灰は何色に変わるか

ライ

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その者の素顔

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末王子の暗殺の依頼を受けたキリル。
しかし、彼は知らなかった。
末の王子である、アシュタール・ディル・カーシェーンは、ちゃらんぽらんでいい加減な放蕩王子を演じているがその実、天才といわれる類いの人物である。
そして、極々一部のものは彼の優秀さを称賛し、次代の王にと望むものもいる。
その筆頭が、現宰相(政の最高責任者)と現軍部元帥(軍の相談役)であった。
しかし、当の本人は優秀過ぎるが故なのか、王位に全く興味がない状態である。
その状態だから、アシュタールを次代の王にと望みながらも、今のところ強行策に出てはいない。
そんな優秀な天才を暗殺するなら、それ相応の準備が必要になるが、アシュタール王子が天才であることを知っているのは、本当に極々一部で、キリルに依頼をした王族に連なる者はそのことを知らなかった。
だからこそ、キリル一人で事足りると考え、依頼をした。
キリルの不幸はここにあった。
しかしここで、キリルの人生は変わることになった。
諦めながらの暗殺は案の定失敗した。
だが、今回は偶然による失敗でなく、俺は何か軽いものに身体を抑えつけられていた。
軽くとも、全く身動きができなかった。
「お前、暗殺者か」
上から声が降ってくる。
その声は、高く愛らしい少女の声だった。
「おいおいルカ、口まで抑えつけたらしゃべれないぞー」
「あ」
アシュタールの言葉で、声の主は俺が喋ることができる程度に身体をどかし、再度問う。
「お前は暗殺者か?」
ここまできてしまっては、もうごまかせる余地はないか。
俺の人生、ここで終わりか。まあ別に楽しいことなどなかったし、潮時か。
「ああ、そうだよ。そこの王子様を殺すように依頼された。だが依頼主の情報は漏らせない。殺すなら殺してくれてかまわない」
キリルは、かなり投げやりな口調でそう答え、目を閉じて死を待つ。
「へぇ?その様子じゃあ依頼主に義理立てするようには見えねぇけど?」
アシュタールは値踏みするような視線をキリルに浴びせながらそう問う。
「まあ、義理立てなんかするがらじゃないが、喋れないのさ」
アシュタールの視線を浴びながら、もうどうにでもなれという、口調で返す。
「ほう?それは封でもされているのか?」
「そうだよ。もう面倒だからやれよ」
食い下がってくるアシュタールに嫌気がさし、キリルはもう言葉を発する気がないと、目を閉じて終わりのときを待っている。
「ルカ」
アシュタールはキリルを押さえつけているルカを短く呼ぶ。
ルカはアシュタールの、無言で伝えてくる指示を正確に読み取り、実行に移す。
「封を破るから口閉じてて」
キリルはもうすでに口を開く気なさそうだが、ルカは一応そう言うのだった。
押さえつけている片方の手を退け、ルカはキリルの口に指を突っ込むような勢いで口の前に運ぶ。
「解」
ルカはただそれだけの言葉を吐く。
すると、キリルに変化が現れた。
ぽわっと身体が光り、口のまわりから黒い呪詛が離れた。
「なっ」
その出来事にキリルは驚く。
「さあ、これで話せるだろ?」
したり顔のアシュタールがキリルに問うた。
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