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番外編
純情可憐 side エメ
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エメ=デュリュイがクラークの屋敷に着いた時、いつもの使用人と違う人に案内されてるな、とは思った。新しい人か、なんて呑気に考えていた。
しかし案内された場所が、クラークのご両親に紹介された時だけ入った応接室だった時点で変な気がした。
入った瞬間、目に入ったのはエメと同じく小柄で、そして色白で可憐な姿をした少女のような女の子がソファから立ち上がった所だった。
「お初にお目にかかります、カタリナ=ミルヴェーデンと申します。クラーク様の恋人でいらっしゃるとお伺いしておりますが?」
「……は、初めまして。エメ=デュリュイ、です?」
エメには聞き覚えも見覚えもなかった。
クラークの親戚か?なんてまだ呑気に考えていた。
ただ、戸惑いが先行して変な返事になってしまう。
「本当に平民の方ですのね…、でもそうですね。クラーク様ほどの方ならきっと良い方をお選びになったのですね」
「は、はぁ……」
立ち居振る舞いと上手い返しでないこと、何より格好で平民と分かられたようだった。
少女は可憐な姿をしながらも、凛とした表情でエメと向かい合った。
「エメ様。 お願いがあります。私と、正々堂々勝負してください」
彼女の瞳は、ストロベリークォーツのような美しい中にも可愛らしく、光が差せば濃淡様々なピンクに輝きが見える瞳だった。
そんな瞳で真っ直ぐエメを捉えて言われれば、流石のエメも何も言えなかった。
エメにはもうなんの事かすぐに理解した。
だってこの瞳は、既視感があった。
過去、既婚男と付き合っていた時に対峙した嫁の瞳と同じ、決意の瞳だった。
「エメ! どうしてここに!」
は、とトリップした思考がクラークの声で戻された。エメが振り返ってクラークの顔を見ると、明らかに失敗した、という表情をしていた。
エメはここでも理解する。
きっとクラークの事だ。エメにこの少女のような女の子と会わせないようにしようと思っていたに違いない。
「クラーク、大丈夫だから」
気を遣った訳でもなければ、何かを勘違いした訳でもない。
本当に大丈夫だと思って、そう返事をした。クラークが不誠実な事をするはずがない。
「エメ、ちゃんと後で説明するから」
「いえ。クラーク様、きちんとここで説明します。私の口から説明致します」
「カタリナ、止めてくれ。僕はほんの少しでもエメに誤解されたくない」
「分かっております。ですがなんの誤解もないことを私の口からきちんと説明致します。私は、正々堂々エメ様と勝負したいのです」
ポカン、とエメは2人の様子を見守っていたが首をプルプル振って、正気に無理やり戻す。
「クラーク、いいよ。俺はここで聞くよ」
「エ、エメ……!」
「ありがとうございます。では皆様腰を落ち着けて話を致しましょう」
エメはもう一度クラークに「大丈夫だから」と、そう言って応接室にあるテーブルを挟んでカタリナと座る。エメの隣にはクラークが座った。
「先程も言いました通り、私、カタリナ=ミルヴェーデンと申します。子爵家の生まれで三人兄妹の末の妹です。そちらのクラーク様の元婚約者です」
クラークに婚約者がいたことは何ら驚くべきことではない。貴族の生まれであるし、親が決めた婚約者がいた事に不自然なことはない。
「クラーク様とは、幼少期から18歳頃まで婚約者でありました。クラーク様からその頃好きな人が出来たから婚約を解消して欲しいと頼まれました。その時の好きな人というのはエメ様ではないようでした」
サシャ=ジルヴァールのことだ。時期的に間違いない。
クラークは何となくだが焦っているようだった。彼は本当にエメに誤解をされたくないのだろう、カタリナの一言一言聞き逃さないように真剣に聞いている。
「私、その方を調査致しました」
「カタリナ?! 僕は何も聞いてないけど?!」
「ええ、お伝えしておりません。ですが、私はあの時納得しきれませんでしたから」
「そんな。分かったと言ったじゃないか」
「……そして、そのサシャという方のお姿を拝見致しました。変なメガネをかけてらっしゃいましたが、とても美人な方でした。……私は、勝負すらさせて貰えない敗北感に打ちのめされました」
そして、クラークは立ち上がった。
カタリナの言い方が、あからさまだったからだ。
「カタリナ、その言い方はエメに謝ってくれ」
「……謝りません」
「カタリナ!」
「サシャ=ジルヴァールでは勝てないと思った私が、エメ様には勝てると遠回しに言ったことを仰っていらっしゃるならば、絶対に訂正致しません」
カタリナは可憐なストロベリークォーツの輝きに力を込めて言う。
「クラーク様。一体私の何が劣っていたのでしょうか。 クラーク様がサシャ=ジルヴァールの件で傷ついていたことも最近知りました。知るのが遅すぎたと言うならばこれからやり直したいのです。私は、まだ貴方を」
「カタリナ、本当に止めてくれ」
クラークは悲痛な表情でカタリナに訴えかける。しかしそれでもカタリナの瞳の力は失われない。
「クラーク、待てよ。ちゃんと聞かないと多分カタリナさんは納得しないだろ? 俺の事なら本当に大丈夫だから、ちゃんと聞こう」
「エメ…」
「伝え聞いた通りのお方ですのね、エメ様は」
「誰から聞いたのか知らねーけど、裏表ないのが俺の自慢だからな」
カタリナは満足そうに微笑んだ。
「それだけじゃないと伺っております。惚れっぽいのに一途で、恋人を1番に考える健気な方だと知っております」
「怖いな。過去の恋愛遍歴も調べられてそうだ」
「勿論です。敵を知り己を知れば百戦危うからずと申しましょう」
「俺はカタリナさんのこと何も知らないけどな?」
そう言うと、カタリナはまた満足そうに微笑んだ。
クラークはハラハラしているのを隠しもできていなくて何だか可愛らしかった。
「クラーク様のお心がエメ様に傾いている時点で既にハンデはおありかと」
純情可憐な姿からはとても考えられない強気な発言だった。
この少女はきっと手強い。
だってこんなにも、エメにそっくりなのだから。
しかし案内された場所が、クラークのご両親に紹介された時だけ入った応接室だった時点で変な気がした。
入った瞬間、目に入ったのはエメと同じく小柄で、そして色白で可憐な姿をした少女のような女の子がソファから立ち上がった所だった。
「お初にお目にかかります、カタリナ=ミルヴェーデンと申します。クラーク様の恋人でいらっしゃるとお伺いしておりますが?」
「……は、初めまして。エメ=デュリュイ、です?」
エメには聞き覚えも見覚えもなかった。
クラークの親戚か?なんてまだ呑気に考えていた。
ただ、戸惑いが先行して変な返事になってしまう。
「本当に平民の方ですのね…、でもそうですね。クラーク様ほどの方ならきっと良い方をお選びになったのですね」
「は、はぁ……」
立ち居振る舞いと上手い返しでないこと、何より格好で平民と分かられたようだった。
少女は可憐な姿をしながらも、凛とした表情でエメと向かい合った。
「エメ様。 お願いがあります。私と、正々堂々勝負してください」
彼女の瞳は、ストロベリークォーツのような美しい中にも可愛らしく、光が差せば濃淡様々なピンクに輝きが見える瞳だった。
そんな瞳で真っ直ぐエメを捉えて言われれば、流石のエメも何も言えなかった。
エメにはもうなんの事かすぐに理解した。
だってこの瞳は、既視感があった。
過去、既婚男と付き合っていた時に対峙した嫁の瞳と同じ、決意の瞳だった。
「エメ! どうしてここに!」
は、とトリップした思考がクラークの声で戻された。エメが振り返ってクラークの顔を見ると、明らかに失敗した、という表情をしていた。
エメはここでも理解する。
きっとクラークの事だ。エメにこの少女のような女の子と会わせないようにしようと思っていたに違いない。
「クラーク、大丈夫だから」
気を遣った訳でもなければ、何かを勘違いした訳でもない。
本当に大丈夫だと思って、そう返事をした。クラークが不誠実な事をするはずがない。
「エメ、ちゃんと後で説明するから」
「いえ。クラーク様、きちんとここで説明します。私の口から説明致します」
「カタリナ、止めてくれ。僕はほんの少しでもエメに誤解されたくない」
「分かっております。ですがなんの誤解もないことを私の口からきちんと説明致します。私は、正々堂々エメ様と勝負したいのです」
ポカン、とエメは2人の様子を見守っていたが首をプルプル振って、正気に無理やり戻す。
「クラーク、いいよ。俺はここで聞くよ」
「エ、エメ……!」
「ありがとうございます。では皆様腰を落ち着けて話を致しましょう」
エメはもう一度クラークに「大丈夫だから」と、そう言って応接室にあるテーブルを挟んでカタリナと座る。エメの隣にはクラークが座った。
「先程も言いました通り、私、カタリナ=ミルヴェーデンと申します。子爵家の生まれで三人兄妹の末の妹です。そちらのクラーク様の元婚約者です」
クラークに婚約者がいたことは何ら驚くべきことではない。貴族の生まれであるし、親が決めた婚約者がいた事に不自然なことはない。
「クラーク様とは、幼少期から18歳頃まで婚約者でありました。クラーク様からその頃好きな人が出来たから婚約を解消して欲しいと頼まれました。その時の好きな人というのはエメ様ではないようでした」
サシャ=ジルヴァールのことだ。時期的に間違いない。
クラークは何となくだが焦っているようだった。彼は本当にエメに誤解をされたくないのだろう、カタリナの一言一言聞き逃さないように真剣に聞いている。
「私、その方を調査致しました」
「カタリナ?! 僕は何も聞いてないけど?!」
「ええ、お伝えしておりません。ですが、私はあの時納得しきれませんでしたから」
「そんな。分かったと言ったじゃないか」
「……そして、そのサシャという方のお姿を拝見致しました。変なメガネをかけてらっしゃいましたが、とても美人な方でした。……私は、勝負すらさせて貰えない敗北感に打ちのめされました」
そして、クラークは立ち上がった。
カタリナの言い方が、あからさまだったからだ。
「カタリナ、その言い方はエメに謝ってくれ」
「……謝りません」
「カタリナ!」
「サシャ=ジルヴァールでは勝てないと思った私が、エメ様には勝てると遠回しに言ったことを仰っていらっしゃるならば、絶対に訂正致しません」
カタリナは可憐なストロベリークォーツの輝きに力を込めて言う。
「クラーク様。一体私の何が劣っていたのでしょうか。 クラーク様がサシャ=ジルヴァールの件で傷ついていたことも最近知りました。知るのが遅すぎたと言うならばこれからやり直したいのです。私は、まだ貴方を」
「カタリナ、本当に止めてくれ」
クラークは悲痛な表情でカタリナに訴えかける。しかしそれでもカタリナの瞳の力は失われない。
「クラーク、待てよ。ちゃんと聞かないと多分カタリナさんは納得しないだろ? 俺の事なら本当に大丈夫だから、ちゃんと聞こう」
「エメ…」
「伝え聞いた通りのお方ですのね、エメ様は」
「誰から聞いたのか知らねーけど、裏表ないのが俺の自慢だからな」
カタリナは満足そうに微笑んだ。
「それだけじゃないと伺っております。惚れっぽいのに一途で、恋人を1番に考える健気な方だと知っております」
「怖いな。過去の恋愛遍歴も調べられてそうだ」
「勿論です。敵を知り己を知れば百戦危うからずと申しましょう」
「俺はカタリナさんのこと何も知らないけどな?」
そう言うと、カタリナはまた満足そうに微笑んだ。
クラークはハラハラしているのを隠しもできていなくて何だか可愛らしかった。
「クラーク様のお心がエメ様に傾いている時点で既にハンデはおありかと」
純情可憐な姿からはとても考えられない強気な発言だった。
この少女はきっと手強い。
だってこんなにも、エメにそっくりなのだから。
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