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午後も滞りなく治癒をして、フィーエの仕事終わりを労った。ようやく心から分かりあった気がするが、フィーエの心情を考えると引き止めるのも忍びなく、フィーエの帰宅を見届けた。
「リーシャ」
最後の片付けをし終わった所で後ろから声がかかって振り返った。
「レオナルド様、お疲れ様です」
「帰るぞ」
「はい」
短いやり取りだがこの一年一番繰り返してきた。ボドワールに帰宅する旨を伝え、教会を出た。
二人で並んで歩く。リーシャの歩幅に合わせてくれるレオナルドは、いつもの通りだ。夕日に照らされるリーシャを庇うように左側に立つところも、いつものこと。
「……フィーエさんに、告白されたんですね」
ポツリと零す。事も無げに、ああ、とレオナルドは返事をするだけだった。
「とても可愛い子ですけど。村一番の美人です」
「へぇ、あの裏表の激しそうな女がねぇ」
「どうして断ったんですか?」
「……あ?」
レオナルドの機嫌が落ちたのを感じる。二人共、ピタリと足を止めて向かい合う。たまたま牧場の近くで牧場主も動物も居なくて、本当に二人きりだった。
向かい合うと2人の顔に夕日で影が差し込んだ。
「レオナルド様。僕に嘘をついてますか?」
レオナルドを見つめるためにリーシャは見上げる。
怒りはない。悲しくもない。リーシャはただ知りたかった。
「……気づいたか」
レオナルドはふ、と微笑む。やっと気づいたかと言わんばかりに。いつも見てきた、少し意地悪そうな笑みだ。
「レオナルド様、謝ってくれますか」
「悪かった。許して欲しい」
笑みを消してレオナルドはすぐに頭を下げた。
繰り返すがリーシャは怒っているわけでも悲しんでいる訳でもない。ただ、知りたい。この男が、どうしてリーシャにこんなことをするのか。その答えが知りたいだけだ。
「僕に言うことがありますよね」
「何を言えば許してくれる?」
答えも本当は分かってる。この男が一年もリーシャを騙し続けて、優しくし続ける理由なんて一つだ。
それでもリーシャはレオナルド自身の口から聞きたかった。この一年、名前の付けられない関係でも隣にいるだけで満足していた。もし関係が終わってしまっても、レオナルドの近くで過ごせればいいと本気で思っていた。
けれど、フィーエに言われて勇気が出た。
もっと自分を出していいのだと感じさせてくれた。私欲に満たされるのは良くないことだと思い込んでいたリーシャに天啓をもたらしてくれた。
レオナルドの傍にいたい。だから、この関係に名前が欲しい。
「僕の事を、好きだって言ってくれたら……許します」
上手く笑えているだろうか。影が差し込み、徐々に暗くなっていくレオナルドの顔が良く見えない。けど、不思議と怖くはなかった。
レオナルドを見上げていたはずのリーシャの目線が突然下に向く。レオナルドが片足を地につけたのだった。一瞬だけ驚いた。けどキラキラした瞳にリーシャが写って、嬉しくなって目を細めた。
「愛してる、リーシャ。ずっと一緒に居たい」
希うように、リーシャの手を優しく持ち上げて指先にレオナルドの唇が触れた。
「……はい、僕も……レオナルド様のことが、好きです。愛してます」
微笑むと同時に、リーシャは自分の体が突然宙に浮くのを感じた。目を見開いてレオナルドを見る。今までにないほど満開の笑顔でリーシャを抱き上げていた。
「愛してる、リーシャ」
誰もいない、夕日はとっくに落ちて星々が瞬き満ちる中、どちらともなく長い長いキスを二人は飽きることなく繰り返した。
明日も明後日も、この先が続くように、スラーナディア神に祈りながら。
「リーシャ」
最後の片付けをし終わった所で後ろから声がかかって振り返った。
「レオナルド様、お疲れ様です」
「帰るぞ」
「はい」
短いやり取りだがこの一年一番繰り返してきた。ボドワールに帰宅する旨を伝え、教会を出た。
二人で並んで歩く。リーシャの歩幅に合わせてくれるレオナルドは、いつもの通りだ。夕日に照らされるリーシャを庇うように左側に立つところも、いつものこと。
「……フィーエさんに、告白されたんですね」
ポツリと零す。事も無げに、ああ、とレオナルドは返事をするだけだった。
「とても可愛い子ですけど。村一番の美人です」
「へぇ、あの裏表の激しそうな女がねぇ」
「どうして断ったんですか?」
「……あ?」
レオナルドの機嫌が落ちたのを感じる。二人共、ピタリと足を止めて向かい合う。たまたま牧場の近くで牧場主も動物も居なくて、本当に二人きりだった。
向かい合うと2人の顔に夕日で影が差し込んだ。
「レオナルド様。僕に嘘をついてますか?」
レオナルドを見つめるためにリーシャは見上げる。
怒りはない。悲しくもない。リーシャはただ知りたかった。
「……気づいたか」
レオナルドはふ、と微笑む。やっと気づいたかと言わんばかりに。いつも見てきた、少し意地悪そうな笑みだ。
「レオナルド様、謝ってくれますか」
「悪かった。許して欲しい」
笑みを消してレオナルドはすぐに頭を下げた。
繰り返すがリーシャは怒っているわけでも悲しんでいる訳でもない。ただ、知りたい。この男が、どうしてリーシャにこんなことをするのか。その答えが知りたいだけだ。
「僕に言うことがありますよね」
「何を言えば許してくれる?」
答えも本当は分かってる。この男が一年もリーシャを騙し続けて、優しくし続ける理由なんて一つだ。
それでもリーシャはレオナルド自身の口から聞きたかった。この一年、名前の付けられない関係でも隣にいるだけで満足していた。もし関係が終わってしまっても、レオナルドの近くで過ごせればいいと本気で思っていた。
けれど、フィーエに言われて勇気が出た。
もっと自分を出していいのだと感じさせてくれた。私欲に満たされるのは良くないことだと思い込んでいたリーシャに天啓をもたらしてくれた。
レオナルドの傍にいたい。だから、この関係に名前が欲しい。
「僕の事を、好きだって言ってくれたら……許します」
上手く笑えているだろうか。影が差し込み、徐々に暗くなっていくレオナルドの顔が良く見えない。けど、不思議と怖くはなかった。
レオナルドを見上げていたはずのリーシャの目線が突然下に向く。レオナルドが片足を地につけたのだった。一瞬だけ驚いた。けどキラキラした瞳にリーシャが写って、嬉しくなって目を細めた。
「愛してる、リーシャ。ずっと一緒に居たい」
希うように、リーシャの手を優しく持ち上げて指先にレオナルドの唇が触れた。
「……はい、僕も……レオナルド様のことが、好きです。愛してます」
微笑むと同時に、リーシャは自分の体が突然宙に浮くのを感じた。目を見開いてレオナルドを見る。今までにないほど満開の笑顔でリーシャを抱き上げていた。
「愛してる、リーシャ」
誰もいない、夕日はとっくに落ちて星々が瞬き満ちる中、どちらともなく長い長いキスを二人は飽きることなく繰り返した。
明日も明後日も、この先が続くように、スラーナディア神に祈りながら。
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