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しおりを挟むドキドキして眠れないかな、なんて思ったけど僕の心臓には毛でも生えているのか。綾人さんとお喋りをしていたらぐっすりと寝てしまった。
お酒の量もそんなに多くなかったのか、むしろよく寝られて頭はスッキリとしていた。
起きたら国宝が目の前でキラキラしててビックリはしたけれど。
起きて泊まらせてもらった礼を言い、すぐ帰ろうとしたけれど、綾人さんに「朝ごはん作るから食べてって、ね?お願い」と懇願された。
これ以上迷惑をかけたくない気持ちと綾人さんの作った朝ごはんが食べたい気持ちがせめぎ合い、結局僕は綾人さんのご飯に釣られてしまった。
綾人さんの作った朝ごはんは和食で、焼き魚にお味噌汁、ご飯と王道で心まで温まるような食事だった。朝から豪華だ。僕なんかパン一枚で終わらせてしまうのに。
イケメンは何でも出来るんだなぁと感心しながら有難く、いただきます、と手を合わせて箸を手に取った。
「え? 綾人さん、海外に行っちゃうんですか?」
そして僕は焼き魚を解しながら綾人さんの国外へ行ってしまうという言葉に驚いた。
「うん。ハリウッドのお仕事をね、もらったんだ」
ぽかん、と口を開けて見てしまった。
次元が違う。まだまだ底辺に居る僕とは立っている舞台が違いすぎて改めてこの人が僕を推し……?と不思議に思ってしまった。
綾人さんはさっきまでの微笑みから一転、悲しそうに微笑んだ。
「本当は断ろうと思ってたんだ」
「えっ!?な、なんでですか?!世界に綾人さんを知ってもらうチャンスなのに!」
「うん、まぁ。それはそうなんだけどね。俺としてはそこが大切って訳でもないから」
人それぞれ目標や夢はある。綾人さんにとって海外進出はそうではなかったらしい。
僕ならきっと喜んで食いついちゃうだろうな…、アイドルとしては全然成功出来なかった分、感動して二つ返事で行ってしまいそう。
「そもそも、芸能界に入ったのも家族に勧められて入っただけだし。そんなに色々仕事を増やすのも好きじゃないっていうか」
「そう、なんですか…」
「……ガッカリした?」
「ガッカリ?」
綾人さんは困ったように微笑んでいる。
「なんかこう…カッコよくないから」
「綾人さんはカッコいいですよ」
「うぐ。そ、それはまぁ、顔って話でしょ?じゃなくて心意気がないって言うか、夢がないって言うか」
その言葉に僕はちょっとムッとした。
確かに綾人さんの顔は国宝級だけど、一年以上一緒に居て顔だけで売れてきた人じゃないって言うのは分かってる。人当たりも良くて、スタッフにも優しくて、演技も上手くて、スタイルもいい。こんな完璧な人がちょっと弱音を吐いたくらいで、ハリウッドを蹴ろうとしたくらいでカッコよくないなんて言わない。
いやむしろ、ハリウッドにすら簡単に靡かないかっこよさがあるじゃないか。
僕は綾人さんが好きだ。本人に言う気は全くもってないけど、それでも伝えられる事があると思ってる。
「綾人さんが何をしようとしても、僕は応援してます」
「……今、目の前で直視出来ないほど微笑んでるのが僕の推しです……」
「もう!ちゃんと聞いてくださいよ!」
「ありがとうございます……ありがとうございます…」
綾人さんは拝み始めてしまった。
「でもなんで引き受けることにしたんですか?」
「……」
「……綾人さん?」
僕から目線を外してしまう。何か誤魔化そうと色んな所を見ているけど、僕とは目が合わない。
もう一度聞き返すと、綾人さんはボソボソと話し始めた。
「……この間の、ラジオで……ハリウッドスターのリアムがカッコイイって、褒めてたから……」
すっごいボソボソしてる。めちゃめちゃ小さい声で恥ずかしそうにしている。
顔を赤らめている姿はちょっと艶かしいくらいで、一瞬見蕩れてしまいそうになる。
って違う。リアム?リアムって、僕がカッコイイって言った俳優のリアムだ。綾人さんと僕のラジオのコーナーで、憧れている人は誰って話で綾人さんと答えるのを封じられて答えた。
「……確かに、言いました、けど……え?!まさかその言葉で仕事決めたんですか?!」
「だって……」
あんぐりと口を開けて驚いてしまった。
やってる事、過激ファン過ぎる。たまに聞く、推しがこれこれこういうのが好きだから私も好きになりました!とか推しの行きつけは私も行きつけになります!ってやつだ…
それをまさか国宝級イケメン俳優にやられるとは。
そしてやることが普通のファンとは違う。一緒に好きになるのではない。僕に好きになってほしいという行動心理から自分がハリウッドスターになろうとしてるのだ。権力と行動力のあるオタクって凄い。
「……僕、綾人さんの前では発言に責任を持つようにします……」
「ええ!? 希望を言ってよ!何でもするよ!家建てる?飛行機いる?!」
「建てません!いりません!!!」
この人の前には油断も隙もあったものではない。
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