バージン・クライシス

アーケロン

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 夜も更け、盛り場にも活気が満ちてきた。酔って大声でわめき散らしていた男が、路上で嘔吐した。男の横を、髪を明るい茶に染めた女が、短いスカートから尻をちらつかせながら歩いていく。そんな彼女の後を若い男が尾けていて、声をかけるタイミングを計っている。
 携帯電話の家出サイトに書き込まれていた少女のコメントに返事を書いたのは、今日の昼のことだ。その少女と会うために、桐生美里はクラブ・ダイナマイトを出て、夜の街を突っ切るように歩いていった。
 美里の可憐な美貌が、酔った街の腐臭に侵された男たちの澱んだ目を覚まさせた。酒に酔った中年男のねっとりとした視線が、美里の胸と脚と尻に絡んだ。
「どこかに飲みに行かない?」
 さっき女の後をつけていた若い男が戻ってきて、美里の足を止めようと、正面から話しかけてきた。美里は男をかわすように避け、目も合わさず先を急いだ。男は無視する美里の後をいつまでもつけていたが、やがてあきらめて捨て台詞を吐くと、街のネオンの光の中に消えていった。
 客待ちのタクシーの間を抜け、駅前の噴水広場に出た。約束の場所で、座ってぼんやりタバコをふかしている少女を見つけた。茶髪に染められた髪。このあたりで見かけないどこかの女子高の制服。世慣れした女子高生の典型的なスタイルだ。
「水谷弘江ちゃん?」
 美里が声をかけると、少女が美里の顔を見た。
「あ、美里ちゃん?」
 少女は鼻からタバコの煙を吐き出しながら嬉しそうに笑った。思春期の少女を象徴するかのような色白でむっちりした太腿が短いスカートから飛び出していた。胸も大きそうだ。顔は標準的だがこれならいい、と美里は心の中でほくそ笑んだ。
「こんにちわ。はじめまして」
 美里が笑うと、少女が立ち上がってタバコを路上に捨てた。
「よかった。会えなかったらどうしようかと思ってたの。本当に今晩泊めてくれるの?」
 少女が不安そうに尋ねると、美里が頷いた。少女は喜んで、よろしくといって、美里と並んで歩き出した。相手が自分と同じ歳の少女だとわかって安心しているようだ。
「おなか空かない? おごってあげる」
 美里が誘うと、少女が喜んで後ろをついてきた。
 二人は近くのイタリア料理店に入り、パスタとチューハイを注文した。店員は高校の制服を着ている弘江の事など気にも止めずに彼女の前にチューハイを置いた。
「ここね、知り合いの店なの」そういって、美里が笑った。弘江はようやく落ち着いたのか、ぽってりした唇を舐めると、椅子にもたれてふっくらした足を組んだ。短いスカートの中が見えそうになる。
「さっき、ちょーやばかったの。脂ぎったオヤジがきて、幾らだって聞いてきやがんの。地元だったらダチと一緒にフクロにしてやったのに」
 少女はパスタの入った口をくちゃくちゃ鳴らしながらチューハイを飲んだ。アルコールが回りだした少女は、自分の学校のことや友達のことを懐かしむように話し、先生や親の悪口を、唾を飛ばしながらまくし立てた。少女が立て続けにタバコを吸うので、辺りがカーテンを引いたように白くぼやけた。
 ハイテンションではしゃいでいた少女は、結局チューハイを三杯飲み、スパゲティを平らげた。赤い顔でふらつく少女の手を取って店を出た美里は、通りでタクシーを拾った。
 繁華街のはずれにあるマンションの前でタクシーを停めた。辺りは静かで、どこかで猫が鳴いている。
「あまり綺麗な部屋じゃないけど」
 そういって、少女を部屋に招きいれた。
「いいよ、いいよ。凄いねぇ。一人で暮らしているの? 羨ましいなぁ。もしかして、実家はお金持ち?」
 酔った少女が目を輝かせながら、新しい住処を見回している。明日からここで新しい生活が始まると思ってわくわくしているようだった。
「ねえ、エス、やったことある?」
 床にぺたんと座ってタバコを取り出した少女に向かって、美里が訊いた。
「ええっ? ないけど」
「試してみる?」
 美里の妖しい目が少女を捕らえた。
「ちょっと、それ、やばくない?」
 そういいながらも、少女の目が堪えがたい好奇心で満ち溢れているのを美里は見逃さなかった。
「大丈夫だよ。いつもしてるけど、全然中毒なんかにならないし。友達もみんなやってるよ」
「注射するの?」
 少女が不安そうに訊いてきた
「あぶり。アルミホイルに乗せて、下からライターで炙って、出てきた煙を吸うだけなの。だから大丈夫。もう、最高に気持ちいいんだから」
「そう? 本当に大丈夫?」
「全然、大丈夫」
 美里はベッドの下からパケに入った覚せい剤を取り出した。パケを開き、テーブルの上のアルミホイルにのせると、ライターの火をその下からあてた。少女が興味深そうに横から美里の手元を覗いていた。
 アルミホイルに乗せた白い粉から煙が立ち昇ってきた。
「ほら、思い切り吸って。そして、息を止めるの」
 少女は恐る恐る煙に顔を近づけたが、やがて開き直ったよう大きく息を吸って肺に煙を吸い込んだ。美里の言うとおり息を止めると、両手で口を押さえた。美里も続いて煙を吸い込んで息を止めた。
 少女が息を噴き出した。
「なんか、すっとする」
「もっと吸って」
 美里に促され、少女が再び煙を吸い、美里も後に続いた。
「あああ……気持ちいい……」
 少女がうっとりした表情で視線を宙に浮かせていた。美里が少女の二の腕をすっと撫で上げた。
「きゃっ!」
 少女がびくっとして飛びあがった。
「エスきめるとね、身体が凄く敏感になるの」
 美里は顔を少女の顔に近づけた。
「ねえ、女同士でしたことある?」
 そう言って、美里は少女の肩を両手でつかんだ。
「ええぇ? ちょっと、無理ぃ」
 少女が美里から離れようとして身体を捩った。美里が少女の髪をかきあげた。指を首筋に這わせると、少女の身体がぴくっと動いた。
 美里の顔がゆっくり少女に近づいていき、その整った唇が少女のふっくらした唇を塞いだ。次第に、その口づけが深くなっていく
「ん……」
 少女がくぐもった声を出した。美里は自分の身体を少女の身体に密着させた。少女が少しずつ後ずさる。やがて、背中がベッドの縁にぶつかってしまい、逃げ場を失う。今度は少女が美里の身体に寄りかかってきた。少女の甘い芳香が美里の鼻をくすぐった。
 長いキスだった。美里が唇を話すと、少女がうっとりした表情で美里を見ていた。
「どう?」
「あはは、大丈夫そう」
 少女が照れくさそうに笑う。美里が少女をベッドに押し倒すと、制服の上着を脱がし始めた。少女はくすぐったそうに身を捩った。
 ミニスカートとブラを取り、乳首を口に含むと、少女が身体をびくびく震わせた。
「なんか、すごく感じるよぉ……」
 美里の指先が少女のショーツに触れた。少女が不自然なほど脚を大きく広げる。指が少女の脚の付け根のショーツの隙間から潜り込んだ。少女が尻を前にずらし、美里の指の侵入を助ける。美里の指が少女の柔らかな花弁を開き、その中に侵入してきた。美里の愛撫に少女は息を荒くして悶えた。
「いいよぉ……すごくいいよぉ……」
 少女が顔を赤くして、潤んだ瞳で美里を見た。美里が彼女の右の耳元に囁きかけた。
「ねぇ、これ脱がない? もっと気持ちよくしてあげるから」
 その言葉に少女は頷き、腰を上げた。美里がショーツを膝までずらし片脚から抜いた。むちっとした白い脚を大きく広げ、少女は美里を見ていた。
 むっとする匂いが漂った。思春期の女の匂いだと美里は思った。ベッドの下に隠しておいたプラスチックの小さな容器のふたを開けて指先を中に入れ、覚せい剤の結晶を中指につけた。
 美里の中指が少女の中に入った。ネットリと濡れた中指で少女を蹂躙すると、少女が声を上げて美里の細い体に抱きついた。

「ただいま」
 授業を終えた美里がマンションに戻り、リビングに顔を出した。床に寝ころんでポテトチップスを食べていた少女は上半身を起こし、タバコをふかしてから立ち上がり、美里に抱きついた。
「ねえ……また気持ちよくしてよ……」
 少女がねだる様に身体を美里にすりつけてきた。この部屋に住んで四日、覚せい剤のもたらす快楽を覚えた少女は、この部屋にやって来た美里の顔を見るだけで目を潤ませ、甘い猫撫で声をあげて身を摺り寄せてくるようになった。
 少しペースが速かったかなと、美里は思った。もうやめられないところまできている。しかし、遅かれ早かれ、この少女は薬でつながれ借金でがんじがらめにされる。この女が地獄を見る運命は変わらないのだ。
「それよりさ、男呼んでパーティーしない? エス決めて飲んで騒ぐの」
 美里の提案に少女は一瞬不安げな表情をした。
「やばくない人たち?」
「全然、大丈夫。楽しくって、ノリのいい奴らよ。私の知り合いだし、安全は保証するから」
 美里は携帯を取り出して、男たちに連絡した。三十分ほどして、玄関のベルが鳴った。
「お邪魔しまーす」
 陽気な声を出しながら、佐川憲一と吉村誠が入ってきた。髪を金髪に染めた佐川が少女を見た。
「うほっ、かわいい子ジャン」
 佐川にほめられて、少女はまんざらでもなさそうだった。誠がテーブルの上にコンビニの袋を置いた。
「さあ、今日は楽しく騒ぐぞぉ」
 誠がチューハイの缶を開け、少女のコップに注いだ。佐川の乾杯で宴会が始まった。誠のレベルの低いギャグでも少女は大笑いした。
「ねえ、いっしょにエスきめねえ?」
「やるやる!」
 佐川の提案に少女が嬉しそうにはしゃぐ。佐川が財布の中からパケを取り出し、中身の半分をホイルの上に乗せてライターで炙った。立ち上ってきた煙を少女が吸い込んだ。
「いいね、やるじゃない」
 誠におだてられて少女は立て続けに煙を吸った。少女がハイになって陽気にはしゃぎ、酒を飲んだ。
「ねえ、暑くねえ?」
「脱いじゃえ脱いじゃえ」
 男二人にそそのかされて、少女はシャツを脱いでブラ姿になった。誠がブラに手を伸ばすと、「だーめ」といって少女がその手を払った。
「もっといいのがあるよ」
 そういって、佐川が大事そうにポケットの包みから一センチ角の紙を注意深く取り出した。
「なに、これ?」
 少女がとろんとした目で佐川の手のひらにある白い紙を見た。
「アシッド」
「アシッド?」
「LSDだよ」
 誠が少女の耳元で囁いた。
「エスきめてからこれやるとぶっ飛ぶぞ」
 佐川がベッドの脇の引き出しからはさみを取り出すと。その紙を二ミリ四方に小さく切った。そして、指の上に乗せ、少女の顔の前に持っていった。
「さあ、口あけて。舌の裏に入れるんだ。息で飛ばすなよ」
 少女が口をあけて舌の先を上げた。佐川がすかさず小さな紙片を舌の裏に放り込んだ。少女が口を閉じるのを見て、佐川がにやりと笑った。
「どう?」
「なんか、耳が変。いろんな音が聞こえる」
 少女は潤んだ目で部屋の中を見渡し始めた。
「なんか、部屋の中がぐるぐる回ってる」
 そういって、少女が両手をひらひら動かしながら、よだれを垂らした。
「もういいでしょ。私、行くわよ」
 ずっと黙っていた美里がようやく口を開いた。
「おう、後は任せとけ」佐川がにやりと笑って美里を見た。ベッドの上に押し倒された少女の上に、誠が覆いかぶさってキスしていた。
「手をつけちゃ、だめよ。彼に言って焼きいれてもらうから」
「わかってるって」
 美里は立ち上がって少女をみた。
「じゃあね」
 そういい残し、美里は部屋を出て行った。
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