無能鑑定人のムューラ

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特務官の苦手とするところ。2

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装備購入を終えたフィナが装備を整えて現れる。

「似合ってるか?」「似合っていますよ。では早速街に出ましょうか。その装備に慣れるためにも」「わかった」

売店から出て門へと向かう。無駄に広い敷地を往復しない為、一番近い門から出る事にした。

「外出許可証の方をお願いします」「すまん、急用だ。後で三特の誰かを向かわせる」「これは失礼しました!どうぞ」

ルナが居るおかげで外出許可証を出さずに外へ行けるのは楽でいい。営内を出入りする鳥を数える人は居ない。そういう事だ。

「今回外に出るのは二つ目的があります。追手処理と軍の参加者への顔合わせ。まずフィナの追っ手ですね。なんといっても危険な組織です、失敗したと知られれば消されるのも時間の問題でしょう」「なら任せてくれムューラ。俺が責任を取る」「いえ、そのためのルナですよ」「どういうことだ?」

見ていればわかりますよとルナがウィンクを飛ばし少し人の少ない地域へと足を運ぶ。
ペルポーぺ地区、第二の開発都市計画として浮上したが領主が挫折して融合。
そのあとはペルポーぺが行っていた陰惨な実が破裂し、今でも人が寄りつかない地区となっている。
範囲もかなり縮小して、一部はサイストやオリーストに取り組まれている。

「すごいな、俺たちの拠点があるところがなぜわかるんだ」「カラスは、あなた方が特無官に手をかけようとした段階ですでに組織全体を把握していました。あとは反撃しかできないという条件を満たす為に、私が囮役として駆り出されたということですね」

入り口の扉は完全に閉められている。きっとこの区画に来た時点でバレていたんだろう。

「フィナ、何があってもルナを認識しないでください。私だけを見てくださいね」「わ、わかった」「これで狙っていた3名は死にました。行きますよ2人とも」

ルナが目を閉じ、手を叩く。しばらく胸に蹲っていたフィナだけ何もわからないと言った顔をしている。

「鍵は物理鍵なので簡単に開けれますね、開けて下さい型破精霊タルパ・ブーガ

中から臭ういかにもな臭い。殺戮、交尾、汚辱、人間の汚い部分が濃縮されたような空間だ。

「ムューラ、6の4と8だ」「8を頼みますねルナ。フィナは4で」「敵の数か?了解」

階段を降りながら武器を取り出す。精霊接続武器、タルパ・コウェルポだ。
錬金術で小型化された戦闘道具であり、掌サイズからボタンを押せば杖や銃、色々な系統変化を可能とする。

「耳を塞いでタルパ」

これも一見長いただの筒に見えるが、吹き矢のように口を翳せば音色がなる。

「特無執行、鋭く裂いて剣状精霊タルパ・ブレイド

タルパ・コウェルポを投擲する。閉じられた扉の奥から溢れた血で溺れる声が響く。

「受け付け6人終了です。そのままフィナは気配の方へ針を」「うん、もうやってるよ」

廊下の曲がり角から4人組が話しながらやってきたが、寸分違わぬ精度で投げられた針が喉と頭に刺さり地面へと倒れ込んだ。

「いでぇな、フィナ……」「やり損ねましたかフィナ」「あいつは鉄のカーデンだ。針が通らない」

大きな男が立ち塞がる。三体一でも怯まない姿勢は、力量を物語る。

「ルナさんとムューラ。ここは俺に任せて欲しい、ケジメとしても」「いいですよ。私とルナが出ればつまらない程早く終わってしまいますからね」「フィナの実力でも見させてもらおうか」

フィナが手に付けた発射装置に針を装填し撃つ。カーデンは軽々しく針を払いのける。

「まさか寝返るとば思わなかったぜ。あー聞いたのか?お前が買ってた薬って病状を悪化させるものだってな!!」「っ、」「その顔堪らないなぁ、その可愛い顔が歪むのがぁ!」

肩を前に出して牛のように突進してくるカーデン。フィナは針を放つが皮膚に刺されど、奥にまで入ることは無い。

「グァっ、」「いいなぁ、殺し屋やめてから良く喘ぐなぁ」「お前ら下品な輩とは違うんだよ」

数回地面に転がり立ち上がるフィナ。また針を装填し構える。

「針ばっかで見応えねぇな。まぁそりゃそうか、男娼に扮して偉いさんを殺してばっかだったもんなぁ!みろ、お前を見る仲間の顔を。所詮お前は俺らと同じ、あれ?」「あの2人は俺のことを仲間と認識していない」

指を刺すカーデンだか、ムューラとルナは呑気にマルバツゲームをしている。

「お前の皮膚がどれだけ硬くても、突破口はある」「可愛いねぇちゃんに囲まれて気でも狂ったか?興醒めダァ、」「過去を隠すつもりもない、だが俺は俺だ!」

フィナには考えがあった。ムューラと初めてやった時に言われた毒の事だ。

「殺し屋の武器に事前情報なしで突っ込むなんて、カーデンも落ちたな」「あぁ?お前の毒は強力だが俺の皮膚は分厚い、毒が到達することは無いぞ!がっはは!んじゃ死ね」

また強烈なタックルが飛んでくる。対してフィナは格闘の構えを見せる。

「お前で200人目の死亡者だ!」「お前と違って記録はつけないっ!」

指が折れるのもモノとせず、フィナはタックルを受け止め壁の方へと流す。

「へっ、どんな小細工かと思えば俺を受け流すくらいで終わりか?」「至近距離なら刺さるだろカーデン」

カーデンの目へ針を打つ。だが、眼球は簡単に針を弾いてしまった。
動揺したかフィナは変な方向へ針を打ち込んでしまう。

「下手くそが。強化魔術ってのは便利だなぁ、急所狙えば殺せるとかそんな甘い考えの奴らを一掃できる!」「しまった、腕が」「それ、砲丸投げだ!」

廊下の壁に強く叩きつけられるフィナ。激痛と口の中にする血の味で自身の状態を把握する。

「はぁ、はぁ……(骨も折れたし内臓も危険かもしれない……)」「ちぇっ、死んじまったか?さて次はそこの女どもだ」

地面に倒れて動かないフィナに飽きたのかこちらへと近付いてくるカーデン。

「ナンセンスですね。その大きさですとそろそろじゃ無いですか?ご自慢の腕に痣が浮かんできたことですし」「あん?な、なんだこれは?!鉄壁の腕が」「アルカリ毒、浸透性で痛みが薄く徐々に蝕んでいく特性がある」

ムューラはカーデンの目を見つめてそう解説する。

「フィナのやろぅ、だがまだ動く。お前だけでも殺してやる!」「この勝負はあなたとフィナが行うモノですよね。私が混じってはフェアでは無いので」「そうだぜ、デカブツ」

血だらけになりながらフィナが立ち上がりヒモを引く仕草を見せる。

「う、動かんぞ……透明の糸?」「強化繊維だ、最初にタックルされた時に破けて出てきたやつを針に結びつけてお前へ打ち込んだ」

耐火性の高い繊維、だが同じく魔力伝導率も高い。

「これで終わりだ、起動!」

フィナが魔道具を糸に取り付け、起動ボタンを押す。突き刺さった針が赤く光り変な匂いを放ち始める。

「何をしたぁ!!いてぇ!いてぇ!」「魔力コーティング剤は表面を溶かす材質だ、肌に悪いことくらい知っているだろ」

動き回り、幾度となく壁や人にぶつかったり針は少しだが皮膚に深く刺さり、溶け出したコーティング剤が激毒となって分厚い皮膚を溶かしていく。浸透性の高い激毒は動きによりカーデンの全身へ巡り、効果が今更ながら顕著に現れ始めた。

「体がだるい、寒気がしてきたぞ……お、おいフィナ!」「威勢がなくなったな」「お、俺を殺すのか?なんでも教えるぞ」「殺し屋の掟を忘れたのか?耳を持つな、目を持つな、それから」「神を待つなですね。成長しましたねフィナ」

異様な声、どこからきこえているのかわからない。

「す、スカルノ!」「カーデン、あなたは死んでもらいますよ」「なにぼ?!」

声だけしかしない。ただわかるのはカーデンが突然絶命した事くらいだろう。

「8のうち1人は曲者でしたね……」「部下たちが突然目の前で死んでね。何事かと思えば無音。音がないから逆に怪しいよねぇ?」

精霊でフィナを後ろへ引っ張りルナの後ろへおく。回復を掛けながら声の主の方を向く。

「スカルノ・オドリズさんですね」「いかにもだよ。フィナと特無官と、そっちも特無官かい?とても一般人にしか見えないが」「私は保護者ですのでお気になさらず」「そうかい」

ゆらぁと視界が動く。ほぼ同じくらいのタイミングでムューラがタルパ・コウェルポを横に振る。
金属同士がぶつかったような鈍い音と火花が薄暗い廊下に散る。

「殺気のない一撃を受け止めるとは、さすが特無官と言ったところですか」「なるほどなるほど、ルナが損なうのも分かりますね。貴方はフィナにしか興味がないみたいでっ!」

タルパ・コウェルポに潜む精霊の形を変質させ、吹き矢のように飛ばす。

「フィナは便利でしたから、弟のためならどのような仕事も格安で。下手したら仕事外のことまでやってくれました。私たちのおもちゃですよ」「それは結構なことです。でも残念ながら特無官の保護下にあるので殺させませんよ」

スカルノは見えないところからゆらりと攻撃を繰り出す。義眼に潜む精霊がその軌跡を予測して写し出す情報を元に避け、反撃を行うが、当たらない。

「私のデータは持っているでしょう特無官。幽霊凶器ですよ、実態のない刃でどんなセキリュティも突破して確実に仕留める」「えぇ、初等教育の時に嫌ほど透明機器の解析は習いましたから」

透明機器は40年ほど前から開発の進んでいるもので、幻影魔術の応用品である。厄介なことに、現在の検知能力では看破不可能とされるほど高精度になっている。

「それでも本体は存在しますよね、殲滅が目的ですし。ちょっとフィナの実力を見たくて先ほど戦闘を許可しましたが……貴方のような雑兵に構うほど暇ではないのですよ?」

ムューラはフィナの方を向く。それにつられてスカルノも見ただろう。
フィナはルナに抱えられている。その状態を認識した。

「デッエン!」

地面に何か落ちる音が響いた。ムューラが辺りをタルパ・コウェルポで突いて、何かを剥いだ。

「なるほど、腕が長いから実態がないように立ち回れていたと」

透明機器の剥がれたスカルノは、他人より手の長い大男だった。口から泡を吐いて倒れているスカルノの頭にムューラはタルパ・コウェルポを突き刺す。

「さーて、残りは40人ほどですが。ここまで警告含めてやればフィナには手を出さないでしょう」「そうですね。では予定通りカフェノーラへ行きますか。フィナは完全に疲れて寝ていますし」「憑き物が取れたような顔をしていましょう」

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