16 / 40
16.クズの命は紙より軽い
しおりを挟む
島袋町は、歓楽街から車で三十分の距離にあった。四谷は手前でタクシーを降り、目的の開成マンションまで二十分かけて移動した。
夜中の零時を回った。今夜は徹夜で宿題をやらなくてはならない。
三〇二号室のベルを鳴らす。
「誰だ」棟方の声。
「すいません、タイジさんの使いのヒロシです」
ドアが開いた。金髪を逆立て、顎に髭を生やした男が立っていた。こいつが棟方か。
「遅かったじゃねえか」
「すみません。道が混んでいて」
「まあ、あがれや」
四谷の貧相な姿にすっかり油断している様子だった。
「石田組の高田の情報ってなんだ」
「はい、奴の女のマンションが分かったんです。それで、シンジさんに連絡したいと思いまして」
「シンジには俺が言っておいてやる。その女はどこにいるんだ?」
「リバーサイド若宮ってマンションの一二〇三号室にその女を飼っているみたいなんです」
「ああ、あの高級マンションか」
四谷はじっくりと部屋を見回した。他に誰もいないようだ。部屋から連れ出す気でいたが、この部屋で口を割らせるか。
「で、奴はいつ女のところにやってくるんだ?」
「決まっているのは木曜日です。女の部屋にいつも泊まっているみたいでして」
「おまえ、その情報をどこで仕入れたんだ?」
「onionちゃんねるのアングラ板ですよ」
「オニオンちゃんねる?」
「ダークウェーブ内にある有名な闇サイトなんですよ。よく、裏の職業安定所とかってあるじゃないですか。一緒に犯罪やりませんかって募集掛けているサイト。ああいうサイトのひとつなんですけど、ベラマチュア尊師を崇拝する会ってのがありまして、そこに殺すべき人物一覧ってのがあるんです。高田に関する情報もそこに載っていました」
「面白そうじゃねえか。どのサイトか俺にも教えろよ」
「簡単にはつながらないんですよ。特殊なソフトをダウンロードしなくちゃいけないんで」
「じゃあ、そのソフトをダウンロードしろよ」
そういってテーブルのノートパソコンのほうに顎をしゃくった。
「わかりました」
あのパソコンにはスカルの情報が載っているのだろう。いいものが手に入りそうだ。
「あのお……パスワードを」
「貸してみろ」
棟方がパスワードを入力する。munascal0709。覚えた。
ログイン後、画面が開いた。デスクトップに多くのアイコンが並んでいる。その一つをクイックする。
「勝手なこと、するんじゃねえ!」
棟方がいきなり四谷の首筋を掴んだ。隙を見てスタンガンを押し付けた。棟方の腕を通って首筋にぴりっと弱い電流流れてきたが、大したことはない。
昏倒した棟方の体に、さらに二度電流を流し、拘束バンドで自由を奪った。
パソコン上のアイコンを順番に開いていく。特に追加のパスワードは要求されなかった。
名前と電話番号が書かれたリストがほとんどだった。何かの取引の客のリストなのだろう。柏葉真治の居場所を特定できるような情報はなかった。
「てめえ! 何しやがる」目を覚ました棟方が暴れ出した。やはり、この男に聞くしかない。
「柏葉真治はどこにいる?」
「知らねえよ!」
サバイバルナイフを取り出す。棟方の目に脅えの影が走った。
「どうせ喋ることになるんだ。意地を張らずに素直にしゃべれ。柏葉真治はどこだ?」
「知らねえな」
棟方をうつぶせにし、拘束バンドで固定した手首をつかんだ。右の人差し指にサバイバルナイフの刃をあてがう。
「柏葉真治の居場所を思い出したか?」
「やかましい、糞ったれが」
棟方の顔を床に押し付け、ナイフに力を加えた。棟方の悲鳴が部屋を満たす。ナイフの刃が指の皮と肉を割き、骨を簡単に切断した。切り落とされた指が、床を転がる。
「柏葉真治の居場所を思い出したか?」
床から人差し指を掴み上げ、棟方の目の前に置いた。
「た、助けて……」
「だから言ったじゃないか。どうせ喋ることになるんだから素直に喋れって。柏葉はどこにいる?」
「居場所は知らないんだ!」
「もう一本、いくかい?」
「本当なんだ! 石田組と揉め始めてから、シンジのやつ、こちらから連絡できないようにしやがたんだ!」
どうやら、嘘は言っていないようだ。やくざに拷問されたら仲間の口から隠れ家の情報が漏れるかもしれない。柏葉はそれを恐れて、自分の居場所を誰にも教えていないのだろう。
「奴の居場所を特定できそうな情報は?」
「知らない」
ナイフの刃を指にあてがう。
「本当だよ! でも、女を連れている。塚崎美登里って女だ。シンジが盗品とかシャブを捌かせている女なんだ」
塚崎美登里。やはりあの女が一緒か。電話に出ないのも、柏葉の命令なのだろう。
棟方のスマートフォンのスイッチを押す。指紋認証だったので、切り落とした人差し指を当ててみると、画面が開いた。
スマートフォンを確認したが、柏葉の連絡先は確かに保存されていない。重要な情報もないようだ。
「柏葉にはどうやったら会えるんだ?」
「向こうから連絡が来る」
四谷が立ち上がった。この男は本当に柏葉の居場所を知らないらしい。つまり、これ以上ここにいても仕方ないということだ。
室内を見回したが、適当なものが見当たらない。
「指が痛えよ。はやく自由にしてくれ」
床にアロハシャツが落ちていた。それを手に取って、棟方をうつぶせにした。
「な、何しやがる!」
アロハシャツの袖を、棟方の首に巻き付け、一気に締め上げた。
今夜作った二つの死体。きっと石田組の報復だと、世間は騒ぐだろう。
夜中の零時を回った。今夜は徹夜で宿題をやらなくてはならない。
三〇二号室のベルを鳴らす。
「誰だ」棟方の声。
「すいません、タイジさんの使いのヒロシです」
ドアが開いた。金髪を逆立て、顎に髭を生やした男が立っていた。こいつが棟方か。
「遅かったじゃねえか」
「すみません。道が混んでいて」
「まあ、あがれや」
四谷の貧相な姿にすっかり油断している様子だった。
「石田組の高田の情報ってなんだ」
「はい、奴の女のマンションが分かったんです。それで、シンジさんに連絡したいと思いまして」
「シンジには俺が言っておいてやる。その女はどこにいるんだ?」
「リバーサイド若宮ってマンションの一二〇三号室にその女を飼っているみたいなんです」
「ああ、あの高級マンションか」
四谷はじっくりと部屋を見回した。他に誰もいないようだ。部屋から連れ出す気でいたが、この部屋で口を割らせるか。
「で、奴はいつ女のところにやってくるんだ?」
「決まっているのは木曜日です。女の部屋にいつも泊まっているみたいでして」
「おまえ、その情報をどこで仕入れたんだ?」
「onionちゃんねるのアングラ板ですよ」
「オニオンちゃんねる?」
「ダークウェーブ内にある有名な闇サイトなんですよ。よく、裏の職業安定所とかってあるじゃないですか。一緒に犯罪やりませんかって募集掛けているサイト。ああいうサイトのひとつなんですけど、ベラマチュア尊師を崇拝する会ってのがありまして、そこに殺すべき人物一覧ってのがあるんです。高田に関する情報もそこに載っていました」
「面白そうじゃねえか。どのサイトか俺にも教えろよ」
「簡単にはつながらないんですよ。特殊なソフトをダウンロードしなくちゃいけないんで」
「じゃあ、そのソフトをダウンロードしろよ」
そういってテーブルのノートパソコンのほうに顎をしゃくった。
「わかりました」
あのパソコンにはスカルの情報が載っているのだろう。いいものが手に入りそうだ。
「あのお……パスワードを」
「貸してみろ」
棟方がパスワードを入力する。munascal0709。覚えた。
ログイン後、画面が開いた。デスクトップに多くのアイコンが並んでいる。その一つをクイックする。
「勝手なこと、するんじゃねえ!」
棟方がいきなり四谷の首筋を掴んだ。隙を見てスタンガンを押し付けた。棟方の腕を通って首筋にぴりっと弱い電流流れてきたが、大したことはない。
昏倒した棟方の体に、さらに二度電流を流し、拘束バンドで自由を奪った。
パソコン上のアイコンを順番に開いていく。特に追加のパスワードは要求されなかった。
名前と電話番号が書かれたリストがほとんどだった。何かの取引の客のリストなのだろう。柏葉真治の居場所を特定できるような情報はなかった。
「てめえ! 何しやがる」目を覚ました棟方が暴れ出した。やはり、この男に聞くしかない。
「柏葉真治はどこにいる?」
「知らねえよ!」
サバイバルナイフを取り出す。棟方の目に脅えの影が走った。
「どうせ喋ることになるんだ。意地を張らずに素直にしゃべれ。柏葉真治はどこだ?」
「知らねえな」
棟方をうつぶせにし、拘束バンドで固定した手首をつかんだ。右の人差し指にサバイバルナイフの刃をあてがう。
「柏葉真治の居場所を思い出したか?」
「やかましい、糞ったれが」
棟方の顔を床に押し付け、ナイフに力を加えた。棟方の悲鳴が部屋を満たす。ナイフの刃が指の皮と肉を割き、骨を簡単に切断した。切り落とされた指が、床を転がる。
「柏葉真治の居場所を思い出したか?」
床から人差し指を掴み上げ、棟方の目の前に置いた。
「た、助けて……」
「だから言ったじゃないか。どうせ喋ることになるんだから素直に喋れって。柏葉はどこにいる?」
「居場所は知らないんだ!」
「もう一本、いくかい?」
「本当なんだ! 石田組と揉め始めてから、シンジのやつ、こちらから連絡できないようにしやがたんだ!」
どうやら、嘘は言っていないようだ。やくざに拷問されたら仲間の口から隠れ家の情報が漏れるかもしれない。柏葉はそれを恐れて、自分の居場所を誰にも教えていないのだろう。
「奴の居場所を特定できそうな情報は?」
「知らない」
ナイフの刃を指にあてがう。
「本当だよ! でも、女を連れている。塚崎美登里って女だ。シンジが盗品とかシャブを捌かせている女なんだ」
塚崎美登里。やはりあの女が一緒か。電話に出ないのも、柏葉の命令なのだろう。
棟方のスマートフォンのスイッチを押す。指紋認証だったので、切り落とした人差し指を当ててみると、画面が開いた。
スマートフォンを確認したが、柏葉の連絡先は確かに保存されていない。重要な情報もないようだ。
「柏葉にはどうやったら会えるんだ?」
「向こうから連絡が来る」
四谷が立ち上がった。この男は本当に柏葉の居場所を知らないらしい。つまり、これ以上ここにいても仕方ないということだ。
室内を見回したが、適当なものが見当たらない。
「指が痛えよ。はやく自由にしてくれ」
床にアロハシャツが落ちていた。それを手に取って、棟方をうつぶせにした。
「な、何しやがる!」
アロハシャツの袖を、棟方の首に巻き付け、一気に締め上げた。
今夜作った二つの死体。きっと石田組の報復だと、世間は騒ぐだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる