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学園編
62話
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こうして、グレーティエ本人の居ぬ間に、監視役の件は決まったのだった。
その当の本人たるグレーティエはというと。
「ファルストークさんはきっとずるをしているのよ、そうじゃなきゃおかしいわ、あんなに速くできるなんて、わたくしはこんなに頑張ってもできないのに!」
授業中であった。
そして、授業が開始してから、30分ほどが経ったころに、授業課題である、魔力に形を持たせるということができない女生徒がヒステリックに叫ぶ。
女生徒はグレーティエに嫉妬しているのだ。
しかし、嫉妬するなとは言わないが、その感情をずるをした、などの理由で発散させるのはいかがなものかと。
「レイフォスさん、ファルストークさんがずるをしたなんて、誰も思えないよ、それにもししたとして、どうやってずるをしたのか、僕らにはわからないんだけど?でもしたと断言するくらいなんだから、君はわかるはずだよね?」
グレーティエが言葉を発する前に、女生徒をたしなめる言葉が発せられた。
発生元は、グレーティエの次に課題を終わらせていた、ハイルである。
ハイルは貴族ではない。
王都から遠く離れた辺境の村出身の、平民である。
彼は、落ち着いた口調でレイフォスと呼ばれた女生徒にズルをしたならその証拠もわかるはずだと諭す。
ハイルの言葉に何も言えないレイフォスは、八つ当たりのようにハイルに噛みつく。
「う、うるさいわよ!あなたなんかに指図される謂れはないわよ!」
「いやいや、指図される謂れはないって言うけど、ファルストークさんがずるをした証拠があるかないかを僕は聞いてるんだよ?それは指図じゃないでしょ。それに学園の外でならそれは通用するけど、今は学園の中だよ。学園の中では一切の身分差は無いはずだけど?」
ハイルの言うとおり、学園では身分を振りかざすことは禁止され、学園で起きたことを外部で引きずることは、貴族として恥とされている。
実際にはそれを守る貴族はとても少ないが、流石に授業中にするものはいない。
「うるさい!うるさい!うるさい!あなたに何がわかると言うの!?平民のくせに私たちと同じ場所の空気を吸って、いい気になるのもそれくひっ」
レイフォスの言葉が言い終わる前に、それまでずっと黙っていたグレーティエが、彼女の口のまわりを囲むように、氷でできた小型の杭のようなものを出現させた。
「レイフォスさん、私のことをどうこう言おうが気にしないけど、ここで、この学園の中で貴族としてその発言は言ってはいけないことだ」
グレーティエの言うことも最もであった。
彼女の言ったことは、この学園に存在する貴族生徒が決して言ってはならない言葉だ。
そして、それを言ってしまえば、この学園にいる平民生徒からどういう目で見られるか、彼女は理解していない。
まだ無知である子供、されど貴族であることに変わりなく、放ってしまった言葉は取り消せない。
しかし、だからこそグレーティエは言い終わる前に彼女、レイフォスを止めた。
言い終わる前であれば、まだ言い訳が通る。
その心遣いに気づいたのは、ハイルのみであった。
ハイルは、レイフォスに侮蔑の言葉をかけられたというのに、全く気にしておらず、むしろ面白がるような視線をグレーティエに向けていた。
それはまさに、おもちゃを選ぶ子供のようであり、獲物を見つけた猛獣の様でもあった。
ハイルの眼差しに気づくことなく、グレーティエはレイフォスに近寄る。
「レイフォスさん、貴女が不満なのは魔法が成功しないことだよね?」
レイフォスは自分を威嚇するように浮かぶ氷の杭に怯えながら、グレーティエを睨み付けて答える。
「そうよ!貴女はずるしたようだけど、私はそんな不正なんてしないから、上手くできないのよ!」
何の脈絡もない言葉がレイフォスの口からあふれる。
グレーティエは面倒くさそうな顔を作り
「じゃあ、私が魔力を流す。それで外側から操作するから感覚を覚えられるはず」
「どういうこと?」
意味が理解できなかったレイフォスは、疑問を口にする。
「説明するの面倒だから、やってみればいい」
グレーティエは問題無用とばかりに、レイフォスに近寄る。
そして、グレーティエは、レイフォスの右手に自分の左手を重ねる。
レイフォスは驚き抵抗するが、グレーティエは風の魔法で圧力をかけ、動けないようにする。
重なる手から何の形も持たない、純粋な魔力がグレーティエから流れ、レイフォスに吸い寄せられる。
そして魔力は、レイフォスの身の内を駆け巡る。
駆け巡ることにより、レイフォスの身体にグレーティエの魔力が通る道ができ、その道を利用してレイフォスの内包魔力と交わらせ、風の魔力を放出させた。
その現象は、先ほどから全く成功しなかったレイフォスの魔力放出が成功したことを表す。
その当の本人たるグレーティエはというと。
「ファルストークさんはきっとずるをしているのよ、そうじゃなきゃおかしいわ、あんなに速くできるなんて、わたくしはこんなに頑張ってもできないのに!」
授業中であった。
そして、授業が開始してから、30分ほどが経ったころに、授業課題である、魔力に形を持たせるということができない女生徒がヒステリックに叫ぶ。
女生徒はグレーティエに嫉妬しているのだ。
しかし、嫉妬するなとは言わないが、その感情をずるをした、などの理由で発散させるのはいかがなものかと。
「レイフォスさん、ファルストークさんがずるをしたなんて、誰も思えないよ、それにもししたとして、どうやってずるをしたのか、僕らにはわからないんだけど?でもしたと断言するくらいなんだから、君はわかるはずだよね?」
グレーティエが言葉を発する前に、女生徒をたしなめる言葉が発せられた。
発生元は、グレーティエの次に課題を終わらせていた、ハイルである。
ハイルは貴族ではない。
王都から遠く離れた辺境の村出身の、平民である。
彼は、落ち着いた口調でレイフォスと呼ばれた女生徒にズルをしたならその証拠もわかるはずだと諭す。
ハイルの言葉に何も言えないレイフォスは、八つ当たりのようにハイルに噛みつく。
「う、うるさいわよ!あなたなんかに指図される謂れはないわよ!」
「いやいや、指図される謂れはないって言うけど、ファルストークさんがずるをした証拠があるかないかを僕は聞いてるんだよ?それは指図じゃないでしょ。それに学園の外でならそれは通用するけど、今は学園の中だよ。学園の中では一切の身分差は無いはずだけど?」
ハイルの言うとおり、学園では身分を振りかざすことは禁止され、学園で起きたことを外部で引きずることは、貴族として恥とされている。
実際にはそれを守る貴族はとても少ないが、流石に授業中にするものはいない。
「うるさい!うるさい!うるさい!あなたに何がわかると言うの!?平民のくせに私たちと同じ場所の空気を吸って、いい気になるのもそれくひっ」
レイフォスの言葉が言い終わる前に、それまでずっと黙っていたグレーティエが、彼女の口のまわりを囲むように、氷でできた小型の杭のようなものを出現させた。
「レイフォスさん、私のことをどうこう言おうが気にしないけど、ここで、この学園の中で貴族としてその発言は言ってはいけないことだ」
グレーティエの言うことも最もであった。
彼女の言ったことは、この学園に存在する貴族生徒が決して言ってはならない言葉だ。
そして、それを言ってしまえば、この学園にいる平民生徒からどういう目で見られるか、彼女は理解していない。
まだ無知である子供、されど貴族であることに変わりなく、放ってしまった言葉は取り消せない。
しかし、だからこそグレーティエは言い終わる前に彼女、レイフォスを止めた。
言い終わる前であれば、まだ言い訳が通る。
その心遣いに気づいたのは、ハイルのみであった。
ハイルは、レイフォスに侮蔑の言葉をかけられたというのに、全く気にしておらず、むしろ面白がるような視線をグレーティエに向けていた。
それはまさに、おもちゃを選ぶ子供のようであり、獲物を見つけた猛獣の様でもあった。
ハイルの眼差しに気づくことなく、グレーティエはレイフォスに近寄る。
「レイフォスさん、貴女が不満なのは魔法が成功しないことだよね?」
レイフォスは自分を威嚇するように浮かぶ氷の杭に怯えながら、グレーティエを睨み付けて答える。
「そうよ!貴女はずるしたようだけど、私はそんな不正なんてしないから、上手くできないのよ!」
何の脈絡もない言葉がレイフォスの口からあふれる。
グレーティエは面倒くさそうな顔を作り
「じゃあ、私が魔力を流す。それで外側から操作するから感覚を覚えられるはず」
「どういうこと?」
意味が理解できなかったレイフォスは、疑問を口にする。
「説明するの面倒だから、やってみればいい」
グレーティエは問題無用とばかりに、レイフォスに近寄る。
そして、グレーティエは、レイフォスの右手に自分の左手を重ねる。
レイフォスは驚き抵抗するが、グレーティエは風の魔法で圧力をかけ、動けないようにする。
重なる手から何の形も持たない、純粋な魔力がグレーティエから流れ、レイフォスに吸い寄せられる。
そして魔力は、レイフォスの身の内を駆け巡る。
駆け巡ることにより、レイフォスの身体にグレーティエの魔力が通る道ができ、その道を利用してレイフォスの内包魔力と交わらせ、風の魔力を放出させた。
その現象は、先ほどから全く成功しなかったレイフォスの魔力放出が成功したことを表す。
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