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虫の羽音
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日が沈み、森が眠る。騒がしい鳥は静かになった。
「いよいよだな」
キョウイは大木に向かって刀を構える。僕はキョウイの後ろから大木を見た。
「どうだ? 何か音はするか」
キョウイに言われて僕は耳を澄ます。何も音はしない。虫が羽ばたく音もしなかった。
「何もしない……静かすぎて怖いぐらいだ」
僕は身震いをする。普通は何かしら生き物の気配がする。それが一切しない。とても嫌な予感がした。
「もしかしたら、キツネに化かされたかもしれないな」
僕に馬乗りしてきたキツネ獣人を思い出す。確かに、この世界の住人ではない僕達のことを疑っていた。
「どうする?」
僕はキョウイの意見に従おうと思った。僕よりもキョウイの方が正しい選択肢を選んでくれると思ったからだ。
「森は俺の専門外だ。キツネ獣人を飼い慣らしたかったが、そうはいかないようだし、山を下りよう。夜の森に罠が巡らされては手も足もでない」
キョウイは大木に背を向ける。すると、何かの気配がした。キョウイも同じく何かの気配を感じたようで、同じタイミングで振り返る。そこには闇夜に輝く者がいた。
「これがクイーンバチ……」
僕の目の前には金髪の美少年がいる。ただ、背中から羽が生えていた。僕が少年をクイーンバチと判断した理由は王族のような衣装を着ていたからだ。
「変わった客人が来ると聞いてな」
少年は感情無く笑った。冷酷な性格をしてそうだ。
「あんたがクイーンバチか?」
キョウイは僕を背中に隠してくれる。僕は役に立つのかわからない木の棒を握りしめた。
「いかにもそうだが」
クイーンバチはブーンと羽を鳴らして威嚇をしてくる。その嫌な音は僕の頭の中に浸食してきた。
「うるさ……」
僕はその音を止めてほしくて木の棒をクイーンバチに投げつける。
「ふん」
クイーンバチは何ごともないように避けた。まだ嫌な音は鳴り続けている。
人間だった頃の本能だろうか。その音から早く逃げたい思いに駆られた。
――病気に負けて死ぬぐらいなら、病気に勝つために死にたい。だから、俺は自殺する。
嫌な虫の羽音と共に言葉が聞こえた。聞きたくない。聞きたくもない。どうして今、あいつの声が聞こえてくるんだ。
「おい、ワダツミ! どこに行くんだ」
キョウイが叫ぶ声がする。だけど、僕はその場所にいたくなかった。これ以上、その場所にいれば聞きたくもない自分の言葉が聞こえてきそうで怖かった。
「いよいよだな」
キョウイは大木に向かって刀を構える。僕はキョウイの後ろから大木を見た。
「どうだ? 何か音はするか」
キョウイに言われて僕は耳を澄ます。何も音はしない。虫が羽ばたく音もしなかった。
「何もしない……静かすぎて怖いぐらいだ」
僕は身震いをする。普通は何かしら生き物の気配がする。それが一切しない。とても嫌な予感がした。
「もしかしたら、キツネに化かされたかもしれないな」
僕に馬乗りしてきたキツネ獣人を思い出す。確かに、この世界の住人ではない僕達のことを疑っていた。
「どうする?」
僕はキョウイの意見に従おうと思った。僕よりもキョウイの方が正しい選択肢を選んでくれると思ったからだ。
「森は俺の専門外だ。キツネ獣人を飼い慣らしたかったが、そうはいかないようだし、山を下りよう。夜の森に罠が巡らされては手も足もでない」
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「これがクイーンバチ……」
僕の目の前には金髪の美少年がいる。ただ、背中から羽が生えていた。僕が少年をクイーンバチと判断した理由は王族のような衣装を着ていたからだ。
「変わった客人が来ると聞いてな」
少年は感情無く笑った。冷酷な性格をしてそうだ。
「あんたがクイーンバチか?」
キョウイは僕を背中に隠してくれる。僕は役に立つのかわからない木の棒を握りしめた。
「いかにもそうだが」
クイーンバチはブーンと羽を鳴らして威嚇をしてくる。その嫌な音は僕の頭の中に浸食してきた。
「うるさ……」
僕はその音を止めてほしくて木の棒をクイーンバチに投げつける。
「ふん」
クイーンバチは何ごともないように避けた。まだ嫌な音は鳴り続けている。
人間だった頃の本能だろうか。その音から早く逃げたい思いに駆られた。
――病気に負けて死ぬぐらいなら、病気に勝つために死にたい。だから、俺は自殺する。
嫌な虫の羽音と共に言葉が聞こえた。聞きたくない。聞きたくもない。どうして今、あいつの声が聞こえてくるんだ。
「おい、ワダツミ! どこに行くんだ」
キョウイが叫ぶ声がする。だけど、僕はその場所にいたくなかった。これ以上、その場所にいれば聞きたくもない自分の言葉が聞こえてきそうで怖かった。
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