マネージャーの苦悩

みのりみの

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戦闘態勢

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「僕はHARUさん呼びたかったけど。まぁリーダーだしSEIJIさんもいいですよね。ゆくゆくは他のメンバーもピンで呼ぶのも考えてます」

打ち合わせに局へ行くと白部くんは会議室を予約してくれたのに喫煙所で意気揚々と俺に説明をしてくれた。
晴れて自分の番組を持ち、キラキラした瞳の白部くんを見てあぁよかったと同時に俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。

「ねぇねぇ。遊井さん。やっぱりひろこちゃん付き合ってるよね?HARUさんと。詳しくは聞かなかったけどキャスティングでHARUさん指名したのにあっさり断られたし。」

「え?」

ここは番組制作上、白部くんには話しておかなくてはならない。
ひろこと春くんの事について寄った編集をされてはファンに嫌がられるからだ。

「うん。大変だよ。色々と」

「やっぱり。でもお似合いですよね。ファンとしては悲しいけど」

悲しい。

俺は心がズキっとした。
もしこれでひろこが妊娠したり結婚したらファンは悲しい気持ちになるんだ。
これを悲しみにならない方法は何かあるのだろうか。

「そういえば、小高さんBSに異動したでしょ?愛車紹介番組今度やるみたいでまたひろこにオファー来たんだよ」

あぁ、という顔を白部くんはした。

「小高さん、社内で問題起こして減給処分されたんですよ。元気ないから今なら番組でても大丈夫じゃないですか?しかもひろこちゃんも絶頂期に入ったからもう手を出すとかはないと思うけどなぁ」

小高は売れない子、駆け出しの子限定の誘いを繰り返している。ならもうひろこに変に手は出さないだろうと白部くんの話に乗っかって俺は小高の愛車紹介番組のオファーを受ける事にした。

「遊井さん、ありがとう。嬉しいです。」

小高から返事の電話があった。
電話を切ろうとした時、ちょっと待ってと言った。

「愛車紹介番組なので、ひろこちゃん女の子1人だし毎回ミニスカートでの出演をお願いします。」

「・・・」

最後の最後までなんか引っかかるというかしつこい男だった。


「楽屋にあったアイス食べました?」
「食べた!抹茶ラテ味のハーゲンダッツね」
「抹茶味と変わりませんよね?こないだ春が食べてて抹茶味との違いが分からないって」
「昨日春がスタジオで食べてるの見たよ。その前も食べてた。ハマってない?」

収録直前のスタジオのセットの前でメイクの最終確認も済みくだらない話で談笑するひろこと聖司くんが目の前にいる。
緊張感なし。

台本もあるのにほとんど見もせず、普段ならひろこに集中しろ!と喝を入れるところだが相手が聖司くんでなおかつこんなユルい会話されると何も言えない。

自分の身内とも呼べる大切なメンバーの彼女。
そして自分の彼氏のバンドのリーダー。

ただの友達よりも立場的に考えてこのふたりの関係性はすこぶる近い距離なのだろう。
バンド内では一番背の高い聖司くんとひろこは遠目で見ると妙にクールに見えポスターのようだった。
会話の内容は緩いのだがそのギャップがいいな、と一瞬思った。

これで春くんが混ざるとひろこは女になり、春くんも春くんでひろこと接する雰囲気に恋人感がでる。
これは一生番組共演はたまた生番組なんか到底無理だと思ってしまう。

収録後、聖司くんと残りのメンバーやマネージャーと合流して六本木の祭りに行くのにひろこは誘われた。

「夜だし帽子被れば分からないですよ」

聖司くんの言葉に青ざめたが、メンバー全員髪型を変えたばかりだからバレないと言う。
いかにも行きたいという顔をするひろこに向こう休みが1日も見えない手前行かせてあげてもいいか、と思い了承した。

これが男と2人なら絶対許さないがメンバー全員とマネージャーもいれば話は別だ。
秋元さんもいるしすべてを任せて俺は事務所に戻った。
すると秋元さんから電話がかかってきた。

「春くんとひろこちゃんで消えました!」
「消えた!?」

みんなと楽しく祭りに行ったと思えば2人になりたい。
この2人、どこまで2人の世界に浸っているのだろうか。

秋元さんとまた六本木の中国居酒屋で待ち合わせした。

「ひろこ、家に帰らせましたから大丈夫ですよ。」

「春くんも、家帰ったみたいです。帰りは別々で、ひろこちゃんをタクシーで帰したみたいだから大丈夫ですね。」

2人の行動にてんてこまい。
多分当分は続くだろうこんなスリルに俺たちは予感だけ残して戦闘態勢だった。 

「こないだ春くんに問い詰めたら避妊はしてないみたいでした」

「えええー!!ひろこ妊娠しちゃうよ」 

俺は真っ青になって酒の手が止まった。

「言ったんだけど、俺とひろこの事じゃんって聞き耳持たなくて。春くんいつもは温厚で天然なんだけどひろこちゃんの事になると妙に強く出てきちゃって」

「春くん、結構恋愛体質なんですかね。」

「いや、、」

秋元さんはタバコに火をつけた。

「今まで付き合ってきた子何人か見てきましたけど全然違う。かなりひろこちゃんにハマってますよ。結婚できるなら子供できてもいいって思ってますね。要は囲い込み。」

東京に戻ってからひろこの知らないところで春くんはずいぶんひろこに執着しているのを知った。
彼女が東京に戻り遠距離恋愛も終わったのだから肩の力を抜けばいいのに、と思ったが頻繁に会えたら会えたで余計独占欲がでてきたのだろうか。

「それより、遊井さん。おめでとうございます」

「え?あぁ。知ってました?」

俺は今回のひろこの東京進出で昇格した。
もともと「チーフ」という名はついてはいたのだが、「部長」になった。

既存の部長が異動で本社の芸能事務所に異動したからだ。
スライドの異動だったけど、チーフ4名から俺が部長に選ばれた事に俺は自信がついた。

「遊井さん、私のマネジメントから外れるの?」

ひろこが東京にいない間面倒見ていた広瀬七海が俺に言ってきた。

「多分、産休明けるから柴田さん戻ってくるよ。また柴田さんがマネージャーになるから」

「柴田さん、いい人だけどひろこちゃんみたく売れるなら遊井さんがいいな」

「柴田さんも面倒見いいじゃない。俺はひろこともう長いから。ごめんな。」

広瀬は不満そうな顔をしていた。

「こないだ、SOULのHARUさん事務所に来てたね。ひろこちゃんと付き合っているんでしょ?HARUさんと付き合えて、売れっ子になれて、ひろこちゃんずるいよ。」

外から見たらそう思われているのかもしれない。でもひろこは苦労して大阪から這い上がって来た。
苦労と引き替えに春くんが現れた。そうとも俺は思っていた。



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