2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス

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第4章 『王都と成り上がり』

51.俺、《剣聖》なんです

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「レティア様、こちらに1つありました!」

「でかしたわ、シンシア!」

 アルゼたちと分かれたレティアとシンシアは、王都の中でも貴族街を中心に香の入った壺を探していた。
 メルとアビの2人よりも、自分たちのほうがこの街に関しては詳しいため、彼女たちには冒険者ギルドなどがあるメインの通りのほうを任せたのだ。

「《ウォーターボール》!」

 ジュッという音ともに、壺の中の火は完全に消えたようだった。

「これで本当に効果があるのかしら……」

 自分には匂いも感じず、この香が焚かれることによって今の惨状が起きてるとは少し信じにくい部分もあった。

「わかりませんが……そうであると信じて、今はとにかく探して火を消すしかないかと」

 シンシアの言葉にレティアは頷き、

「それもそうね。これで少しでも魔物が減ってくれればいいんだけど……」

 1人で中心部へ向かったアルぜのことを思い出し、心配になる。

「そうですね。そうなればアルゼ様の負担も減るでしょうし、レティア様もずっと心配されてましたもんね」

「そそ、そんなことないわよっ……ただ、ちょーっと大丈夫かなぁって思っただけなんだからね」

「はいはい、そうですね。私もアルゼ様のことが心配ですから」

 未だに少し意地を張ってしまうレティアに、シンシアはくすりと笑ってアルゼに思いを馳せる
 彼女もまた、レティア同様にアルゼのことがずっと気になっていたのだ。

「……シンシア、あなた変わったわね」

「え、そうですか? 何か変わりましたか?」

 シンシアとしては特に意識していないので、レティアの言う『変わった』の意味があまりよくわからなかった。

「ええ、そうよ。なんていうか……吹っ切れた? みたいな感じかしら」

「吹っ切れた、ですか……?」

「そ。アルゼに想いを伝えたかしら? それがきっかけだと思うんだけど、ハッキリとアルゼのことを心配するようなことを言ってたし、気持ちを隠すことなくなったって感じかしら?」

「えっ、いえその……」

 シンシアは意識してなかった分、レティアに指摘され、恥ずかしさに顔を赤く染めた。

「ま、いいんじゃないの? あなたのことは昔からよく見てる私が1番知ってるもの。シンシアなら悪い気はしないし、私も許せるわ」

「……本当によろしかったのですか? 私もレティア様のことを昔から見ていたので、今のようなことが本当に望んでいたこととも思えないのですが……」

「まぁ、それはそうだけどね。でも、私だけじゃなくて、アルぜ含めてみんなが幸せなら……それでいいわ」

「レティア様……」

 レティアは少し照れくさそうにし、「あ、でも」と思い出したかのようにシンシアを見つめ、

「1番は私だからね!」

「ふふ……はい、レティア様!」

 絶対に1番を譲らないレティアに、シンシアは微笑ましく思うのだった。


 ◆◇◆


「うーん、いくつかはありましたけど、もうこの辺にはないかもしれないですね」

「あの変な甘ったるい匂いもしないのですよー」

 メルとアビはメイン通りや裏通りなどにあったいくつかの壺を壊し、門の辺りまで来ていた。

「魔物ももういませんし、ここら辺は大丈夫そうですね。衛兵や冒険者ギルドにも伝えましたし、他の場所へ向かいますか?」

「テオス山にもきっとあるのですよー」

「では、そっちへ行きましょうか」

「いいのですかー?」

「え?」

 聞き返すアビに、メルは小首を傾げた。

「アルゼから離れることになるのですよ?」

「うっ、それは……」

 アビの言うように、メルとしては一刻でも早くアルゼの元に駆けつけたい気持ちがあるので、本当は少しの距離も離れたくはない。

「――でも、これはアルゼ様に与えられた重要な任務ですから。メルがしなければいけないことは、少しでも早く任務をこなして、魔物の脅威に苦しんでいる人々を救うことです」

「おーおー、大層な目標ですよー。そんなことまでいち冒険者のメルたちが考える必要もないと思うのですよ?」

「もちろん、可能な限り、という話だと思いますよ。アルゼ様がそう考えているならば、メルはそのために最大限のお手伝いをするだけです。だから、本当は一緒にいたいですけど、今は目の前のことに集中します」

 メルもアビの言っている意味はよくわかっており、すべての人を救うことがただの冒険者がするべきこととは思ってはいないが、敬愛する主が少しでも多くの人を救いたいと考えているならば、持てる力をすべて捧げる思いなのだった。

「やれやれなのですよー。アビ以外は正義感が強すぎるので、アビがバランスを取っていくしかないのですよー」

「ふふ、お願いしますね、アビ」

 メルとアビは王都を出てテオス山に向かうのだった。


 ◆◇◆


「はっ……はっ……あそこら辺か?」

 俺はメルたちと分かれ、貴族街を抜けて王城近くまで来ていた。
 付近の建物は壊されたり、逃げ惑う人々がおり、兵士もそこら辺で魔物と戦っていた。
 ここに来るまで香の入った壺をいくつか破壊しており、先ほど少し一般兵より立場が上そうな兵士に、これまでの話を簡潔に伝えて壺探しをお願いした。
 最初は疑わしげにしていたが、レティアの家紋入りの飾りを見せると、すぐに信じてくれた。

「レティアの言う通りだったな。持たせてくれて助かった」

 王城に近づけば近づくほど、一般人はいなくなり、兵士が増えてきた。

 ――きっとこの先か。

「おい! ここから先は危険だ! さっさと逃げろ!!」

 兵士の1人が、門に近づく俺に向かって大きな声で怒鳴るように言う。

「あ、いえ……この先にエンシェントドラゴンがいますよね? 力になれればと……」

 普通に考えれば、ただの冒険者風情が王城へ通じる門をくぐれるわけないので、俺はどうしたもんかと焦る。

「なに!? 冒険者か!? エンシェントドラゴンには軍で当たっている! それでも厳しいがな……君がこの国のために尽くそうとする姿勢は素晴らしいが、正直、あれはどうにもできまい……君も早く逃げなさい」

「いや、でも……」

 兵士はただの冒険者である俺を気遣ってくれた。
 たしかに俺1人でどうにかなるとも思えないが、俺の特殊なスキルでレオやルイを倒せたことを考えると、まったく力にならないとも思えない。
 だから、俺はあることを伝えることにした。

「実は――俺、《剣聖》なんです」
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