異世界転生したのに最底辺のおっさん、スキルが覚醒してアラサーから成り上がる〜スキル『シャドウマスター』で無双ライフを送ります〜

フユリカス

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27.魔物の襲来

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「いやぁ、それにしても驚いたぜ! まさか、『黄金果』を本当に採ってくる奴がいるとはなぁ」

 上機嫌なライスが、ジョッキを片手に大きく頷いた。
 俺たちはあの後ギルドでを出たところで『疾風の狩人』と再会し、一緒に酒場へ行くこととなった。
 この店も彼らの行きつけらしく、どの料理も美味い。

「すごいわね、しかもグリフォンまで倒すなんて。この依頼は私たちでも避けてたくらいよ」

「シェイドのあの黒い影は、本当に何でもできるんだな」

「シルバーランクじゃなくて、ゴールドにしてもいいくらいじゃない?」

 アリーナ、カルメロ、テルンがそれぞれ感嘆の声を上げる。

「そうですよ! シェイドさんは、本当に凄いんです!」

 エリスが、まるで自分のことのように胸を張って言う。

「いやいや、エリスとピシカのおかげだよ。2人がいなけりゃ、依頼達成はありえなかったさ」

 俺は、少し照れくさそうに頭を掻きながら言った。
 エリスのサポートにはいつも助けられてるし、それはピシカも同じで、彼女の索敵能力には感謝している。

「もう、シェイドったら自分のことになるとすぐそうやって謙遜するんだから! もっと自信持っていいんだよ?」

 ピシカは、少しだけ拗ねたように頬を膨らませながら言った。

「まあまあ、ピシカ。シェイドはそういう奴なんだよ。それより、さっきの話だが……空を飛ぶって、どういうことだ?」

 ライスが、興味津々といった様子で身を乗り出して聞いてきた。

「ああ、それな。実は――」

 俺は、《モード:フェニックス》に変形させた『シャドウ』で、空を飛んだことを説明した。

「空を飛ぶ……だと……?」

「はい、まるで鳥のように自由に空を飛び回れるんです!」

 カルメロが、唖然とした表情で呟くと、エリスが自慢げに答えた。

「へぇ、そりゃあ凄いな。……しかし、それで街に帰ってこようとするとは、なかなか豪快だな」

「あー……それは、すまん。さすがにあそこまで騒ぎになるとは思わなかったんだ」

 俺は、苦笑いを浮かべながら頭を下げた。

「まあ、街の人間には見たことがない光景だったからな。驚くのも無理はないさ。それで、これからどうするんだ?」

「ああ、俺たちは明日にでもここを出て、1度王都に戻ってから東方を目指すつもりだ」

「東方にある差別のない国か……噂には聞くが、本当にそんな国があるのかねぇ」

 ライスは、少し疑わしげな表情を浮かべた。

「まあ、そこは実際に行って確かめてみようと思ってる」

「ふーん、まあ、あんたらなら大丈夫でしょ。東方の国がどんなところか、いつかまた会ったときにでも教えてよ!」

 テルンが楽しそうに言った。

「ああ、もちろん」

「そうだな。俺たちは、しばらくこの街に滞在する予定だ。またどこかで会えるといいな」

「ああ、その時を楽しみにしてるよ」

 俺たちは、酒を酌み交わしながら、別れを惜しんだ。
 こうして、楽しい宴の時間は過ぎていき、やがてお開きの時間となった。

「それじゃあ、俺たちはそろそろ行くよ」

「ああ、元気でな」

 俺たちは、『疾風の狩人』の面々に別れを告げ、店を出た。
 別れ際、ライスが少し言いにくそうに、

「……シェイド、マークのことなんだがな、気をつけたほうがいい」

「ああ、わかってる」

 俺は、ライスの忠告に力強く頷いた。


 ◆◇◆


 宿に戻った俺は、自室のベッドに腰掛け、今日の出来事を思い返していた。
 『黄金果』の採取、ランクアップ、『疾風の狩人』との出会い……そして、マークとのこと。
 スキルの力が解放されてからというもの、これまで成し得なかった多くのことを、俺は成してきた。
 その証として、首元にはシルバーランクのプレートが輝いている。
 俺はそれを手に取り、じっと見つめた。

「……シルバーランクか」

 長い年月、ブロンズランクのままだった俺にとって、それは大きな変化だった。
 だが、これはまだ始まりに過ぎない。
 俺は、たしかに歳を重ねておっさんになってしまったが、もっと先へ、もっと高みへ進んでいけると、そう確信していた。


 ◆◇◆


 翌朝、俺たちは宿を後にした。
 街の門の前には、『疾風の狩人』の面々が見送りに来てくれていた。

「見送りありがとう」

「次はいつ会えるかわからんからな。また、ゆっくり酒でも飲もうぜ! 」

「ああ、また会おう」

 俺はライスと固く握手を交わし、『疾風の狩人』に別れを告げ、歩き出した。
 街を出てしばらく歩いていると、

「ねぇ、シェイド! 『シャドウ』に乗って帰らないの?」

 と、ピシカが目を輝かせて聞いてきた。
 俺は少しだけ考え、

「いや、やめておこう。昨日、騒ぎになったばかりだし、また街で騒ぎになったら面倒だ」

 ピシカは少しだけ不満そうに唇を尖らせたが、すぐに笑顔になり、

「まあ、それもそっか。なら、今度、思いっきり空を飛ぼうね!」

 と言い、

「私もまた空を飛びたいです!」

 と、エリスも主張した。

「そうだな。少し落ち着いたら、また《モード:フェニックス》で飛んでみよう」

 俺たちは、そんな会話をしながら、王都へと続く道を歩いていった。
 道中、何度か魔物に襲われたが、俺たちの敵ではなかった。
 だが、何度目かの休憩を終え、再び歩き出したその時、

「……! シェイド! 何か変だよ!?」

 ピシカが鋭い声で言った。

「どうした?」

「四方八方から魔物が向かってきてる! すごい数だよ!」

 ピシカの言葉に、俺は周囲を見回した。
 一見いつもと変わらない森の風景だが、たしかに遠くから獣の唸り声や、地を這うような音が聞こえる。
 そして、それは徐々に近づいてきている。

「……警戒を怠るなよ。何が来てもいいように準備しておけ」

「はい!」

「了解!」

 俺の言葉に、エリスとピシカは力強く頷いた。
 俺はスキルを使える分の影を残し、余りで『シャドウ』を創り出す。
 エリスも杖を構え、ピシカも臨戦態勢を整える。
 そして――、

「――来たよ!」

 ピシカが叫ぶと同時に、四方から魔物が姿を現した。
 ウルフ、ワイルドボア、ジャイアントラット、コボルト……これまでとは比べ物にならないほどの数だ。

「こんなに……!?」

「どうなってるの……!?」

 エリスとピシカが、驚きの声を上げる。

「とにかく、今は戦うぞ!」

 襲いかかってくる魔物たちに向かって、『シャドウ』が突っ込み、次々と薙ぎ倒していく。
 俺は《シャドウブレイド》と《シャドウリーパー》を使い分け戦い、エリスは氷の矢を放ち、ピシカは獣人特有の身体能力で、魔物たちを圧倒していく。
 しかし、魔物の数は一向に減る気配がなかった。
 まるで、無限に湧いてくるかのようだ。

「くそっ、キリがないな……! いったい、何なんだ!? どうしてこんなに魔物が……!」

 俺は襲ってくる魔物の多さに息を切らす。
 こんなに多数の魔物たちが同時に現れるなんて、普通では考えられない。
 それに、この魔物の種類もバラバラだ。
 何種類もの魔物が、協力するように襲いかかってくるなんて、まるで誰かに――。

「――シェイドさん! あそこに!」

 俺が思考を巡らせていると、エリスが緊迫した声で叫ぶ。
 俺は、ハッとして後ろを振り返ると、

「マーク……っ!」

 そこには、ニヤリと笑みを浮かべたマークが、俺を嘲笑うかのように立っているのだった。
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