神の贈り物

ソラ

文字の大きさ
4 / 4
終章

終章 命

しおりを挟む
今日、千人が死ぬ。
今日だけはそのことを考えずにゆっくり部屋にいよう、そう思っていた。

「今日が終われば、俺は死なないで済む。世間からの非難はある程度あるだろう。しかしそんな俺もどうせ時の人となる。今は将来のことを考えなくていい。」

そう自分に言い聞かせるように呟く。嬉しいとは言い切れないモヤモヤした気持ちだ。
突然着信が入る。彼女からだった。
電話なんて今までになかったから少し驚いた。

「今どこ?会場には行かないの?」
どうしたんだろう。急に。

「うん行きたくないからね。」
率直に気持ちを伝えた。俺のことをよく理解している彼女だったらきっと納得してくれれる。そう思ったからだ。
しかし意外にも、彼女からの返答は俺の予想とは違ったものだった。

「行って欲しい。」静かな口調で言った。

「え?」

「行って!」今度は彼女らしくない激しい口調だった。

どうしたの?急に。そう訊くと彼女は

「今日はあなたに言って欲しいの。行かなきゃダメだと思う。」いつもと違う雰囲気だ。
彼女の声は少し焦りを帯びている。

「なんで?よくわからないよ。理由を教えて・・・?」

「お願い、行って!私の直感がそう言ってるの。きょうあなたがいかなかったら必ず後悔するって!」

ここまで強引な彼女を初めて見た。仕方なく行くことにしたが、彼女はどうして、、?

会場に着いた。ふと目を向けるととても騒がしい場所があった。そこに行ってみるとなにやら叫んでいる子供がいる。

「嫌だー!死にたくないー!」
泣きじゃくりながら抵抗していたが母親の力には逆らえず、連れて行かれている。
その二人だけじゃない。周りにはこんな家族が沢山いる。

「何だ・・・?何が起きている・・・?」


そうか、分かった。
みんな国が出すという金が欲しいんだ。
特に貧乏な家庭にとっては、子供を差し出せば今後の生活を約束されるほどの金を貰える絶好のチャンスだ。これを見逃す手はないのだろう。

恐ろしい。その言葉しか出てこない。
俺は逃げるようにこの場から離れた。

これが彼女の言っていたことなのか?

すぐさま異変を感じ取った政府のものがこの式を中止にしたが、もし気づかなかったらと考えるととても恐ろしい。
結局一週間後に報酬金なしで同じことを行うことになった。

本当に俺はこれで良いのだろうか。


1週間後、先週と同じように俺は会場に行くと


かなりの人がいた。

「嘘だろ…? こんなに死にたい人がいるのかよ…。」
しかし俺には歩いている人の目が完全に消えているとも思えなかった。
1人に声をかけてみよう

「おい! なんで死のうとするんだよ!? 俺は死ななきゃならなかったからこんなに苦しかったのに、なんでこんなに簡単に死のうとするんだよ、、?」

必死に言葉を紡ぎ出すとともに目から涙がこぼれ落ちてきた。
こんな感情的になるつもりはなかったのに

しかしその人は我関せずの姿勢で何も言い返さない。
もういいんだ、そう言っているかのように

気づくと俺は駆け出していた。
自分の意思と反するように
こんなことしても特にならないのに

「おい! このふざけた式をやめろ!! 俺が死ぬ! こいつらを死なせたくない!」

会場は騒然としたがすぐに関係者がその場にいた者に中止を告げた。
やはり運営も俺1人を殺した方がコスパがいいと思っていたのだろう。

あの時は感情的になっていただけのかもしれない
だけど、今になってはそれが俺の本心なのだろう。 そう思う。



後1週間。
後1週間で俺は死ぬ。
嫌とは思わない。これが俺の意思だからだ。

人生の最後には何が相応しいか。
これは昔からずっと考えて、考えて、答えの出なかった恒久的な問い。

もしかすると人はこの答えを出すために人生を通して生きているのかもしれない。
そうも思えた。

そうして出した結論は「今までの出会いに感謝をしよう」だった。
残り一週間。
長くはないが今なら間に合うだろう。

まずは学校に向かった。
全てが良い思い出ではなかったが、素晴らしい時を過ごさせてもらった場所だ。
先生方に挨拶をし、その後クラスのみんなにもしっかりと気持ちを伝えた。
ああ、こう割り切った後だと気持ちいい何かを感じるな。

次は花崎水仙。
彼女のところだ。
会うと、彼女は顔を真っ赤にして言った。
「泣かないよ。私は優太くんのこと、笑って見届けるからね。」
今にも泣き出しそうな顔だったが必死に堪える彼女を見ると自分も泣き出しそうになる。
ありがとう。

そして、最後家族のところだ。
俺は最後の日まで家族のもとで過ごしたいと思う。今まで育ててくれたこと。
いままでとっても迷惑かけたこと。
数々の思い出が蘇ってくる。
その日は一緒にアルバムを見ながら談笑した。
幸せの形ってこういうものなのかな、そう思った。
今までありがとう。
本当に言葉にできない感情が涙として溢れ出してくる。

最終日、俺はとても安らかな気持ちだった。
俺を囲んでみんなが泣いている。
クラスメイトも
泣かないよ、そう言っていた彼女も
あんなに昨日まで笑顔だった家族も。

ありがとう

やがて今度は静かな音を立てて神が来た。
そっと包み込むように光が俺を連れてってくれるようだ。
「じゃあね、今まで、ありがとう」
俺も泣いていた。
笑顔は保てなかった。

そうして俺は「死」んだ。
花は一年前と同じように散っていた。
だけど今度は寂しくない。
暖かくなってきた。
いつしかこの散り舞う多くの花も美しく咲く、その時が来るのだろう。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

然知然能
2023.09.06 然知然能
ネタバレ含む
2023.09.06 ソラ

コメントありがとうございます!
登場人物の感情をわかりやすく表現できていて嬉しいです
今後も応援宜しくお願いします

解除
2023.08.14 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2023.08.30 ソラ

ありがとうございます!
できるだけ更新頻度を高めていきたいと思いますので、応援宜しくお願いします!

解除

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

 【最新版】  日月神示

蔵屋
歴史・時代
 最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。  何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」 「今に生きよ!」  「善一筋で生きよ!」  「身魂磨きをせよ!」  「人間の正しい生き方」  「人間の正しい食生活」  「人間の正しい夫婦のあり方」  「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」  たったのこれだけを守れば良いということだ。  根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。  日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。  これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」 という言葉に注目して欲しい。  今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。  どうか、最後までお読み下さい。  日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。    

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。