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廉×碧
用法用量
しおりを挟む俺は、一ヶ月経つ頃には廉さんの隣に立つ自信がついた。
恋人のいる世界はなんたる色鮮やかなことか。彼に名前を呼ばれ、腰を寄せられ、キスをされ。それだけなのにこの世の幸せを全て感じている気分になる。
「……浮かれすぎ」
「なー!碧ー!飲みに行こうよー!」
ポヤポヤしていたらいつの間にか授業が終わり、カズにレジュメで頭をポコンと叩かれる。隣でヒロがなあなあと俺を揺さぶっていた。
「……行かない」
「えー!!」
「はいはい。ヒロ落ち着けって。ヒロも恋人が出来たらこんな感じになるんだから」
気づけば廉さんが当直の日すら遊びに行かず、直ぐに帰宅するようになっていた。会議や勉強会で遅くなっても、出来る限り早く帰ってきているのは伝わる。廉さんが急いで帰ってきてくれるのも、ただただ俺に早く会いたいという理由だ。
そんな風に思われて、ウザイとは思わなかった。むしろ俺も早く会いたくて仕方がない。
帰ると直ぐにおかえりを言い合ってひとしきり抱きしめ合い、食事をし、ソファに隣合って座ってテレビを見ながらゆっくり過ごす。時たま目が合えばその都度キスをして、廉さんの目が少しだけ鋭くなるとそのまま押し倒されて深いキスに変わる。
それだけで凄く幸せになる。
「で?どこまでやったの?」
「っぶ!!」
「は?恋人なんだろ?どこまでって、なに?」
カズの言葉に吹き出すが、いまいちヒロは分かってないようで疑問符を浮かべている。
「な……な……」
「その反応だと最後までは行ってなさそう。抜き合いくらいか?」
「は?! な!カズ!馬鹿!何の話かと思ったら下ネタかよ!!」
ようやくヒロは理解し、カズの頭を叩いた。
なぜバレたのだろうか。
そう、俺と廉さんはこの間キスをしてたら兆した俺のモノと廉さんのモノを合わせてお互いでお互いのモノを掴んで擦り合わせた。いわゆるカズの言う抜き合いだ。
「一ヶ月経つけど、やっぱ男同士って準備がいるから大変なの?」
「もうやめろばかカズ!!」
「……っ」
パクパクと口を開け閉めして言葉にならない言葉を叫ぶ。友人に指摘されるとこんなに恥ずかしいのかと顔が真っ赤になってしまうのが分かった。
「いや、結構大事な事だと思うけど。準備しないと辛いのは碧だろ」
「へ?」
「へ?って。調べてないのかよ」
言われて、確かにと思った。自分が廉さんをリードするなんて考えられない。今だって廉さんの流れるような手管に飲み込まれているだけで全部終わってるのだ。
まな板の鯉状態な俺は、恐らく廉さんを受け入れる側になることは想像出来る。
「スマホで調べてみろよ」
「う、うん……」
カズに言われてとっとっととスマホを操作して調べる。
そこには未知の世界の入口が記載されており、読むだけで脳の回路がショート寸前になっていた。
「う、うぉぉ……こ、これ、碧がやんの……?」
「まあ、恋人にされたくなければ……」
「されたくない!されたくないぃ!!」
ぶんぶんと首を振って全力拒否。男らしく優しい廉さんの手に、こんなことさせられるはずがない。
「けどゆくゆくはするんだろ?」
「す、すすすするのか碧……」
「…………う、うぅ……」
まさかこんなことになるとは。初めて腹に注射を打った時よりも緊張し、未知の恐怖が襲いかかってくる。
頭を抱え、机に突っ伏すが、カズは追撃を止めなかった。
「てか、準備でこんなんなってたらセックスはどうなるんだ?準備した所も全部見られるぞ」
つまりは己の恥部が、廉さんに丸見えになるわけで。
「~~~~っっ!! で!でも!俺も男だ!覚悟は決める!」
グッと拳を握って立ち上がり気合を入れた。
後ろの二人は、おおーと拍手していた。
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