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鬼のセンチネル
初めての任務 弐
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黄昏時になり、日が沈む。夜になって藤と玖賀は家を出た。空を見上げると、時折月が分厚い雲から顔を覗かせて淡い月明かりを漏らしていた。それでも街灯のない道は薄暗く、すれ違う人は少ない。
陰陽寮の指令によると、山を越えた里にセンチネルが現れたらしい。藤と玖賀は山道を歩き、その人里に向かっていた。山道とあって人通りは少ないが、たまにすれ違う人達は藤と玖賀を見て目を合わさないようにして通り過ぎる。藤は玖賀を盾にして隠れるが、玖賀の白髪と角はよく目立つ。
「玖賀、任務中も外しちゃダメなのか?」
藤は歩きながら玖賀に聞く。鎖の重さで肩が凝りそうだった。歩くたびにシャラシャラ、とうるさく音が鳴り続けている。
「当たり前だ。外したら何のためにつけたのかわからない」
センチネルの奴隷のような見た目に、藤は少しでも玖賀と距離を取ろうとした。玖賀はもちろん距離を取ることを許さない。少しでも玖賀から離れれば、鎖を引っ張り無理やり傍を歩かせた。
「イッてぇ……首痛いんだけど」
藤はだんだん玖賀の横暴に腹が立ってきていた。言葉遣いが荒くなっている。
「フン、離れるのが悪い」
「密着しながらだと歩きにくいだろう」
喧嘩をしながら歩いていれば、妙な気配を二人は感じた。藤は鼻を覆う。かなりの刺激臭だった。玖賀も聴力で何か嫌な音を拾ったのか、顔をしかめる。
「血の臭い……」
玖賀は藤を護るように前へ出た。藤は玖賀の後ろについていく。草木をかきわけ、進む玖賀。短く整えられていた爪が鋭く伸びていた。敵が近いようだ。
「うっ……」
首輪の鎖が枝に引っかかる。藤は玖賀を睨み付けて怒った。
「玖賀、もういい加減に鎖を外せよ。邪魔だとわかっただろ」
藤が怒った瞬間、キラリ、と何かが光った。藤が光った方へ見ると、鉈が藤めがけて飛んで来た。
「うわっ!」
ヒュン、と音がしてもうダメだと目をつぶる。痛みを感じなくておそるおそる目を開ければ、鉈が藤の背後にある幹に刺さっていた。どうやら玖賀が鎖を操り鉈を弾いたらしい。
「いい陰陽師を連れておるな、わしによこせ」
木の上から声がした。
藤が目を凝らして見ると、雲に隠れていた月が姿を現した。そのお陰で、鉈を投げてきた人物が見える。――少年だ。
甚平を着て、髪の毛を一結びにしている。顔はまだ幼かった。だが、玖賀と同じ赤い目をしている。見た目は子どもだが、間違いなくセンチネルだった。
陰陽寮の指令によると、山を越えた里にセンチネルが現れたらしい。藤と玖賀は山道を歩き、その人里に向かっていた。山道とあって人通りは少ないが、たまにすれ違う人達は藤と玖賀を見て目を合わさないようにして通り過ぎる。藤は玖賀を盾にして隠れるが、玖賀の白髪と角はよく目立つ。
「玖賀、任務中も外しちゃダメなのか?」
藤は歩きながら玖賀に聞く。鎖の重さで肩が凝りそうだった。歩くたびにシャラシャラ、とうるさく音が鳴り続けている。
「当たり前だ。外したら何のためにつけたのかわからない」
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「イッてぇ……首痛いんだけど」
藤はだんだん玖賀の横暴に腹が立ってきていた。言葉遣いが荒くなっている。
「フン、離れるのが悪い」
「密着しながらだと歩きにくいだろう」
喧嘩をしながら歩いていれば、妙な気配を二人は感じた。藤は鼻を覆う。かなりの刺激臭だった。玖賀も聴力で何か嫌な音を拾ったのか、顔をしかめる。
「血の臭い……」
玖賀は藤を護るように前へ出た。藤は玖賀の後ろについていく。草木をかきわけ、進む玖賀。短く整えられていた爪が鋭く伸びていた。敵が近いようだ。
「うっ……」
首輪の鎖が枝に引っかかる。藤は玖賀を睨み付けて怒った。
「玖賀、もういい加減に鎖を外せよ。邪魔だとわかっただろ」
藤が怒った瞬間、キラリ、と何かが光った。藤が光った方へ見ると、鉈が藤めがけて飛んで来た。
「うわっ!」
ヒュン、と音がしてもうダメだと目をつぶる。痛みを感じなくておそるおそる目を開ければ、鉈が藤の背後にある幹に刺さっていた。どうやら玖賀が鎖を操り鉈を弾いたらしい。
「いい陰陽師を連れておるな、わしによこせ」
木の上から声がした。
藤が目を凝らして見ると、雲に隠れていた月が姿を現した。そのお陰で、鉈を投げてきた人物が見える。――少年だ。
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