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第四章:カフェラウンジ
カフェラウンジ(2)
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4人は、それぞれ思い思いにお茶や軽食を口に運びながら、先ほどの騒ぎについて話し始めた。
「しかし、ヴァニエルとリリアーネ、本当にしつこいわね」
キャサリンが大きなため息をつきながら、紅茶を置く。
「特にヴァニエルだな」
セドリックも肩をすくめながら同意した。
「でも、ヴァニエルとリリアーネ、最後は随分と慌てていたわよね」
にやにやとキャサリンが切り出すと、セドリックがため息混じりに頷いた。
「まあ、あれだけ騒いでいれば、ノエルが来た瞬間に怯むのも無理はないだろう。あの二人は普段から自信たっぷりだが、結局のところ、上位の存在に弱いんだ」
「それでいて、ノエルには随分としつこくしているのよね」
キャサリンが頬を膨らませながら不機嫌そうに言った。
「廊下でもニヤニヤしながら兄妹で話してるのなんて何度も見たし、ヴァニエルなんて、いつもノエルに近づくチャンスをうかがっているみたいだった。誘われても、ノエルはやんわり断ってるのに、全然めげないんだもの。いつも、追い払うのに困ってるのよね」
「実際、あいつはノエルが王女だと信じ込んでいるんじゃないか?」
セドリックが軽く肩をすくめて笑う。
「あれだけ執着している理由が他に思いつかないし、『王女に求婚されている』なんて噂を広めるくらいだ」
「それ!聞いたことあるわ!」
キャサリンが身を乗り出す。
「『王家に名を連ねる日も近い』とか、『自分の功績を認めるに違いない』とか、完全に夢の中にいるみたいな話ばかり言ってた!」
「自分の願望を、さも真実かのように吹聴するのが彼のやり方ですものね」
エレノアが少し苦笑しながら付け加えると、セドリックも同調するように微笑んだ。
「まあ、あいつの性格を考えれば、驚きもしないけどな。ただ、ノエルがどれだけ断っても気にしないのは、流石にしつこすぎる」
キャサリンは「そうよ!」とセドリックの言葉に声を上げたが、少し躊躇したようにノエルの方をちらりと見た。ノエルは特に表情を変えず、静かにお茶を飲んでいたが、どこか余裕のあるその姿が、キャサリンの心に疑問を呼び起こした。
「でも……」
キャサリンが小さく呟いた。
「でも?」
セドリックが問い返すと、キャサリンは少し戸惑いながらも続けた。
「その、ヴァニエルの噂って、あながち間違ってないんじゃないかって、思うこともあって……」
室内の視線がキャサリンに集まる。キャサリンは慌てて手を振った。
「違うのよ!ノエルがヴァニエルと何かあるとか、そういう意味じゃなくて。ただ、ほら、ノエルってすごく品があるし、あの態度とか話し方とか……普通の貴族とは少し違う気がして……」
キャサリンの言葉に、ノエルがふっと微笑んだ。
「キャサリン?」
ノエルが静かに問いかける。その声に促されるように、キャサリンは少し息をついて続けた。
「その……ノエルって、もしかして、本当に王女なの?」
その一言が、静かな室内に響いた。ノエルは微笑みを崩さないまま、少しだけ首を傾げた。
「どうしてそう思うの?」
「だって、ノエルが誰よりも美しくて、頭も良くて、それに……なんていうか、特別な雰囲気を持ってるから」
キャサリンは少し顔を赤くしながら答えた。
「でも、ノエルが何者であっても、私にとってノエルは大切な友達よ!」
その言葉に、ノエルの表情が柔らかくなる。
「キャサリン、本当に私の正体がどんなものでも、あなたは変わらず私のことを好きでいてくれるの?」
その問いは、思いのほか真剣で重たかった。キャサリンは一瞬だけ息を飲み、瞳を大きく見開いたが、次の瞬間には力強く頷いていた。
「当たり前じゃない!ノエルが何者だろうと、私にとってノエルはノエルよ!」
キャサリンの声はしっかりと響き、迷いのないその答えに、ノエルの瞳がわずかに揺れた。
「たとえ、私が平民でも?」
「もちろんよ!」
「もし、私が貴族の血を引いていても?」
「どこの血を引いていたって関係ないわ!」
ノエルは一瞬息を呑んだ。その答えを聞くたびに、心の中に溜まっていた不安が溶けていくようだった。キャサリンの真剣な眼差しには、一片の迷いもなかった。
「それなら、もし私が……王族だったとしても?」
その一言に、室内の空気が一気に張り詰めた。セドリックもエレノアも、ノエルとキャサリンのやり取りを黙って見守っていたが、さすがに今の問いかけには驚きを隠せない。
だが、キャサリンの表情は変わらなかった。むしろ、ノエルの瞳を見つめるその視線は、さらに力強さを増していた。
「ノエルが王族だろうが、平民だろうが、何だっていいの。私にとって大事なのは、ノエルがノエルであることだけ。それ以外は本当にどうでもいいわ!」
その答えに、ノエルの瞳に一筋の涙が浮かんだ。
「……ありがとう、キャサリン」
ノエルの声は震えながらも穏やかで、温かい感情に満ちていた。その声に、キャサリンはほっとしたように微笑む。
「本当に、ノエルったら変なことを気にしてたのね。もう!私が誰よりもノエルの味方だって、これまで何度も言ってきたでしょう?」
「そうね……キャサリンの言葉に救われることが多いわ」
「じゃあ、今度何かお礼してよね!ノエルが本気で困ったときは私に頼るのよ!」
ノエルはその言葉に優しく笑いながら、静かに頷いた。その静かな仕草に、どこか満ち足りた感情がにじみ出ていた。
「キャサリン、私、貴方のことが大好きよ。でも、ごめんなさい。私、貴方にたくさん隠し事をしているの。それでも、今、私は貴方に何もお話しすることができないの」
その言葉はとても穏やかで、それでいて断固としたものだった。
「仮に私が王室の子だったとしても、卒業するまでは王家からの発表がない限り、何も語ることは許されていない…それが規則だから」
「規則……」
キャサリンが呟くように繰り返した。どこか納得できない様子だったが、ノエルの瞳の奥に宿る確固たる意志を感じ取り、それ以上追及することはできなかった。
その時、エレノアがゆったりとカップを口元に運び、静かに一言を漏らした。
「言葉で何かを伝えることは、確かに禁止されているわね」
その言葉に、ノエルがわずかに眉を上げてエレノアを見つめる。エレノアの視線は柔らかく、それでいて鋭い何かを含んでいた。まるで心の奥底を見通すようなその目は、ノエルに何かをそっと問いかけているようだった。
ノエルは目線だけで応え、ゆっくりと胸元に手を伸ばした。その動作が自然に視線を集める。キャサリンとセドリックの目が、ノエルの指先に吸い寄せられたように動く。
「……なら、これを」
ノエルが取り出したのは、一本の細い鎖に通された指輪だった。光を受けて鈍い輝きを放つその指輪には、緻密な細工が施されており、一目でただの装飾品ではないことがわかる。
「これは、私の生家に伝わる指輪です」
ノエルがそう言って指輪を示すと、キャサリンとセドリックの視線が釘付けになる。その指輪には、王家の象徴でもある、特徴的な剣の一振りが彫られていた。しかも、それは最近市井で出回っている魔道具のロゴにも刻まれている双剣と酷似している。
「まさか……」
セドリックが小さく息を呑む。それがどういう意味を持つのか、すぐに察したのだろう。
「これ以上は、私の口から何も言えません」
ノエルは指輪を握り締めながら、静かに言った。まるでその指輪に込められた意味が、自分の全てを物語っているかのようだった。
キャサリンは息を止めたまま、ただノエルを見つめていた。そして、震えるように絞り出した声で言った。
「ノエル……本当に……?」
ノエルはキャサリンを見つめながら優しく微笑んだ。何も言わない。その沈黙が何よりも雄弁だった。
キャサリンはハッと息を吐き、目元を拭うように手を上げた。感極まった表情でノエルの手をぎゅっと握りしめる。
「ノエルが信じてくれたこと、本当に嬉しい……!ありがとう。絶対に誰にも言わないから!」
セドリックも静かに頷き、真剣な表情で言葉を続ける。
「ここで見たこと、聞いたことは、誰にも話しません。誓います」
ノエルは二人の言葉をしっかりと受け止めるように、小さく頷いた。
「ありがとう。それだけで十分です」
ノエルは彼らの誓いを受け止めるように小さく頷き、その表情にはどこか安堵の色が浮かんでいた。
「しかし、ヴァニエルとリリアーネ、本当にしつこいわね」
キャサリンが大きなため息をつきながら、紅茶を置く。
「特にヴァニエルだな」
セドリックも肩をすくめながら同意した。
「でも、ヴァニエルとリリアーネ、最後は随分と慌てていたわよね」
にやにやとキャサリンが切り出すと、セドリックがため息混じりに頷いた。
「まあ、あれだけ騒いでいれば、ノエルが来た瞬間に怯むのも無理はないだろう。あの二人は普段から自信たっぷりだが、結局のところ、上位の存在に弱いんだ」
「それでいて、ノエルには随分としつこくしているのよね」
キャサリンが頬を膨らませながら不機嫌そうに言った。
「廊下でもニヤニヤしながら兄妹で話してるのなんて何度も見たし、ヴァニエルなんて、いつもノエルに近づくチャンスをうかがっているみたいだった。誘われても、ノエルはやんわり断ってるのに、全然めげないんだもの。いつも、追い払うのに困ってるのよね」
「実際、あいつはノエルが王女だと信じ込んでいるんじゃないか?」
セドリックが軽く肩をすくめて笑う。
「あれだけ執着している理由が他に思いつかないし、『王女に求婚されている』なんて噂を広めるくらいだ」
「それ!聞いたことあるわ!」
キャサリンが身を乗り出す。
「『王家に名を連ねる日も近い』とか、『自分の功績を認めるに違いない』とか、完全に夢の中にいるみたいな話ばかり言ってた!」
「自分の願望を、さも真実かのように吹聴するのが彼のやり方ですものね」
エレノアが少し苦笑しながら付け加えると、セドリックも同調するように微笑んだ。
「まあ、あいつの性格を考えれば、驚きもしないけどな。ただ、ノエルがどれだけ断っても気にしないのは、流石にしつこすぎる」
キャサリンは「そうよ!」とセドリックの言葉に声を上げたが、少し躊躇したようにノエルの方をちらりと見た。ノエルは特に表情を変えず、静かにお茶を飲んでいたが、どこか余裕のあるその姿が、キャサリンの心に疑問を呼び起こした。
「でも……」
キャサリンが小さく呟いた。
「でも?」
セドリックが問い返すと、キャサリンは少し戸惑いながらも続けた。
「その、ヴァニエルの噂って、あながち間違ってないんじゃないかって、思うこともあって……」
室内の視線がキャサリンに集まる。キャサリンは慌てて手を振った。
「違うのよ!ノエルがヴァニエルと何かあるとか、そういう意味じゃなくて。ただ、ほら、ノエルってすごく品があるし、あの態度とか話し方とか……普通の貴族とは少し違う気がして……」
キャサリンの言葉に、ノエルがふっと微笑んだ。
「キャサリン?」
ノエルが静かに問いかける。その声に促されるように、キャサリンは少し息をついて続けた。
「その……ノエルって、もしかして、本当に王女なの?」
その一言が、静かな室内に響いた。ノエルは微笑みを崩さないまま、少しだけ首を傾げた。
「どうしてそう思うの?」
「だって、ノエルが誰よりも美しくて、頭も良くて、それに……なんていうか、特別な雰囲気を持ってるから」
キャサリンは少し顔を赤くしながら答えた。
「でも、ノエルが何者であっても、私にとってノエルは大切な友達よ!」
その言葉に、ノエルの表情が柔らかくなる。
「キャサリン、本当に私の正体がどんなものでも、あなたは変わらず私のことを好きでいてくれるの?」
その問いは、思いのほか真剣で重たかった。キャサリンは一瞬だけ息を飲み、瞳を大きく見開いたが、次の瞬間には力強く頷いていた。
「当たり前じゃない!ノエルが何者だろうと、私にとってノエルはノエルよ!」
キャサリンの声はしっかりと響き、迷いのないその答えに、ノエルの瞳がわずかに揺れた。
「たとえ、私が平民でも?」
「もちろんよ!」
「もし、私が貴族の血を引いていても?」
「どこの血を引いていたって関係ないわ!」
ノエルは一瞬息を呑んだ。その答えを聞くたびに、心の中に溜まっていた不安が溶けていくようだった。キャサリンの真剣な眼差しには、一片の迷いもなかった。
「それなら、もし私が……王族だったとしても?」
その一言に、室内の空気が一気に張り詰めた。セドリックもエレノアも、ノエルとキャサリンのやり取りを黙って見守っていたが、さすがに今の問いかけには驚きを隠せない。
だが、キャサリンの表情は変わらなかった。むしろ、ノエルの瞳を見つめるその視線は、さらに力強さを増していた。
「ノエルが王族だろうが、平民だろうが、何だっていいの。私にとって大事なのは、ノエルがノエルであることだけ。それ以外は本当にどうでもいいわ!」
その答えに、ノエルの瞳に一筋の涙が浮かんだ。
「……ありがとう、キャサリン」
ノエルの声は震えながらも穏やかで、温かい感情に満ちていた。その声に、キャサリンはほっとしたように微笑む。
「本当に、ノエルったら変なことを気にしてたのね。もう!私が誰よりもノエルの味方だって、これまで何度も言ってきたでしょう?」
「そうね……キャサリンの言葉に救われることが多いわ」
「じゃあ、今度何かお礼してよね!ノエルが本気で困ったときは私に頼るのよ!」
ノエルはその言葉に優しく笑いながら、静かに頷いた。その静かな仕草に、どこか満ち足りた感情がにじみ出ていた。
「キャサリン、私、貴方のことが大好きよ。でも、ごめんなさい。私、貴方にたくさん隠し事をしているの。それでも、今、私は貴方に何もお話しすることができないの」
その言葉はとても穏やかで、それでいて断固としたものだった。
「仮に私が王室の子だったとしても、卒業するまでは王家からの発表がない限り、何も語ることは許されていない…それが規則だから」
「規則……」
キャサリンが呟くように繰り返した。どこか納得できない様子だったが、ノエルの瞳の奥に宿る確固たる意志を感じ取り、それ以上追及することはできなかった。
その時、エレノアがゆったりとカップを口元に運び、静かに一言を漏らした。
「言葉で何かを伝えることは、確かに禁止されているわね」
その言葉に、ノエルがわずかに眉を上げてエレノアを見つめる。エレノアの視線は柔らかく、それでいて鋭い何かを含んでいた。まるで心の奥底を見通すようなその目は、ノエルに何かをそっと問いかけているようだった。
ノエルは目線だけで応え、ゆっくりと胸元に手を伸ばした。その動作が自然に視線を集める。キャサリンとセドリックの目が、ノエルの指先に吸い寄せられたように動く。
「……なら、これを」
ノエルが取り出したのは、一本の細い鎖に通された指輪だった。光を受けて鈍い輝きを放つその指輪には、緻密な細工が施されており、一目でただの装飾品ではないことがわかる。
「これは、私の生家に伝わる指輪です」
ノエルがそう言って指輪を示すと、キャサリンとセドリックの視線が釘付けになる。その指輪には、王家の象徴でもある、特徴的な剣の一振りが彫られていた。しかも、それは最近市井で出回っている魔道具のロゴにも刻まれている双剣と酷似している。
「まさか……」
セドリックが小さく息を呑む。それがどういう意味を持つのか、すぐに察したのだろう。
「これ以上は、私の口から何も言えません」
ノエルは指輪を握り締めながら、静かに言った。まるでその指輪に込められた意味が、自分の全てを物語っているかのようだった。
キャサリンは息を止めたまま、ただノエルを見つめていた。そして、震えるように絞り出した声で言った。
「ノエル……本当に……?」
ノエルはキャサリンを見つめながら優しく微笑んだ。何も言わない。その沈黙が何よりも雄弁だった。
キャサリンはハッと息を吐き、目元を拭うように手を上げた。感極まった表情でノエルの手をぎゅっと握りしめる。
「ノエルが信じてくれたこと、本当に嬉しい……!ありがとう。絶対に誰にも言わないから!」
セドリックも静かに頷き、真剣な表情で言葉を続ける。
「ここで見たこと、聞いたことは、誰にも話しません。誓います」
ノエルは二人の言葉をしっかりと受け止めるように、小さく頷いた。
「ありがとう。それだけで十分です」
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