、6から9までの偵察調査大隊、第六魔術大隊、特殊装備隊、第七治癒隊、司令直轄部隊、それからFD.。
「こいつはぁ軍が絡んでいるからな、軍に任せな。お前さんはそこのガキと隣国の学校へ行き調査をしてこい」「私の権限は第三特殊ですが、隣国が国家安全に支障をきたす活動を学校で行っていると捉えて宜しいのですか?」
無言の回答。それは言えないが察しろという奴である。
「第三じゃなきゃいけねぇ。軍だって特無官と動くのはきれぇだ。とりあえずウチからも2名送り出す。俺だって上官命令だ、詳しいことは知らん」「この少年は特無官では無いですよ?証人保護で監視と護衛をしながら特無遂行しろとか言いませんよね?」「ガキの弟を人質に取ってるんだ、大人しく動くだろ」
今回の案件はこちらが折れるしか無い、……些か不快である。
「軍が絡んでいて軍が出向くと、身内に甘い性質上――――」「ムューラ、さっきからアルバイン2尉になんて口の聞き方をしてるんですか?」「貴女はラズにゃんではないですか!」「ラズガーニャですわ!アルバイン2尉、本当にコイツ!!」
赤髪ツインテールをなびかせてながら入って来たのはラズガーニャと呼ばれる少女。
詳細は省くが、特無官と軍で行う共同新人教育の際に組んでいたメンバーの1人である。
「ムューラ、今回は第三特殊統括本部長の指示も入っている。折れろ。第一、以前隣国軍のスパイ捉えたろ?俺らより詳しいんだろ、おたくらは」「つぇ、分かりました……」
フィナを連れて外へ出る。アルバインが入った時点で既に回復をかけていたからか、大まかな話は聞いていたようだ。
「フィナでしたね、協力する気はありますか?」「……」「弟については軍が見るので大丈夫ですよ。協力している内はですが」「俺がこんなことを言うのは的外れかもしれない、でも弟に帰る場所くらい用意したい。証人でも暗殺でもする、だから協力させてください」「いい目だね、もちろん約束しよう。そうと決まれば本部長のアイルナーに会いに行きますよ」
2人乗り用には作られていない自動三輪に無理やり乗り込み、本部長室へ向かう。
「どこ向かってるんだ?そっちはなんかおかしいぞ」「これを見抜けるとは流石。安心してください、アイルナー直属の護衛部隊カラスです」
全四箇所にある営内の拠点から、的確にどこにいるか探し出すには二つある。精霊の囁きを使うか、呼ばれるかだ。
それ以外手段はない、本部長とはそれほど重要であり狙われるリスクの高いものである。
今回の場合は私は位置を知っていたし、フィナは呼ばれたと言うことである。
「カラスは危険ですが、フィナが狙われることはないでしょう」「ならいい……それより早く任務とやらを完了しないと。弟が」「だいぶ喋れるようになりましたね。弟ならさっき言ったように安心してください、軍が人質で取るなら既に殺しているか……有用性の高いように高度医療を受けさせていますよ」
殺しているで変化に気付きにくいくらいの怒りを漏らすフィナ。しかし先ほどのこともある、カラスもいれば下手には動けないと理解しているだろう。
「なぁ、どうしてムューラはこの仕事につこうと?」「恩義ですかね、昔私を助けてくれた人が特無官でして」「そうか。俺はムーテ地区出身でこれしか稼げるものがなかった」「ムーテ、あの辺りは工業地域でしたものね。空気も悪く土地柄的にも病状が悪く出たのでしょうね」
地区ごとの閉鎖集落感は否めない。特にムーテ地区はオリーストに並ぶ貧困区画だ。
「さーて、そろそろ着きますよ。特に入場へのルールはないですのでご安心を、我々は蛇に睨まれた蛙なので」
ただのボロい兵舎に足を踏み入れる。兵舎識別は306-93であり、第三特殊事例班の零六隊。ムューラの所属する部隊とは別の場所である。
「第三特殊第一のムューラです。本部長にお話がありまいりました」「3階の第二作戦室へ向かえ」「ありがとうございます」
少し壁のコンクリートが崩れているような兵舎の中を進む。階段を登りすぐあるのが第二作戦室だ。
「なんだ?ここに来てから何も感じないぞ」「そうですね。胃の中ですから。失礼します、第三特殊第一のムューラ・オリーストです。本作戦の件について参りました」「入れ」
女性の重低音が扉を突き抜けて聞こえてくる。扉が勝手に開き、声の主が現れる。
「どもです~」「あらムューラ!4日ぶりね!」「そうですね……それで、なぜこのタイミングなのですか?」「あぁ、すまんな。軍の奴らがでしゃばってきたと言えば丸く収まるのだが。アツリアという敵軍の内定部隊含めだな、これだ」
座っていた女性が立ち上がって棚から本を取り出す。超電磁式破壊砲と書かれた机上の空想本である。
「いやいや、それはないですよね~?」「なんだこれは?」「そこの少年にもわかるよう説明すると、魔術式を利用しないから痕跡を残さない超強力な兵器だ」
理論は魔術砲とは違い、電気と磁力を使用した特殊兵器だ。はるか昔に天から降りてきた人々が伝えたとされるが。
「学校でこれを開発できるとでも思っているのかと言いたいが、隣国は魔術普及率が低く科学に力を入れている。ボンベ二社は軍が実質買い取る形で国益に繋げるからと、上からの指令だ」「わかりました……それで同行者は軍から2名出ると言っていましたが。先に名簿等もらえませんか」「あぁ、その件だがな。私が許可を出す代わりに色々講じてやった」
フィナは超電磁式破壊砲の本を読んではいるが理解をしていない様子だ。
「本作戦の同行者の説明を行う。まず特無官ムューラ・オリースト、理由は現地での非魔術行動を可能にするからだ。次にフィナ・ムーテ、理由は非魔術的暗殺術に長けているからだ。次にFD.ラズガーニャ軍曹、ムューラと共闘経験のある軍務者の中でも一番成績が高い。最後はカラスからナル・イアだ、言わずもがな有事になったら3名を逃すためだ」
軍から派遣される予定は2名のはずだが、なぜ一名に減ったのか。
「軍からの派遣は私が無理やり1人に減らした。作戦の全指揮を特無が遂行する」「ありがとうございます」「ルナ降りてこい」
天井からまたも女性が降りてきた。服装はカラスという割に普段着で街中にいれば見失うほどだ。
「さて、ムューラ行こうか」「はいルナ」
フィナはまだ驚いて固まっているが。それを置いて話を進めていく。
「三人とも、明日のお昼頃に出立予定だ。頼んだぞ」「「イエス」」「は、はい?!」
第二作戦室を後にして売店へ向かう3人。フィナの装備を整えないといけないからだ。
「フィナはやはり針ですか?」「え、あぁ……まさかこんな良い店で調達してくれるのか」「あぁお代はカラスが全て持ちますので安心して買ってくれ」「ありがとうございますルナさん」
特無官用の装備、要するに魔力反応を示さない装備が大量にあるのだ。
「俺の使ってる針と似たサイズが」「そうですね、特殊兵器等は軍と特無官が開発しています。それが民間に漏れた際に模倣されますので」
身体検査でもバレないタイプの針を入れるケースや、含み針用の袋など色々置いてある。
「あー!俺の欲しかったやつ……IGCs認可の昏睡薬まである」「ルナ、今回の任務はやはり」「あぁ、共同訓練で顔を見た奴も多い……犠牲者を出さないためにもの人員だ」「先輩にバレたら面倒いですよー」「ふふ、そうだな」
活き活きと自分用の装備を購入していくフィナ。殺し屋としての目なのか、同じ品目でもより良いものを選別している。
「いつからカラスは孤児保護に力を入れ始めたのですか?」「特無に何かしら接点を持った時点でファイリングされるのは知っているだろう」
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