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恋人効果 side カシミール
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カシミール=グランティーノはクラークとエメの3人でバーに来た。
本当ならイヴも一緒に、と思ったが「今日は、治癒の依頼が入っていて…すみません」と言われれば諦めるしか無かった。イヴを送り届けてからバーにつくと、2人は既に飲み始めていた。
「やぁ、ごめんね。先に始めちゃった」
「構わない。むしろ呼び出したのに遅くなってすまない」
「いやいや、大丈夫だ! それよりカシミールさん、聞いたぜ?魔法師団の方まで噂がきてるんだからな!」
エメは魔法師団の文官として事務をしている。
エメもクラークもニコニコと微笑んで嬉しそうにしていた。店員に酒を頼むと、すぐに準備をはじめてくれた。
「そこまでか?」
「カシムは自分の評価を改めた方がいいよ…女性騎士もみんな嘆いてるんだからね?」
「いや、それはクラークの方だと思うんだが」
店員から酒を受け取りながら言った。
「クラークもカシミールさんもどっちもだろ? 俺の女友達のジニーとターニャにカシミールさんを紹介してくれって言われて、じゃあ次会った時頼んでみるよ、なんて話した後で噂が流れて落ち込んでたくらいなんだからな!」
エメは鼻息荒く興奮して言う。
エメは男の友人よりは、女の友人が多いことで有名だった。
エメと仲良くなれば女子を紹介してもらえると思ってエメに近づく輩は、「お前に頼まれて紹介するんじゃなくて、女の子に頼まれて紹介するならしてやるよ!」と明るく笑顔で言われて撃沈するそうだ。
「それよりも、心変わりした理由を聞きたいんだけど。聞いても平気?」
「真剣に告白されたからだな」
「え! じゃあやっぱり付き合いたいと思って治癒してたってことかよ!」
「……いや、男と付き合ったことがないだろうから、付き合いたいとは思ってないと言われた」
「……イヴは勇気があるね」
クラークは感心しているようだった。
男と付き合ったことがないということは、嫌悪感を出される可能性があったにも関わらず、イヴは告白してきたのだ。
無謀とも言える覚悟だったと思った。
「あとはまぁ、やはりそれを知った上で献身的に治癒されれば……」
「ああー、確かに。それは好きになっちゃうね」
「うーん…、じゃあこの後が問題だろ?」
エメの言葉に、カシミールもクラークもキョトンとした。
「プラトニックラブだってあるだろうけど、カシミールさんがイヴを抱けるかだ。だって、付き合うってことはそういうことだ」
「……なるほど」
「カシムは女の子しか付き合ったことがないなら、エメが言うことは確かに問題かもね。どうなの?」
「……抱かれるのは無理だが、抱くのは出来ると思うな」
「まぁ、カシミールさんは真面目だし、イヴもそれが分かってるなら無理に事を進めようとはしないだろけどな」
確かにイヴは自分からは何もしてこない。
カシミールがやることなすことにいちいち可愛らしい反応はするものの、どこかまだ遠慮しているようなのだ。
けれど、嬉しそうに笑う姿を見るとこちらの胸も暖かくなる。
あの薄っぺらい愛想笑いは一切見なくなった。
「ただ、あまり長続きしたことがないと言っていた」
「ええ? なんか問題があんのか?」
「男でも女でも子供の問題に行き当たるそうだ。恐らく、結婚はしたいが、子供は別にと思っているのが相手に伝わって別れることになると言ってたな」
「……子供かー……それは確かに難しいな、でもカシミールさんはそれも込みで付き合ったんだろ?」
「イヴと付き合う時点で子供は考えてないな」
もちろん、自分の子供を産んでもらえれば可愛いと思うだろうが、女性であったとしても、子供を産むことを強制したいと思ったことは無かった。
「じゃあ大丈夫じゃない? 良かったよ……やっとカシムの頭痛の種が薄れてくれて」
「そうだな、頭痛はもうほとんどないんだ」
「偏頭痛持ちなんだっけ?それってイヴの治癒のおかげなのか?」
エメに言われ、俺は首を振った。
「俺は過去、女性に騙されたことがあってな。それ以来、頭痛がするようになっていた。だからまぁ、イヴの治癒と言うのは少し違う気がするんだ」
「そうなんか…てことはイヴと付き合って治ったなら、治癒ってよりは恋人効果ってことだ!」
「うんうん。イヴ様々じゃないか」
2人とも和やかな空気を作るのが上手く、会話がよく弾んだ。
楽しそうに話してくれる姿に久しぶりに酒が進んだ。それでも、酒には強いので酔うことはない。
「でも、カシム。スターム家は気をつけてね」
「何かあるのか?」
クラークの顔が真剣なものに変わる。
「スターム家は財政困難になってるってディランが言ってたんだ。ディランもどこまで掴んでいる情報かは分からないけど……もしイヴとこの先を考えているなら、スターム家とは切り離した方がいいかも知れない」
「そんなに酷いのか。 ……分かった。少し話してみよう」
ディラン=シェルヴェンの交友関係は多岐にわたる。貴族はもちろん、王族からスラムですらも友人がいると聞いたことがある。
ディランは噂で知らないことは無いと言われるほどで、噂を捻じ曲げることもしているという話もあった。
案外、ちゃらんぽらんに見せているのはフリなのではないかと思うほどの策士であるようだ。
「ま、今はお祝いだね! ごめんね、暗い話をして。飲もう!」
「そうそう! 飲もう飲もう! 次はイヴとも呑みたいもんだな!」
「イヴは残念そうにしていたから、次は予定が空いてる日を聞いておく」
帰り間際、「私も行きたかったです……」とものすごく残念そうに落ち込んでいる姿を思い出す。
元気づける為に、いつもは額にするキスを頬にすれば、いつもよりも真っ赤になって恥ずかしそうに家に帰っていってしまった。
「あ、思い出し笑いしてるな!」
「ふふ、カシムが楽しそうで、僕も嬉しいよ」
2人の明るく穏やかな雰囲気に、今度は必ずイヴも連れていこうと、心に決めた。
本当ならイヴも一緒に、と思ったが「今日は、治癒の依頼が入っていて…すみません」と言われれば諦めるしか無かった。イヴを送り届けてからバーにつくと、2人は既に飲み始めていた。
「やぁ、ごめんね。先に始めちゃった」
「構わない。むしろ呼び出したのに遅くなってすまない」
「いやいや、大丈夫だ! それよりカシミールさん、聞いたぜ?魔法師団の方まで噂がきてるんだからな!」
エメは魔法師団の文官として事務をしている。
エメもクラークもニコニコと微笑んで嬉しそうにしていた。店員に酒を頼むと、すぐに準備をはじめてくれた。
「そこまでか?」
「カシムは自分の評価を改めた方がいいよ…女性騎士もみんな嘆いてるんだからね?」
「いや、それはクラークの方だと思うんだが」
店員から酒を受け取りながら言った。
「クラークもカシミールさんもどっちもだろ? 俺の女友達のジニーとターニャにカシミールさんを紹介してくれって言われて、じゃあ次会った時頼んでみるよ、なんて話した後で噂が流れて落ち込んでたくらいなんだからな!」
エメは鼻息荒く興奮して言う。
エメは男の友人よりは、女の友人が多いことで有名だった。
エメと仲良くなれば女子を紹介してもらえると思ってエメに近づく輩は、「お前に頼まれて紹介するんじゃなくて、女の子に頼まれて紹介するならしてやるよ!」と明るく笑顔で言われて撃沈するそうだ。
「それよりも、心変わりした理由を聞きたいんだけど。聞いても平気?」
「真剣に告白されたからだな」
「え! じゃあやっぱり付き合いたいと思って治癒してたってことかよ!」
「……いや、男と付き合ったことがないだろうから、付き合いたいとは思ってないと言われた」
「……イヴは勇気があるね」
クラークは感心しているようだった。
男と付き合ったことがないということは、嫌悪感を出される可能性があったにも関わらず、イヴは告白してきたのだ。
無謀とも言える覚悟だったと思った。
「あとはまぁ、やはりそれを知った上で献身的に治癒されれば……」
「ああー、確かに。それは好きになっちゃうね」
「うーん…、じゃあこの後が問題だろ?」
エメの言葉に、カシミールもクラークもキョトンとした。
「プラトニックラブだってあるだろうけど、カシミールさんがイヴを抱けるかだ。だって、付き合うってことはそういうことだ」
「……なるほど」
「カシムは女の子しか付き合ったことがないなら、エメが言うことは確かに問題かもね。どうなの?」
「……抱かれるのは無理だが、抱くのは出来ると思うな」
「まぁ、カシミールさんは真面目だし、イヴもそれが分かってるなら無理に事を進めようとはしないだろけどな」
確かにイヴは自分からは何もしてこない。
カシミールがやることなすことにいちいち可愛らしい反応はするものの、どこかまだ遠慮しているようなのだ。
けれど、嬉しそうに笑う姿を見るとこちらの胸も暖かくなる。
あの薄っぺらい愛想笑いは一切見なくなった。
「ただ、あまり長続きしたことがないと言っていた」
「ええ? なんか問題があんのか?」
「男でも女でも子供の問題に行き当たるそうだ。恐らく、結婚はしたいが、子供は別にと思っているのが相手に伝わって別れることになると言ってたな」
「……子供かー……それは確かに難しいな、でもカシミールさんはそれも込みで付き合ったんだろ?」
「イヴと付き合う時点で子供は考えてないな」
もちろん、自分の子供を産んでもらえれば可愛いと思うだろうが、女性であったとしても、子供を産むことを強制したいと思ったことは無かった。
「じゃあ大丈夫じゃない? 良かったよ……やっとカシムの頭痛の種が薄れてくれて」
「そうだな、頭痛はもうほとんどないんだ」
「偏頭痛持ちなんだっけ?それってイヴの治癒のおかげなのか?」
エメに言われ、俺は首を振った。
「俺は過去、女性に騙されたことがあってな。それ以来、頭痛がするようになっていた。だからまぁ、イヴの治癒と言うのは少し違う気がするんだ」
「そうなんか…てことはイヴと付き合って治ったなら、治癒ってよりは恋人効果ってことだ!」
「うんうん。イヴ様々じゃないか」
2人とも和やかな空気を作るのが上手く、会話がよく弾んだ。
楽しそうに話してくれる姿に久しぶりに酒が進んだ。それでも、酒には強いので酔うことはない。
「でも、カシム。スターム家は気をつけてね」
「何かあるのか?」
クラークの顔が真剣なものに変わる。
「スターム家は財政困難になってるってディランが言ってたんだ。ディランもどこまで掴んでいる情報かは分からないけど……もしイヴとこの先を考えているなら、スターム家とは切り離した方がいいかも知れない」
「そんなに酷いのか。 ……分かった。少し話してみよう」
ディラン=シェルヴェンの交友関係は多岐にわたる。貴族はもちろん、王族からスラムですらも友人がいると聞いたことがある。
ディランは噂で知らないことは無いと言われるほどで、噂を捻じ曲げることもしているという話もあった。
案外、ちゃらんぽらんに見せているのはフリなのではないかと思うほどの策士であるようだ。
「ま、今はお祝いだね! ごめんね、暗い話をして。飲もう!」
「そうそう! 飲もう飲もう! 次はイヴとも呑みたいもんだな!」
「イヴは残念そうにしていたから、次は予定が空いてる日を聞いておく」
帰り間際、「私も行きたかったです……」とものすごく残念そうに落ち込んでいる姿を思い出す。
元気づける為に、いつもは額にするキスを頬にすれば、いつもよりも真っ赤になって恥ずかしそうに家に帰っていってしまった。
「あ、思い出し笑いしてるな!」
「ふふ、カシムが楽しそうで、僕も嬉しいよ」
2人の明るく穏やかな雰囲気に、今度は必ずイヴも連れていこうと、心に決めた。
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