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学園編
63話
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授業が始まってから全く自分の魔力を放出できず、嫉妬心から早々に終わらせたグレーティエに八つ当たり気味な文句をあびせていた、レイフォスだったが。
その嫉妬心を浴びていたグレーティエ本人が、レイフォスができなかったことをさせた。
グレーティエとしては、嫉妬心に対してはあまり気にしていないが、レイフォスが言いかけた言葉を止めるためならば、いっそ口論の原因を無くしてしまえばいいと考え、魔力の形現を手伝ったが。
グレーティエがやった、他人の身体に魔力を通して外側から魔力操作をすることは、とても危険なことでもあった。
グレーティエ本人にとっては、教師としてコクランが自分に教えてくれたことを応用しただけだが、やり方によっては内側から身体を壊すことや操ることなどができる。
それほど魔力と身体は密接な関係にある。
授業としてコクランがグレーティエに教えたことは、魔力共有と魔力転位である。
魔力共有とは、別々の魔術師の魔力を交わらせ、単体では発動することができない強力な魔法を発動させることができる技法だ。
この国では魔術省に就職するのに必須の能力で、大規模魔法の際に利用される、魔力操作の技術である。
難易度としてはそれほど難しいわけではないが、能力差があり、呼吸をするように簡単にできるものもいれば、細心の注意をしなくてはできないものと別れている。
器用不器用の差と言えるだろう。
そして魔力転位とは、生物や無生物に魔力を纏わせる技術のことで、主に武器に魔力を纏わせるなどが主流だ。
この魔力転位は魔力共有よりも難易度が高く、物体に纏わせる魔力が多すぎると、その魔力により物体は壊れ、少な過ぎれば纏わせた意味がなくなる。
そして最大の理由は、その個々の物体によって魔力許容量が違う点、魔力操作が上手く出来なければ纏わせるまでいかない点、の2点がありかなり難しい技術である。
今回グレーティエが行ったことは、この魔力共有によってレイフォスの魔力を交わらせ、次に魔力転位の魔力操作を使って、レイフォスを道具のようなイメージにして、グレーティエが魔力に形をもたせるということをした。
グレーティエの感覚としては、レイフォスの魔力の動きを助けた程度のことだと考えているが、その実態は、動きを助けるなどということでなく、操ったというほうが正確だ。
これを行ったことによって、このあと何があるかを知るものは、今教室にいるものの中にはいなかった。
「あ、あの!ファルストークさん、私…その」
嫉妬心から醜態を晒していたことに、冷静になってようやく気づいたレイフォスは。
恥ずかしさからか、はたまた違う理由からなのか、グレーティエに何を言えばいいか悩んでいる。
恥ずかしがらずにそのまま直球でありがとうと言えば、何の問題もなかったが、レイフォスのような少々勝ち気な性格だと、こういった状況ですぐにお礼を言えるような殊勝な行動はとれなかったようだ。
グレーティエの、あなたに興味ありません雰囲気も理由に少なからず含まれていそうだが。
「なに?」
雰囲気通り、簡潔に要件を問うグレーティエは、若干面倒くさそうな顔である。
数分の時間が過ぎ、覚悟を決めたのか漸く、レイフォスは口を開く。
「えと、あ、ありがとうございます!私焦っていたの。ファルストークさんは一番年下なはずなのに、一番に課題を終わらせていて、私全然出来なくて、で、出来ないことが恐くて…そうしたら、ファルストークさんに八つ当たりしてしまって」
少し早口でつっかえてはいたが、自分の気持ちを素直に言葉にし、真正面から謝る姿は、子供にしては立派と言えるだろう。
そこはやはり貴族の娘と言うことだ。
謝罪を受けた当のグレーティエは、少し驚いていたが、先ほどの興味がないという態度を変えて、謝罪を受け入れる。
「いいえ、気にしないから平気です。こちらこそごめんなさい、氷向けちゃって」
2人の間で和解が済み、教室に広がっていた悪い空気は払拭された。
自習授業が終わると、グレーティエが行ったことに興味を持った生徒たちが、グレーティエの周りを囲む。
「ファルストークさん!先ほどの魔法?なのかわからないがあれはどうやったんだ?」
代表するようにこの教室内では年長に入る、ルーファン・ラルクス(十三歳)が聞いてきた。
ルーファンはラルクス伯爵家の次男である。
ラルクス伯爵は貴族の中でも魔術師として有名である。
何人も高名な魔術師を輩出している魔術師の名家で、ルーファンも学園入学が遅めではあるが、ラルクス伯爵家の名に恥じぬ実力を有している。
しかし、自身の半分以下の年齢であるグレーティエのほうが、自身より数段上の魔法の才能があるとほんの短い期間で理解し、家のためにも彼女と仲良くすべきだと考え、話しかけた。
単純に、グレーティエの行ったことへの興味も存在していた。
「あれがあれば、俺ももう少し早くできたなぁー」
八歳の男の子であるルークは、レイフォスを羨ましがるような発言をし、
「ほんとほんと!あんなことができるなら私もすぐに魔法が上達しちゃうわ!だからファルストークさん!お願い!次の魔法の授業で私にもあの方法やってほしいの!」
九歳の女の子でナンシー子爵家の長女であるアンナが便乗して、次の授業で自分にも魔力流しをしてほしいと、子供の無邪気さが伺えることを言う。
皆がこんなに食いつくとは思わなかったグレーティエは、数刻前の自分を叱りたい気持ちになりながらも、この状況をどう乗りきるか頭をフル回転させるのであった。
その嫉妬心を浴びていたグレーティエ本人が、レイフォスができなかったことをさせた。
グレーティエとしては、嫉妬心に対してはあまり気にしていないが、レイフォスが言いかけた言葉を止めるためならば、いっそ口論の原因を無くしてしまえばいいと考え、魔力の形現を手伝ったが。
グレーティエがやった、他人の身体に魔力を通して外側から魔力操作をすることは、とても危険なことでもあった。
グレーティエ本人にとっては、教師としてコクランが自分に教えてくれたことを応用しただけだが、やり方によっては内側から身体を壊すことや操ることなどができる。
それほど魔力と身体は密接な関係にある。
授業としてコクランがグレーティエに教えたことは、魔力共有と魔力転位である。
魔力共有とは、別々の魔術師の魔力を交わらせ、単体では発動することができない強力な魔法を発動させることができる技法だ。
この国では魔術省に就職するのに必須の能力で、大規模魔法の際に利用される、魔力操作の技術である。
難易度としてはそれほど難しいわけではないが、能力差があり、呼吸をするように簡単にできるものもいれば、細心の注意をしなくてはできないものと別れている。
器用不器用の差と言えるだろう。
そして魔力転位とは、生物や無生物に魔力を纏わせる技術のことで、主に武器に魔力を纏わせるなどが主流だ。
この魔力転位は魔力共有よりも難易度が高く、物体に纏わせる魔力が多すぎると、その魔力により物体は壊れ、少な過ぎれば纏わせた意味がなくなる。
そして最大の理由は、その個々の物体によって魔力許容量が違う点、魔力操作が上手く出来なければ纏わせるまでいかない点、の2点がありかなり難しい技術である。
今回グレーティエが行ったことは、この魔力共有によってレイフォスの魔力を交わらせ、次に魔力転位の魔力操作を使って、レイフォスを道具のようなイメージにして、グレーティエが魔力に形をもたせるということをした。
グレーティエの感覚としては、レイフォスの魔力の動きを助けた程度のことだと考えているが、その実態は、動きを助けるなどということでなく、操ったというほうが正確だ。
これを行ったことによって、このあと何があるかを知るものは、今教室にいるものの中にはいなかった。
「あ、あの!ファルストークさん、私…その」
嫉妬心から醜態を晒していたことに、冷静になってようやく気づいたレイフォスは。
恥ずかしさからか、はたまた違う理由からなのか、グレーティエに何を言えばいいか悩んでいる。
恥ずかしがらずにそのまま直球でありがとうと言えば、何の問題もなかったが、レイフォスのような少々勝ち気な性格だと、こういった状況ですぐにお礼を言えるような殊勝な行動はとれなかったようだ。
グレーティエの、あなたに興味ありません雰囲気も理由に少なからず含まれていそうだが。
「なに?」
雰囲気通り、簡潔に要件を問うグレーティエは、若干面倒くさそうな顔である。
数分の時間が過ぎ、覚悟を決めたのか漸く、レイフォスは口を開く。
「えと、あ、ありがとうございます!私焦っていたの。ファルストークさんは一番年下なはずなのに、一番に課題を終わらせていて、私全然出来なくて、で、出来ないことが恐くて…そうしたら、ファルストークさんに八つ当たりしてしまって」
少し早口でつっかえてはいたが、自分の気持ちを素直に言葉にし、真正面から謝る姿は、子供にしては立派と言えるだろう。
そこはやはり貴族の娘と言うことだ。
謝罪を受けた当のグレーティエは、少し驚いていたが、先ほどの興味がないという態度を変えて、謝罪を受け入れる。
「いいえ、気にしないから平気です。こちらこそごめんなさい、氷向けちゃって」
2人の間で和解が済み、教室に広がっていた悪い空気は払拭された。
自習授業が終わると、グレーティエが行ったことに興味を持った生徒たちが、グレーティエの周りを囲む。
「ファルストークさん!先ほどの魔法?なのかわからないがあれはどうやったんだ?」
代表するようにこの教室内では年長に入る、ルーファン・ラルクス(十三歳)が聞いてきた。
ルーファンはラルクス伯爵家の次男である。
ラルクス伯爵は貴族の中でも魔術師として有名である。
何人も高名な魔術師を輩出している魔術師の名家で、ルーファンも学園入学が遅めではあるが、ラルクス伯爵家の名に恥じぬ実力を有している。
しかし、自身の半分以下の年齢であるグレーティエのほうが、自身より数段上の魔法の才能があるとほんの短い期間で理解し、家のためにも彼女と仲良くすべきだと考え、話しかけた。
単純に、グレーティエの行ったことへの興味も存在していた。
「あれがあれば、俺ももう少し早くできたなぁー」
八歳の男の子であるルークは、レイフォスを羨ましがるような発言をし、
「ほんとほんと!あんなことができるなら私もすぐに魔法が上達しちゃうわ!だからファルストークさん!お願い!次の魔法の授業で私にもあの方法やってほしいの!」
九歳の女の子でナンシー子爵家の長女であるアンナが便乗して、次の授業で自分にも魔力流しをしてほしいと、子供の無邪気さが伺えることを言う。
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