真夜中の柑橘系

普通のデート

広紗 柚紀の場合。

恋人同士になったからといって、何か特別な事をする訳でもなく。
毎朝一緒に登校して、放課後は近くのお店に寄ってお喋りをする。
友達とやっている事と何も変わらない毎日だった。不満がある訳じゃない。むしろ楽しいから毎日の楽しみにもなっている。深弥がどうかは分からないけど、そう思ってくれてるなら、ボクも嬉しいかな
「なぁ柚紀。次の土曜空いてる？」
「え、何急に…空いてるけど。」
別に急では無いかもしれないけど、考え事をしている時に話しかけられると、あまりにドキッとするものだ。
「なら、ここのランチ食べに行かないか？すげぇ美味いって評判でさ」
目の前に差し出されたスマホの画面には、丁度近所に最近出来た…喫茶店？のようなお店が取材された記事が載っていた。
なんでも、ここ店長は、東京のホテルで20年間修行し、料理長にまでなった人物だという
「あ、オムライス…」
「お？やっぱり気になる？」
指摘されて我に帰った。気が付かないうちに口に出てしまっていたらしい。
小さい頃からオムライスは好物なのだ。深弥もそれを知っているから、隠す必要は無いのだけど、意識していなかった分。どうも恥ずかしい
「別に気になった訳じゃなくて！」
「分かってる分かってる、空いてるなら一緒にいこうぜ？」
「……いく。」
若干子供扱いされている気がするけど、週末に美味し物を、好きな人と楽しめるというのは、実にデートらしいではないか。
テンションが明らかに上がってるボクをみて、少し微笑む深弥の顔は、あまりにドキッとしたので、殴りたくなってしまった。

望月 深弥の場合

柚紀と付き合ってから、少なくとも数十回のデートはしてきたが、こうなんというか、特別な事は何もせずに、一緒に学校行って一緒に返って一緒にご飯食べる。それが1番楽しくて。そればっかりしてる気がする。
柚紀も楽しんでくれてると良いんだけどな
帰り道にあるいつものカフェに入って、いつもと同じカフェ・オ・レを二つ頼む
今日は柚紀がずっと何かを考えてるようだった。
やっぱこう毎日同じだと飽きてくるのかな？何かご機嫌を取れる…尚且つ特別な事があると良いんだけど。
ふと、Twitterを見ると、巷で噂のオムライスの記事を見つけた。
オムライスといえば柚紀の好物だ、そんなに評判なら、柚紀に食べさせて上げたいと思った
(少し遠出なら、デートっぽくなるかな…場所は…？)
詳細をみるために記事を開くと、なんと柚紀の家からバスを一本乗るだけで行けるでは無いか。これは行くしかないと。記事を柚紀に見せた
記事を見て目をキラキラさせる柚紀を見ると、ついおかしくて、どうもニヤけてしまう。
そんな俺の顔を見てか、はっと赤くなる柚紀は余計可愛い。
あぁやっぱり。こういうのも楽しみ。
デートは、来週の土曜になった。