神の贈り物

ソラ

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本編

前編 神の提案 そして旅行

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 陰鬱な学校生活。今日もいつも通りの道を通って行く。こんな毎日が続くのか。明日もきっと1人きりでこの道を通る。そう思っていた。
 だが、今日は違った。


 冬のこの頃はとても寒いため、屋上には誰もいない。そのため昼ごはんを1人で食べるには絶好の場所だ。
 いつも通り弁当箱を開けようとした、その時だった。
 大きな音と共に雷が落ちた。今日はとても晴れていたため、まさに青天の霹靂だった。流石に驚いたようで、多くの生徒が窓から顔を出しているのが見えた。

 ふとその方を見ると彼女がこっちを見ているのが見えた。彼女は俺に関わらない方が良い。

 空を再び見ると目を見張る光景があった。雷の光が徐々に形を変化させ、人形のような姿となった。それはまるで神話に登場する天空神ゼウスのようだった。彼は徐に口を開き、話し始めた。

「今を生きる生物たちよ。今日より未来、このままの姿でいるのならばこの星の行先は暗いだろう。よき提案をしよう。」

 そういうと彼は屋上にいる俺を指差して言った。

「この男、『浅黄優太』の命を差し出せ。そうすれば完全に平等とは言えぬでも、全ての者が植えることのないようにしてやる。」

え?どういうこと?
そんな気持ちで頭が真っ白になる。

「期間は一年とする。それまでにできなければこの星はそれまでだ。滅亡に向かうだろう。正しい選択をすることを期待する。」

そう言い放つと、耳が痛くなるような轟音と共に一瞬でその姿は消えた。


この現象は世界各地で起きていた。先程の神が顕現したような現象は、その地域に根ざす言語で全く同じ内容が同時に伝えられたそうだ。
そして全ての場所において俺の名前が呼ばれたと言う。世界中の科学者はこの現象について必死に研究したが、原理は解明されずに世界的にこの話は本当、と言う結論に至った。

「こんなに馬鹿げた話があるものか!?」

そう憤るしかできなかった。勿論この話が嘘だと主張する者も多くいたのだが、あまりにも非現実的なリアルだったがために嘘という意見は徐々に下火になっていった。

世界の政府は特に何も言わなかった。しかし内心では肯定派なのだろう。もし、この話が本当だったら世界規模の問題が解決するからな。
本当じゃないとしても1.2億の人口を持つ日本でたった1人が死ぬことなんて、気にするようなことですらないのだろう。

後日いつも通り学校に行っても、その様子は変わり果てていた。クラスメイトからは好奇の視線で見られ、先生達も憐れみを含んだ顔だったが、特に俺に干渉することはなかった。ああ、結局そんなもんなんだな。希望なんてない。そう強く実感し、絶望した。
誰も助けてくれない。俺は1人ぼっちだ。

学校には行かなくなった。所謂不登校というものだ。
あの日からスマホの連絡ツールは開けていない。とにかく怖かった。死ぬことを常に要求されているように思えてきて。
とにかく辛かった。かつての友人に死ね、なんで死なないの?、そんなことを言われたら俺は俺でいられる自信がない。

そこから一週間経った。相変わらず気持ちは落ち込んでいたが、そんな生活に変化が生じた。
日本のお偉いさんが来たのだ。特に知っている顔でもなかったが、誰だろう?

「もしこの世に未練があるのならば、いくらでも使って良い。世界のどこにでも行け。その代わり、分かるだろう?」

そういうと彼は数え切れないほどの金が入ったキャッシュケースを渡してきた。
かなりぶっきらぼうな物言いだったがそりゃそうか。彼視点から俺は、ただ死を求められるだけの存在だ。ぶっちゃけ早く死ね、というのが本当の気持ちなのだろう。
彼ら政府には俺を生きながらえる選択肢などない。いかに世間体に取り繕うか、それしか見ていない。もしかすると彼らにとって俺は都合の良いモノで人としてすらみられてないのかもしれない。
そう思うと、なんだろうな。
死にたくないっていうよりかは、哀しい。
「必要とされてない、のかな」
ぼそっと呟いた、そんな言葉が引き金になって涙が溢れた。

政府の人が帰ると母親が恐る恐る俺に話しかけてきた。

「きっと、人生で最高の体験となるから、行ってきなさい。」

母から紡ぎ出された言葉はか細いものだった。だけど、今の俺にはとても力強い言葉だ。ありがとう。ちょっと元気でた。

勿論今の堕落した生活を続ける方が楽ではある。だけど今の生活にも疑問を思っていた頃だ。丁度良い。行こう。

政府が気を利かせてくれたようで家族全員の代金を出してくれた。完全なる鬼というわけではないようだ。

飛行機に搭乗し、離れてゆく日本を見ながら感傷に浸っていたら寝てしまったようだ。良い旅になると良いな。

アメリカのボストン、イギリスのビックベン、イタリアのパリの斜塔。カナダでオーロラを見ることもあった。

旅行中は久しぶりに笑えた気がする。本当に、ただ単純に楽しかった。しかし、この幸せが一時のものと考えると少し胸が苦しい。だから常に次の日に起きるであろう楽しいことに気持ちを向けて、嫌なことは考えないようにした。明日は何が起こるかな。

旅も終盤となりつつある頃、アフリカのある発展途上国を訪れた。そこには多くの飢えたこどもが道端に座っていた。それは到底日本で生活する中では想像できない光景だった。

他の国でもあったが俺は世界的に顔が知られている為、外国人に囲まれることが多くあった。

その国の宿に泊まっていたある日、夜風に当たりたくなって外に出た。
何故かこども達が寄ってきた。なんだろう?遊んでほしいのかな、そう思ってにこりと微笑んだらその中の1人の子が辿々しい日本語で話しかけてきた。

「オニイチャン、ナンデ、シナナイノ?」

背中に悪寒が走った。
そうだ。俺はこの子達に全く歓迎されていない。この子達にとっては生きているよりも死んだ方が嬉しいんだ。
考えたくなかった。考えないようにしていたことが戻ってきた。

「ネエ、オニイチャン・・・」

その子は続ける。

「オナカスイタヨ。」

俺は恐ろしくなって持っているお金の中の30万円分程彼らに渡して、逃げるように去った。

急激に外の寒さを感じた。今までなかった『恐怖』が襲ってきた。
その日は久々に声を出して泣いた。そんな泣きじゃくる俺を見て両親は優しい声で「どうしたの?」と言いながら軽く手招きをした。俺はこの言葉にならない感情を、苦しみを無くそうと泣いて、泣いて、とにかく泣いた。流れた涙のようにこの感情も流れ去って仕舞えば良いのに。

「なんでっ。なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだっ!」

ああ、俺はどうすれば良いんだ。

その日は両親と共に寝ることにした。
1人でいると壊れてしまうような気がした。十年振りくらいだったが優しい感情の中で寝る時は昔を思い出す。その時に戻れたらどんなに良いだろう。
そして抉られた心の傷が簡単に治るわけがなく、次の日帰国した。



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