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聖職者、リーシャ
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この国の国教は、一神教である。スラーナディア神のみを崇め奉る。この国の繁栄と、勝利と、豊穣をスラーナディア神に祈る。
リーシャもその祈りを捧げる信奉者の一人だ。
スラーナディア神の偶像が描かれた見事なステンドグラスから射し込む光に照らされた場所から、手を組んで祈る。
この国の安寧と、スラーナディア神の平穏を。
「リーシャ」
目を瞑り、俯いて祈りを捧げていた所を後ろから声がかかる。すっと目を開けて振り返ると、そこにいたのは司祭服を身に纏う上司の姿だった。
「レイディット様」
「相変わらず敬虔ですね。スラーナディア神もリーシャの姿には感動するでしょう」
感心するように顎に手を当てながらウンウンと首を頷かせている。レイディットはリーシャの直属の上司であり、下積み時代からずっとお世話になっている。
誰に対しても平等であるはずのレイディットですら、謙虚で敬虔な姿をみせるリーシャには目をかけてしまう。
「いえそんな」
レイディットは目を細めて眩しそうにリーシャを見つめる。幼い頃から教会にいたリーシャはレイディットにとって息子同然の気持ちである。品行方正で優秀なリーシャが可愛くないはずがなかった。
「はぁ…本当に心配です。そんなリーシャが辺境に行かなくてはならないなんて」
「レイディット様……人手が足りないというならば僕は喜んで行きます。また戻って来た時、僕のこと覚えててくださいね」
「忘れるはずありません。手紙も書きます。はぁ……いつか司祭になる為とはいえ、何も辺境でなくとも……はぁ……」
今回のリーシャの辺境行きは出向扱いである。ここ、水の王都であるルーシアから辺境、ヴァレンテインへは馬車で約一ヶ月かかる距離にある。そんな辺境に、目に入れても痛くないほど目をかけてきたリーシャを送らなくてはならないレイディットは気が気でなかった。
「レイディット様には感謝しております。僕にとってのスラーナディア神の祝福は貴方だと思っております」
「リーシャ……! あああ……本当に行かせたくない。行かせたくないです……! 今からでも大司教様に…」
レイディットは知っていた。なぜリーシャが辺境行きに選ばれてしまったのかを。こうやってレイディットがリーシャを贔屓しているつもりはなくとも、周りの目はそう映ってしまい、リーシャの位を上げにくいからだ。今のままリーシャを司祭へ繰り上げたとしても、周りは贔屓だと納得しないだろうという上層部の判断である。
つまり、レイディットのせいでもあるのだが、リーシャはあまりその辺に気づいておらず、レイディットの心の中で留めている。
「これは、思し召しでもあると僕は思っています。大丈夫です、レイディット様。僕は立派にこなしてみせます」
「何かあったら必ず連絡をするのですよ。良いですね」
「はい。ありがとうございます」
にこ、と微笑んで心配するレイディットを安心させようとしたのだが、逆効果なのかレイディットは顔を歪めてオイオイと泣き始めてしまった。
リーシャはそれを宥め、翌週には辺境へと旅立ったのだった。
リーシャもその祈りを捧げる信奉者の一人だ。
スラーナディア神の偶像が描かれた見事なステンドグラスから射し込む光に照らされた場所から、手を組んで祈る。
この国の安寧と、スラーナディア神の平穏を。
「リーシャ」
目を瞑り、俯いて祈りを捧げていた所を後ろから声がかかる。すっと目を開けて振り返ると、そこにいたのは司祭服を身に纏う上司の姿だった。
「レイディット様」
「相変わらず敬虔ですね。スラーナディア神もリーシャの姿には感動するでしょう」
感心するように顎に手を当てながらウンウンと首を頷かせている。レイディットはリーシャの直属の上司であり、下積み時代からずっとお世話になっている。
誰に対しても平等であるはずのレイディットですら、謙虚で敬虔な姿をみせるリーシャには目をかけてしまう。
「いえそんな」
レイディットは目を細めて眩しそうにリーシャを見つめる。幼い頃から教会にいたリーシャはレイディットにとって息子同然の気持ちである。品行方正で優秀なリーシャが可愛くないはずがなかった。
「はぁ…本当に心配です。そんなリーシャが辺境に行かなくてはならないなんて」
「レイディット様……人手が足りないというならば僕は喜んで行きます。また戻って来た時、僕のこと覚えててくださいね」
「忘れるはずありません。手紙も書きます。はぁ……いつか司祭になる為とはいえ、何も辺境でなくとも……はぁ……」
今回のリーシャの辺境行きは出向扱いである。ここ、水の王都であるルーシアから辺境、ヴァレンテインへは馬車で約一ヶ月かかる距離にある。そんな辺境に、目に入れても痛くないほど目をかけてきたリーシャを送らなくてはならないレイディットは気が気でなかった。
「レイディット様には感謝しております。僕にとってのスラーナディア神の祝福は貴方だと思っております」
「リーシャ……! あああ……本当に行かせたくない。行かせたくないです……! 今からでも大司教様に…」
レイディットは知っていた。なぜリーシャが辺境行きに選ばれてしまったのかを。こうやってレイディットがリーシャを贔屓しているつもりはなくとも、周りの目はそう映ってしまい、リーシャの位を上げにくいからだ。今のままリーシャを司祭へ繰り上げたとしても、周りは贔屓だと納得しないだろうという上層部の判断である。
つまり、レイディットのせいでもあるのだが、リーシャはあまりその辺に気づいておらず、レイディットの心の中で留めている。
「これは、思し召しでもあると僕は思っています。大丈夫です、レイディット様。僕は立派にこなしてみせます」
「何かあったら必ず連絡をするのですよ。良いですね」
「はい。ありがとうございます」
にこ、と微笑んで心配するレイディットを安心させようとしたのだが、逆効果なのかレイディットは顔を歪めてオイオイと泣き始めてしまった。
リーシャはそれを宥め、翌週には辺境へと旅立ったのだった。
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