俺様αアイドルと歌で発情しちゃったΩ

弓葉

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最終話:

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 僕はネオ様と初めて会ったショッピングモールに来ていた。まだ松葉杖にはなれないけど、雪が降っていない時期で本当によかったと思う。雪が積もっていれば、僕は病院で身動きが取れなかっただろう。

 ストリートピアノの前で、僕たちは立ち止まった。昔と変わらずぽつんと置かれたピアノはどこか寂しそうに見える。まるで、あの時から時間が止まっているかのようだ。

「……懐かしいな」

 ネオ様はどこか遠くを見ていた。過去を思い出しているのだろうか、そんな横顔も美しかった。

「ネオ様はただストリートピアノを弾いていたんじゃない。素通りされていたピアノに魔法をかけたんです。僕はあの時、あの場所にいた。忘れもしません。ネオ様がピアノを弾き始めた途端に、館内アナウンスが流れて僕だったら心が折れていたと思います。だけど、ネオ様はピアノを弾き続けた。いつか館内アナウンスが終わることを知っていたから」

 ネオ様の反応が見たくて隣に立つネオ様の顔を見ると、優しく笑っていた。

「そんなたいそうなこと考えてねーよ。初めてだったから、周りが見えていなかっただけ。ピアノに夢中だったんだ」

 ネオ様は照れ笑いをする。僕はだんだんネオ様の感情がちょっとした仕草で分かるようになっていた。

「お前のために一曲弾いてやろうか?」

 ネオ様はストリートピアノの丸イスに腰掛ける。今から生演奏が聴けるのかと思うと、僕の興奮は一気に最絶頂まで高まった。

「ぜ、ぜひお願いします!!」

 僕の興奮した大声がショッピングモールに響いた。

「あ、すみません。嬉しくてつい……」

 僕はネオ様に謝った後、周りにいるお客さんに向かってペコペコと頭を下げる。すると、ネオ様はこっちを見ろと言わんばかりにピアノの鍵盤を指で弾いた。僕の意識は一瞬でネオ様のピアノの音に惹かれる。もう、目を離すことができなかった。耳だけではなく、全身でネオ様が奏でる音を待っている。最初に弾く曲はなんだろう、とわくわくしながら待っていれば、あの日と同じ音が聞こえてきた。

(おわり)
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