積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと

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8,娘の成長

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娘のエリィは天使である。もうそれは紛れもない事実だ。
ソフィアを亡くして失意の中、何とか立ち直ることができたのはエリィがいたからだ。
エリィだけでも無事に帰ってきてくれたことは奇跡だと思う。嵐の中、飛翔魔法で逃げ出すなど並大抵の子供ではできるものではないだろう。
もう二度とあんな思いはしたくない。
あの事件からエリィは少し変わったように思う。私はその変化を受け入れることしかできないが、エリィの成長は著しい。

仕事は忙しく、遠征も多い。本当に働かせすぎだと思う。
先日、漸く約3ヶ月の遠征を終えて帰路に着いた。
エリィはどうしているだろうか、寂しい思いをしていないだろうか、考えるのは愛しいエリィのことばかりだ。
早く会いたい。

屋敷へ着くと使用人達に出迎えられる。
執事のセバスが玄関を開けた瞬間、我が家の天使が

「お父様おかえりなさい!会いたかったです!」
と私の足に抱きついてきた。
本当に可愛い。私は潰れてしまわないように屈んで優しく抱き締める。暫くエリィを堪能していると、

「お父様、大好きです」
と満面の笑みで言われた。なんだこの破壊力は。

「私も愛してるよ。可愛いエリィ」
と頭を撫でるととても気持ちよさそうに、そして嬉しそうにしたエリィの姿はとても愛らしく、誰にも渡したくなくなってくる。親バカとでも何とでも言うがいい。

久しぶりにエリィとの晩餐を楽しんだ後は、疲れが溜まっていたせいかすぐに眠ってしまった。





朝、左腕が重く少し痺れた感覚があった。動かそうとしても動かない。なんだ?と思い左腕を見てみれば、エリィが私の腕にしがみついて眠っているではないか。
無防備な寝顔があまりにも可愛い。いつまででも見ていられる。本当に天使みたいだ。
エリィを守るためならば命をかけられるな、と思いながら髪を撫でていると私と同じ碧色の目が開いた。

「お父様、おはようございます」

天使の微笑みで朝の挨拶を受けた私は、エリィを抱き締めていた。エリィは私の筋肉が好きなようで、二の腕の筋肉で遊んでいる。可愛い。
暫くエリィとじゃれていたが、ノックの音に邪魔をされてしまう。

「旦那様、お食事の用意が整いました。お嬢様もアンナが待っていますので、こちらへどうぞ」

セバスがそう言うとエリィは名残惜しそうに、部屋を出て行ってしまった。


朝食の場に行くとエリィはまだ来ていないというのに、食事が運ばれてくる。

「エリィがまだ来ていない」

と言う私に、セバスが一言。
「エリナリーゼ様は朝食は召し上がりませんので」

そうだった。エリィは食が細くて朝は食べないのだ。もう少し食べてほしいのだが。
仕方ない。味気ないが一人で食べることにしよう。

朝食後、エリィは何をしているのか気になった。
セバスに聞いて見ると、午前中はシド殿に魔法を習っているとのことだった。
午前中?シド殿に依頼したのは2時間の契約だったはずだが。少し様子を見に行くことにした。

そういえば魔法の練習を見に行くのは初めてだったな、と思いながらその場所に着くと、エリィは土魔法を練習しているところだった。
エリィの適正は風魔法だったはずだから、まだ練習中らしいが他属性の魔法があれだけできれば充分ではないか。そう思いながら声を掛けた。

「エリィ、もうそんなとこもできるようになったんだね!」

声をかけると嬉しそうにエリィが私の元へ走ってくる。
「お父様!」

子犬のように懐いてくれるエリィを見て私の頬も思わず緩む。

「団長も団長ですけど、お嬢のファザコンもヤバいですね」
とシド殿が呟くのが聞こえたが無視した。

私はその時ある違和感に気が付いた。エリィの身体が冷たいのだ。日除けの結界を張っているようだが、暑いことに変わりはない。

もしかしたら冷気を纏っているのかと思い聞いてみると、本当に冷気を纏っているようだった。
つまり氷魔法が使えるのか?いやそれともシド殿にかけてもらっているのか?
氷魔法の使い手など、この国ではかなり希少ではないか。
エリィはそんな私をよそに私にも冷気を纏わせる。

「…っ!凄い!これは凄い魔法だぞ!!なんと快適な…!!」

あまりの衝撃に言葉を失っていると、シド殿は満足気に、そしてエリィは何事もなかったかのように練習を再開し始めた。


……いや、ちょっと待ってほしい。

氷魔法が使えるのに、なぜ土魔法の練習をしているのだ?そもそもエリィの適正は風魔法だったはずだ。
練習風景を見ていると、とても真剣に取り組んでいる。

もしかしたらエリィは魔術師になりたいのか?
もしもエリィが魔術師になりたいのなら、私はそのために協力を惜しむつもりはない。

私はじっと練習風景を見つめていた。
練習が終わるとシド殿を呼び少し話を聞くことにした。

「シド殿、エリィは今どのくらいの魔法が使えるのだ?」

「エリナリーゼ様は、今は土魔法を練習しておられます。既に使える魔法は風魔法、飛翔魔法、水魔法、氷魔法、無属性魔法、そして光魔法です。」

「………は?そんなに使うことが可能なのか?エリィの適正は風魔法のはずだろう?」

「エリナリーゼ様はその辺の魔術士よりも努力をしておられます。適正のある初級の風魔法でしたら既に息をするようにできますよ。その他に全属性の初級魔法を覚えたいということでしたのでお教えしています。御覧の通りとても真面目に向き合われていますので。」

窓の外を見ると、見えないはずのエリィが見える。……浮いているように見えるな。見間違いか?

「…シド殿、エリィは宙に浮いているように見えるのだが?」

「飛翔魔法で宙に浮いた状態で練習していますね」

「そんなことが可能なのか?」

「多くの魔力量と集中力、コントロールが必要になりますが可能です」

「エリィはいつもあのような練習を?」

「…これは報告するか迷ったのですが、念の為申し上げておきます。この屋敷全体に結界を張らせていただいたのはお気づきかと思います。なぜそんなことをする必要があったのか、それはエリナリーゼ様が飛翔魔法で王都の外へ出てしまわれたからです」

確かに以前に比べると結界の色が違うように思う。
それよりも聞き捨てならないことが聞こえたな?

「エリィが外へ出ただと?」

「申し訳ございません。私も最近気が付いたのです」

「いつから?そしてどこへ行っていたというのだ?」

以前の誘拐事件を思い出し、もう二度とあんな思いはしたくない。と拳を強く握りしめた。

「エリナリーゼ様が飛翔魔法を完全に習得できたのは2ヶ月程前です。気が付いたのは本当につい先日なので、1ヶ月程の期間、おそらくグリッドマウンテンへ行っていたものと思われます」

「グリッドマウンテンへ?」

「はい。グリッドマウンテンの山頂付近に咲く花が最近こちらでも育てられていますので」

「つまりそこまで飛翔魔法で行ったと?」

「王都にも結界が張ってありますので、入る時には騎士に顔を見られます。門番の騎士に話を聞いてみたところ、確かにエリナリーゼ様に似た少女が一人で門を出入りしていると。毎日同じ時刻におよそ2時間程で帰ってくるとの事でしたので、間違いないかと」

「なんということだ………」

私は驚きを隠せずにいた。魔法のことはもちろん、何でも話してくれていると思っていたが、私の知らないことばかりだ。といっても仕事で家を空けることも多かったし、今日は3か月ぶりに帰宅してきたわけだが。
それにしても私の知らない間に、そんな魔物がいる危険な場所に一人で行くなど、怪我でもしたらどうするのだ。
………よし、護衛騎士をつけよう。

シド殿が帰った後、私はエリィの様子を遠くからずっと見続けていた。魔法の練習を続けるその集中力は騎士団員にも及ぶところだ。


エリィが見えなくなったところで、溜まっている雑務をこなすとしよう。
集中力が途切れてきた頃、ピアノの音色が聞こえてきた。久しぶりにエリィのピアノを聞いたな。やはりとても上手だ。
エリィのピアノをBGMに暫く執務をしていたが、今まで聞いた事のない曲が始まった。何という曲なのだろう?

気になったので、エリィの部屋へ向かうことにした。
邪魔をしないように気配を消して部屋に入りソファーに座る。少し歌っている?聞いたことがないが、何という曲なのだろう?
その曲が終わり声をかけると、気配を消してきたことを怒られて?しまった。

何という曲だったのかを聞くと、なんとエリィが作った曲だというではないか!
もう一度ちゃんと聞いてみたい。そして歌詞があるなら歌ってみてほしい。そう言うとエリィは歌詞を書いた紙を楽譜台に置き、弾き始めた。

歌詞はとても切なく、亡きソフィアを連想させる。
おそらくエリィはソフィアのことを思ってこの曲を作ったのだと悟った。同時にグリッドマウンテンの山頂からはあの場所がよく見えることを思い出した。
そうか、エリィはあの場所を見に行っていたのか。
透き通るような歌声に心が洗われる思いだ。天使の歌声だ。

エリィは色々な事に努力しているが、これはまさに『天才』と呼ぶのに相応しい。
素人の私でもわかる。その切なげなピアノの音色は普通の子供が奏でることのできるような音色ではない。まるでソフィアの魂が乗り移ったかのように感じられて、涙が流れてきた。
その涙を見たエリィが驚いている。

「お父様、どうされたのですか?」

「…いや、とても素晴しい演奏と歌声だったよ。エリィはこの曲は本当に自分で作ったのかい?」

僅か8歳の少女が作ったとは思えない歌に私は感動をせざるを得ない。私の知らぬ間にどれだけ成長したのだ。

両手を広げてこちらに来るように言うと、エリィは何の迷いもなく嬉しそうに私の膝の上に座る。
少し驚いたが、私の胸に頭を擦り寄せて満足そうに微笑んでいる様子がとても愛らしく、暫く幸せを噛み締めていた。
近くにいる間は沢山甘えさせてあげよう。
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