マネージャーの苦悩

みのりみの

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交際相手

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年明けは東京での成人式には行かないけど休みが欲しいとひろこは申し出た。

年末も忙しく仕事をさせる手前、事務所は10日間の冬休みをひろこに与えた。成人式には出ないけど、まぁ東京の友達と大阪で会ったりするもよし。1人で身体を休めてもよし。俺はひろこにとって有意義に過ごしてくれればそれで良いと思っていた。

年末にひろこが表紙の関西版の週刊誌が完売したという事があった。
関東版の表紙は菊田恵。
菊田恵も菊田恵でそこそこの売れっ子女優である。
部数こそ関西版は少ないだろうがこれが週刊誌だけに増刷はない訳でちょっとしたプレミアがついてヤフオクで高価で取り引きがされていた。

写真集の重版もあった事からこれはひょっとすると大阪でブレイク中か?と俺は思っていた。

正月休み明け、俺は大阪へ会いに行った。

「遊井さん、今年もよろしくね」

今年初めてひろこに会うなり俺は仰天した。
こんがり日焼けをしてどこか海外にでも行ってきたかのような風貌だった。
腕に100万はゆうに越えるだろうダイヤがたくさん入った文字盤の白いROLEXが光っていた。
ピアスは本物なのか?遠くからでも光り輝く品の良いダイヤモンドだ。
いつも局の衣装から買い上げているハズの服はブランドものか?質の良そうな生地の赤い2ピース。
ひろこは薄い腹の関係上、合うサイズのスカートがないのでいつもワンピースを着ているのに、そんなひろこに合うサイズのスカートが市販で売られているものか?
高価そうなキャメル色のブーツに手にはプラダの新しいカバンを持っていた。

これはまずい。

普通の男との交際ならまだしもこれは相当まずい。

ヤクザか成金社長か分からないがこんな20歳の可愛い女がこの若さで愛人気分に交際されては相当困る。

仕事にも支障はでる。金に溺れ引退すると言い出すかもしれないし週刊誌にでも撮られ愛人アイドル娼婦なんて書かれたらもうイメージもへったくれも何もない。

知り合いのCS放送の小高さんというプロデューサーから安藤ひろこを番組MCに使いたいと連絡があった。
有料チャンネル。
全国では見れるけど俺は納得いかなかった。視聴者なんて少ない訳だし一応、民法局でやってるCSチャンネルだが観てる人なんて聞かない。
しかもその小高プロデューサーはタチが悪くて有名だった。 

「一度、安藤ひろこちゃんと会わせてくれないかな?」

「いいですけど、安藤は今大阪ですよ」

「大阪まで会いに行ってもいいよ」

「・・そうですね」

俺が言いかけたところで小高は言った。

「打ち合わせ、だけど遊井さん途中で抜けてくれるよね?大阪まで俺が行くんだし」

きた。と思った。

この「途中でマネージャーが抜ける」その後に2人になって口説いてホテルに連れ込むのが彼の手口だった。

この小高は散々売れないアイドルや駆け出しのアイドルと寝ていた。
それで番組にレギュラーを貰えた女も2.3人はいたが大半はレギュラーにも出さずのらりくらりとやり捨てしていた。

俺の局内喫煙所で得た情報は多岐に渡る自信があった。
小高の右腕である若きディレクターの白部くんと言う子は密会場所の確保やホテル手配、アイドルのライブチケット手配にと番組制作以外の小高からふられる仕事に嫌気をさしていると聞いていたからだ。

そんな小高のような若いアイドルをもて遊ぶ悪い大人にだけは引っかかってほしくない。俺しかひろこを守れる人間はいないと思っていたからひろこの成金ぶりには背筋が凍りついた。

「うーん。仕事がさ、CS番組のプロデューサーがずいぶんひろこのファンらしくて安藤ひろこを自分のトーク番組に使いたいとは言ってるんだけど、なんせCSってのがなぁ。地上波ならいいけど」

小高の事は言いたくないから、俺は極力伏せて話した。

「CSだとなんでダメなの?」

「有料チャンネルだし、俺はちゃんと地上波で出してもらいたいんだよ。ただ、ちょいちょい聞いてると業界人にひろこのファンっているんだよな。お願いしてみようかな」

「お願いって、身体売ったりとかは私はしないわよ」

「当たり前だ」

俺はタバコに火をつけた。
身体を売って仕事をとるという概念がひろこに全くない事に改めて安堵はした。
中にはどうしても売れたいから、枕に積極的だったアイドルも過去にはいたからだ。

「仕事って難しいね。」

「目の前の事をやって少しずつファンが出てきた証拠だろ。地道にやるんだ」

俺はコーヒーをぐっと飲んで本題に入る準備をした。

「ところで、ずいぶん日焼けしてひろこどこに行ってたんだ?」

ひろこは一瞬動揺したような顔をして少し慌てていた。

「だっだって、成人式のお休みでしょ?たまの有休みたいなものよ」

「有休でプライベート充実させるのはいいが、日焼けはこの仕事ではダメだって何度も言ってるだろ?プロ意識持てよ」

俺が吐き捨てるように言うとすいませーんと言わんばかり横目で流してコーヒーを飲んでいる。
俺のチンピラみたいな口調に慣れてるとはいえやっぱりどこか余裕がある。
コーヒーを飲んでいても幸せそうに笑っていた。

「彼氏、できたのか?誰なんだ?」

ひろこはコーヒーを持ったまま真顔になった。そっとコーヒーを置いて天井を見つめていた。
考え事をする時はいつも天井を見る。ひろこの癖だった。

どうかヤクザじゃないように。成金社長の愛人じゃないように。
頼む!
俺は天井を見つめる間緊張が走っていた。

「SOULのHARUさん」

俺はその瞬間腰が抜けるかと思った。

ひろこの恋する相手は人気急上昇中のバンドのボーカルだった。

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