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年末
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カウントダウン番組は主に紅白に出れなかった歌手達と、後半にかけては紅白が終わって抜けてきたアーティスト達が出演する。
生番組だけあって緊張感はあるが大阪での2年間の歌番組司会をやってきただけありひろこは懐かしく思っただろう。
司会の男性局アナがいて女性タレントが司会を勤める場合センスがでる。
出しゃばらず、仕切りすぎない。アーティストとしゃべりすぎない。そこまで元気よくやらない。ひろこは自分なりの心得があるとかなんとか言っていたのを思い出した。
いつもと違うひろこの冷静さがなんとも褒めてやりたかった。
俺はスタジオの片隅で立会いながらも袖に映るTVで紅白を見ていた。
ちょうどSOULが歌い始めた頃、秋元さんから連絡があった。
「こっちはお祭り騒ぎで。支倉くんと一緒にそちらに乗り込みますから。内海さんにも話してあります。調整入ってるそうですよ。」
ひろこと春くんの共演にヒヤリとするが、年末だしもう今年もあとわずかだしと俺は大目に見てしまった。
「おつかれさまでーす!」
スタジオの裏でコートだけ脱いでSOULは支倉くんとスタンバイをしていた。
「遊井さーん」
秋元さんと一緒になって手を振るメンバー達。支倉くんとともにビールを飲んで来たのか、どこかほろ酔いで妙にテンションは上がっていた。
曲はひろこのCMソング。
音響が流れるとド派手にスタジオに入って行くメンバーをスタジオの裏からハイタッチで見送ると俺も秋元さんもすぐ裏手から袖に向かった。
「来年も今年もよろしく!」
悲鳴のような歓声と盛り上がりで曲が終わると春くん達メンバーと支倉氏がステージに並んだ。
一瞬ヒヤリとしたがスタジオ中がテンションが上がっていたため場はそのまま進行した。
いつものノリでふざけてひろこを抱きしめようとする支倉氏に対してメンバーが笑い戯れる。
スタジオ中がSOULと支倉氏に熱気を帯びる中、春くんはひろこに熱い視線を送っていた。それはさすがの秋元さんも俺の隣で感じとっていた。
「春くん、意識しないようにしているハズがめちゃくちゃラブラブ光線送ってますね」
「まずいなぁ。これ視聴者が変に思わなきゃいいけどなぁ。春くんひろこしか見てないじゃん」
スタジオでは私語もまばらにゆうきくんは紅白饅頭をひろこに渡している。
ケンくんはケンくんでひろこの隣にぴたりと付きそれを見て笑っている。
メンバーとの仲の良さは滲み出ていた。それに支倉氏がひろこに絡んでまた内輪で笑い合う。そんなグダグダなかんじでも、今をときめくアーティスト達に悲鳴まじりの歓声が飛ぶ。
生放送らしく脇が慌ただしくなりひろこがカンペを呼んだ。
「では、お歌の準備ができたようですね。SOULのみなさんで明日2曲同時発売のニューシングルです。どうぞ」
ビジュアル系らしいノリで観客を圧倒する。今年1年で怪物バンドにまで成長できたSOUL。
『そもそもひろこちゃんに会いたいがためにビックになろうと春くんは頑張って歌ってきたんですよ』
前に秋元さんが言っていた。
ひろこのために。
当の本人はそこまで分かっているのかいないのか。
「いやー年末いいね!楽しい!紅白からまさか来るとは思わなかった!」
春くんのMCに観客も悲鳴をあげる。
「えー、年明け1発目は2曲同時リリースなんですけど、俺たちらしい楽曲になったと思っています。みんながね、愛し合って幸せに、そんな歌です。聞いてください」
打って変わって親しみの感のあるPOPでもないバラードでもない独特なサウンド。
聖司くんが長年温めてきた曲だと秋元さんから聞いていた。いつものクールな眼差しとは打って変わって笑顔で楽しそうに歌う春くんを筆頭にメンバー全員もどこか1年最後の仕事という事もあるのか達成感に満ちた満足気な表情だ。
「こんないい曲書けるなんて本当聖司くんは天才だな」
俺がポツリと言うと秋元さんはまさかの目に涙を溜めていた。
「秋元さん、大丈夫ですか?」
「あ、ごめん。遊井さん。俺、今年頑張ったなって、4人の歌聞いてたらなんか泣けてきましたー」
秋元さんは見た事もない顔をして涙を手でぬぐった。
「怪物バンドですからね。SOULは」
「遊井さん、今日呑みに行きましょうよ。」
「もちろんですよ」
俺と秋元さんは袖から見る春くんの歌声に耳を傾けながら俺も今年1年を振り返ると涙が出そうになった。
「5日からの番組収録が仕事はじめだけど事務所挨拶で4日の9時に迎えに行くからな。」
俺はお節の入った重い紙袋と荷物の入った袋と3つ渡した。
重そうな顔をしてひろこは頷いた。
「ひろこ、」
「何?」
ひろこを見つめるといつものようにかわいい顔をしていた。
その顔を目にやきつけていた。
「おつかれ」
今年1年の締めなのに、湿っぽくなるのが嫌で俺は気持ちを切り替えるのに必死だった。
「遊井さん、来年もよろしくね」
「来年、忙しくなりそうだな」
少し笑ってひろこは手を振ってそのままメンバーの待つバンに向かった。
「おつかれさまー」
五十嵐さんが車のドアを開けひろこは春くんの乗る2列目に乗った。
生番組だけあって緊張感はあるが大阪での2年間の歌番組司会をやってきただけありひろこは懐かしく思っただろう。
司会の男性局アナがいて女性タレントが司会を勤める場合センスがでる。
出しゃばらず、仕切りすぎない。アーティストとしゃべりすぎない。そこまで元気よくやらない。ひろこは自分なりの心得があるとかなんとか言っていたのを思い出した。
いつもと違うひろこの冷静さがなんとも褒めてやりたかった。
俺はスタジオの片隅で立会いながらも袖に映るTVで紅白を見ていた。
ちょうどSOULが歌い始めた頃、秋元さんから連絡があった。
「こっちはお祭り騒ぎで。支倉くんと一緒にそちらに乗り込みますから。内海さんにも話してあります。調整入ってるそうですよ。」
ひろこと春くんの共演にヒヤリとするが、年末だしもう今年もあとわずかだしと俺は大目に見てしまった。
「おつかれさまでーす!」
スタジオの裏でコートだけ脱いでSOULは支倉くんとスタンバイをしていた。
「遊井さーん」
秋元さんと一緒になって手を振るメンバー達。支倉くんとともにビールを飲んで来たのか、どこかほろ酔いで妙にテンションは上がっていた。
曲はひろこのCMソング。
音響が流れるとド派手にスタジオに入って行くメンバーをスタジオの裏からハイタッチで見送ると俺も秋元さんもすぐ裏手から袖に向かった。
「来年も今年もよろしく!」
悲鳴のような歓声と盛り上がりで曲が終わると春くん達メンバーと支倉氏がステージに並んだ。
一瞬ヒヤリとしたがスタジオ中がテンションが上がっていたため場はそのまま進行した。
いつものノリでふざけてひろこを抱きしめようとする支倉氏に対してメンバーが笑い戯れる。
スタジオ中がSOULと支倉氏に熱気を帯びる中、春くんはひろこに熱い視線を送っていた。それはさすがの秋元さんも俺の隣で感じとっていた。
「春くん、意識しないようにしているハズがめちゃくちゃラブラブ光線送ってますね」
「まずいなぁ。これ視聴者が変に思わなきゃいいけどなぁ。春くんひろこしか見てないじゃん」
スタジオでは私語もまばらにゆうきくんは紅白饅頭をひろこに渡している。
ケンくんはケンくんでひろこの隣にぴたりと付きそれを見て笑っている。
メンバーとの仲の良さは滲み出ていた。それに支倉氏がひろこに絡んでまた内輪で笑い合う。そんなグダグダなかんじでも、今をときめくアーティスト達に悲鳴まじりの歓声が飛ぶ。
生放送らしく脇が慌ただしくなりひろこがカンペを呼んだ。
「では、お歌の準備ができたようですね。SOULのみなさんで明日2曲同時発売のニューシングルです。どうぞ」
ビジュアル系らしいノリで観客を圧倒する。今年1年で怪物バンドにまで成長できたSOUL。
『そもそもひろこちゃんに会いたいがためにビックになろうと春くんは頑張って歌ってきたんですよ』
前に秋元さんが言っていた。
ひろこのために。
当の本人はそこまで分かっているのかいないのか。
「いやー年末いいね!楽しい!紅白からまさか来るとは思わなかった!」
春くんのMCに観客も悲鳴をあげる。
「えー、年明け1発目は2曲同時リリースなんですけど、俺たちらしい楽曲になったと思っています。みんながね、愛し合って幸せに、そんな歌です。聞いてください」
打って変わって親しみの感のあるPOPでもないバラードでもない独特なサウンド。
聖司くんが長年温めてきた曲だと秋元さんから聞いていた。いつものクールな眼差しとは打って変わって笑顔で楽しそうに歌う春くんを筆頭にメンバー全員もどこか1年最後の仕事という事もあるのか達成感に満ちた満足気な表情だ。
「こんないい曲書けるなんて本当聖司くんは天才だな」
俺がポツリと言うと秋元さんはまさかの目に涙を溜めていた。
「秋元さん、大丈夫ですか?」
「あ、ごめん。遊井さん。俺、今年頑張ったなって、4人の歌聞いてたらなんか泣けてきましたー」
秋元さんは見た事もない顔をして涙を手でぬぐった。
「怪物バンドですからね。SOULは」
「遊井さん、今日呑みに行きましょうよ。」
「もちろんですよ」
俺と秋元さんは袖から見る春くんの歌声に耳を傾けながら俺も今年1年を振り返ると涙が出そうになった。
「5日からの番組収録が仕事はじめだけど事務所挨拶で4日の9時に迎えに行くからな。」
俺はお節の入った重い紙袋と荷物の入った袋と3つ渡した。
重そうな顔をしてひろこは頷いた。
「ひろこ、」
「何?」
ひろこを見つめるといつものようにかわいい顔をしていた。
その顔を目にやきつけていた。
「おつかれ」
今年1年の締めなのに、湿っぽくなるのが嫌で俺は気持ちを切り替えるのに必死だった。
「遊井さん、来年もよろしくね」
「来年、忙しくなりそうだな」
少し笑ってひろこは手を振ってそのままメンバーの待つバンに向かった。
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