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学園編
61話
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フェニクス襲撃により、グレーティエの転入一日目は散々な事になった。
しかし、悪いことばかりでもなかったようで、彼女はクラスメイトたちにヒーローのような扱いを受けることによって、順調といって良い学園生活のスタートをした。
「ねえ、ファルストークさんはなんでそんなに魔法ができるの?」
フェニクスと契約したことは学園では伏せることになっている。
フェニクスこと朱鸞が派手に壊した教室はまだ修繕されていないが、子供たちは他の教室で授業などを行っている。
そして、グレーティエが転入して三日目の今は魔力を練って、魔法としての形を持たせる自習となっている。
グレーティエは早々に、風の刃を魔力で作り課題を終わらせ、他の生徒たちと談笑したり、指導のようなことをしていた。
そして、先ほどの言葉はなかなかうまく魔力に形を与えられない女生徒が放ったものである。
「多分、教師が基礎飛ばして魔法の実技を教えたからだと思う」
グレーティエはその言葉に、真剣に考えてそう答える。
彼女の考えは半分正解と言ったところである。
グレーティエにとっての魔法の教師とはコクラン、つまりはこの国の現魔術師長である。
コクランはグレーティエの前ではかなり饒舌になり、魔法授業の時にグレーティエの年齢では考えられないほどの量の魔法の知識を教えていた。
コクランはあまり人と関わらない類の天才だ。
魔法に関してだけは、彼はこの国で一番の技能と知識を有している。
しかし、人と関わることがないからか、彼にとっては基礎だと思うような知識や技も、実を言うと高度な知識であり技である。
グレーティエはなんの疑問もなく彼の授業についていったが、それ事態が、魔術師としての一種の修行のようなものと言っていい。
そして、重要なことだが、コクランは魔法の基礎というものをほんの少ししかグレーティエに教えていなかった。
グレーティエ自身は、頭の出来が前世のままなだけあり、理解力もあり、応用もきく。
彼女もまごうことなき天才である。そして彼女の場合は前世の影響が多く出ていることも大いに関係している。
彼女の前世の世界は娯楽に溢れ、イメージする力が自然に身に付く。
そして、イメージ力は魔法を行使するのにとても重要になる能力である。
実際、グレーティエは魔法の基礎を聞いた後すぐに魔法を試して成功させている。
これには前世の記憶もかなり活躍していることが見てとれる。
と言っても、前世の記憶があるからこそ出来ると言うわけでもないだろうが、彼女の一助となっていることは確かだろう。
この学園の第一学年は、基本を学ぶ学年だ。
魔法も幻獣学も基礎を均等に学ぶところなので、グレーティエが知らないであろう基礎を学ぶ段階と言ってもいい。
伯爵家以上の身分の子供たちは、だいたいみな学園に通う前に家庭教師に基礎から学ぶのが通例だ。
グレーティエは例外と言ってもいい、まあ、彼女の教師たるコクランが例外と言ったほうが正しいかもしれないが。
「すげー、ファルストークさんの先生って誰だったの?」
昔(といっても一年も経ってないが)のことを思いだしていたグレーティエに、女生徒の質問の答えにかぶせるように、横から男子生徒が質問を追加する。
「コクラン先生だよ、現魔術師長の」
丁度コクランとの授業とも言えないような授業風景を思い出していたグレーティエは、自然にそう答えていた。
グレーティエが基礎魔法の自習をしているころ。
アルシェイドは王宮、王の謁見室にいた。
「陛下、お目通りいただきありがとうございます」
「うむ。そこのソファにかけるといい」
「はい、失礼します」
王に対する臣下の礼をとり、室内に入室したアルシェイドは王の許しにより、王の前にあるソファに腰かけた。
「アルシェイドよ、今日は学園を休んでまでこの私に何を言いにきたのだ?」
アルシェイドが自分に謁見を申し出ることが初めてである。
興味をひかれた王は単刀直入に問うた。
アルシェイドは、王のその言葉にまるで王を睨むような視線を向け
「陛下にお願いがあります」
「ほう?お前が私にか?」
いつも自分の欲を晒すことのない、アルシェイドからの願いに驚きを露にした王は、大袈裟な反応を返して問い返す。
その反応を無視し、アルシェイドは単刀直入にこう言う。
「はい、グレーティには監視役がつくんですよね。その監視役を僕にやらせてください」
「グレーティエ嬢の監視役をお前がやると?」
「はい、そうお願いしています」
王は面白いと感じた。
王の甥であるアルシェイドは何事にも興味を示さなかった、子供としてはおとなし過ぎる子供であった。
この子が、異常なほど聡く、頭がいいことは王も理解していた。
その異常性は、時に危険であるとも。
当たり障りのない関係を今までは築いてきたこの子が、お願いなどと言って頼みこんでくるとは、直前まで思っていなかったほど、王はその行動に驚いていた。
自分に謁見を求めたことにも大いに驚かされたが、その理由が頼み事ということに二重三重で驚き、その頼み事がグレーティエ嬢の監視役を自分にしてほしいという内容で、何事にも興味を示さなかったはずの者が、一個人に興味を示したことに、驚きながらも家族として、少しの安堵もしていた。
王の、叔父心というのだろうか、そのような感情に気付くこともなく(当たり前だ)、アルシェイドは黙っている事に業を煮やしたかのように、もう一度問う。
「陛下、僕のお願い、聞いてましたよね?早くお返事をいただけませんか?」
いつもの彼であれば、ありえない(王に詰め寄るなど、不敬罪が怖くて普通誰もしない)行動に内心子供らしいと思えた王はほほえましい気持ちになり、許可を出した。
「ああ、すまない、お前のその行動に驚いてね。甥っ子からの初めてのおねだりだ、叶えよう。グレーティエ嬢の監視役の件はお前にすることにしよう。お前なら、グレーティエ嬢も安心だろう」
その答えを聞いたアルシェイドは、内心は嬉しいだろうに(あくまで王の考えである)、表情を変えず「ありがとうございます。陛下の温情に感謝し、大事なご公務のお時間を削ってしまい、申し訳ありません」と事務的な口調で謝辞を述べ、早々に謁見室から退席していった。
しかし、悪いことばかりでもなかったようで、彼女はクラスメイトたちにヒーローのような扱いを受けることによって、順調といって良い学園生活のスタートをした。
「ねえ、ファルストークさんはなんでそんなに魔法ができるの?」
フェニクスと契約したことは学園では伏せることになっている。
フェニクスこと朱鸞が派手に壊した教室はまだ修繕されていないが、子供たちは他の教室で授業などを行っている。
そして、グレーティエが転入して三日目の今は魔力を練って、魔法としての形を持たせる自習となっている。
グレーティエは早々に、風の刃を魔力で作り課題を終わらせ、他の生徒たちと談笑したり、指導のようなことをしていた。
そして、先ほどの言葉はなかなかうまく魔力に形を与えられない女生徒が放ったものである。
「多分、教師が基礎飛ばして魔法の実技を教えたからだと思う」
グレーティエはその言葉に、真剣に考えてそう答える。
彼女の考えは半分正解と言ったところである。
グレーティエにとっての魔法の教師とはコクラン、つまりはこの国の現魔術師長である。
コクランはグレーティエの前ではかなり饒舌になり、魔法授業の時にグレーティエの年齢では考えられないほどの量の魔法の知識を教えていた。
コクランはあまり人と関わらない類の天才だ。
魔法に関してだけは、彼はこの国で一番の技能と知識を有している。
しかし、人と関わることがないからか、彼にとっては基礎だと思うような知識や技も、実を言うと高度な知識であり技である。
グレーティエはなんの疑問もなく彼の授業についていったが、それ事態が、魔術師としての一種の修行のようなものと言っていい。
そして、重要なことだが、コクランは魔法の基礎というものをほんの少ししかグレーティエに教えていなかった。
グレーティエ自身は、頭の出来が前世のままなだけあり、理解力もあり、応用もきく。
彼女もまごうことなき天才である。そして彼女の場合は前世の影響が多く出ていることも大いに関係している。
彼女の前世の世界は娯楽に溢れ、イメージする力が自然に身に付く。
そして、イメージ力は魔法を行使するのにとても重要になる能力である。
実際、グレーティエは魔法の基礎を聞いた後すぐに魔法を試して成功させている。
これには前世の記憶もかなり活躍していることが見てとれる。
と言っても、前世の記憶があるからこそ出来ると言うわけでもないだろうが、彼女の一助となっていることは確かだろう。
この学園の第一学年は、基本を学ぶ学年だ。
魔法も幻獣学も基礎を均等に学ぶところなので、グレーティエが知らないであろう基礎を学ぶ段階と言ってもいい。
伯爵家以上の身分の子供たちは、だいたいみな学園に通う前に家庭教師に基礎から学ぶのが通例だ。
グレーティエは例外と言ってもいい、まあ、彼女の教師たるコクランが例外と言ったほうが正しいかもしれないが。
「すげー、ファルストークさんの先生って誰だったの?」
昔(といっても一年も経ってないが)のことを思いだしていたグレーティエに、女生徒の質問の答えにかぶせるように、横から男子生徒が質問を追加する。
「コクラン先生だよ、現魔術師長の」
丁度コクランとの授業とも言えないような授業風景を思い出していたグレーティエは、自然にそう答えていた。
グレーティエが基礎魔法の自習をしているころ。
アルシェイドは王宮、王の謁見室にいた。
「陛下、お目通りいただきありがとうございます」
「うむ。そこのソファにかけるといい」
「はい、失礼します」
王に対する臣下の礼をとり、室内に入室したアルシェイドは王の許しにより、王の前にあるソファに腰かけた。
「アルシェイドよ、今日は学園を休んでまでこの私に何を言いにきたのだ?」
アルシェイドが自分に謁見を申し出ることが初めてである。
興味をひかれた王は単刀直入に問うた。
アルシェイドは、王のその言葉にまるで王を睨むような視線を向け
「陛下にお願いがあります」
「ほう?お前が私にか?」
いつも自分の欲を晒すことのない、アルシェイドからの願いに驚きを露にした王は、大袈裟な反応を返して問い返す。
その反応を無視し、アルシェイドは単刀直入にこう言う。
「はい、グレーティには監視役がつくんですよね。その監視役を僕にやらせてください」
「グレーティエ嬢の監視役をお前がやると?」
「はい、そうお願いしています」
王は面白いと感じた。
王の甥であるアルシェイドは何事にも興味を示さなかった、子供としてはおとなし過ぎる子供であった。
この子が、異常なほど聡く、頭がいいことは王も理解していた。
その異常性は、時に危険であるとも。
当たり障りのない関係を今までは築いてきたこの子が、お願いなどと言って頼みこんでくるとは、直前まで思っていなかったほど、王はその行動に驚いていた。
自分に謁見を求めたことにも大いに驚かされたが、その理由が頼み事ということに二重三重で驚き、その頼み事がグレーティエ嬢の監視役を自分にしてほしいという内容で、何事にも興味を示さなかったはずの者が、一個人に興味を示したことに、驚きながらも家族として、少しの安堵もしていた。
王の、叔父心というのだろうか、そのような感情に気付くこともなく(当たり前だ)、アルシェイドは黙っている事に業を煮やしたかのように、もう一度問う。
「陛下、僕のお願い、聞いてましたよね?早くお返事をいただけませんか?」
いつもの彼であれば、ありえない(王に詰め寄るなど、不敬罪が怖くて普通誰もしない)行動に内心子供らしいと思えた王はほほえましい気持ちになり、許可を出した。
「ああ、すまない、お前のその行動に驚いてね。甥っ子からの初めてのおねだりだ、叶えよう。グレーティエ嬢の監視役の件はお前にすることにしよう。お前なら、グレーティエ嬢も安心だろう」
その答えを聞いたアルシェイドは、内心は嬉しいだろうに(あくまで王の考えである)、表情を変えず「ありがとうございます。陛下の温情に感謝し、大事なご公務のお時間を削ってしまい、申し訳ありません」と事務的な口調で謝辞を述べ、早々に謁見室から退席していった。
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