前世は仕事のやりすぎによる過労死を経験したので次の人生ではのんびり生きたい

ライ

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学園編

52話

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「俺がこいつを死なせるわけがないだろう。誰も、助けられないなんて言ってねぇ」
青年のその言葉に、クラウスは握られた両手から力を抜き、安堵した。
「ああ、そうか、良かった」
青年はそんな行動をとるクラウスに、何故そこまで強い想いを抱けるのか疑問に思っていた。
青年の予想では、少女つまりティエはクラウスのことを兄と認識していない。
だが、クラウスの中からはティエと近い血が流れているのは分かる。
ならば、クラウスはティエが物心つく前に会ったりしていたのだろうと、考えられる。
その程度の時間でこんなに心配できるのだろうか?
人間の心はよくわからない。
人でない幻獣に人の心の理解は難しいようだ。

「で、どうするんだ?」
クラウスは安心してしまったせいか、肝心要の、少女を助ける方法を聞けない状態なので、多少冷静さを取り戻したディランが、青年に質問をした。
「簡単なことさ。魔力が溢れて器に負担がかかってるんだから、魔力を抜いてやればいいんだよ」
青年はディランの質問に、短く簡潔な答えをだした。
確かに多過ぎて熱を出しているのだから、抜いてやればいいのはわかる。
しかし、他人の魔力を操ることのできる術などない。
青年はまあ見てろよと言いながら、少女に視線を向けます。
その視線は、獲物を狙う肉食獣のそれと同じか、それ以上に見えた。
青年は舌なめずりしながら、少女の顎を持ち上げ、その唇を舌で舐め、少女の口を開かせ、小さく開いたその口の中に舌を入れた。
「あっおい何もがっ」
「はいはい、お前はちょっと黙ってろー」
青年のその行動に、先ほどまで妹が大丈夫だと安心していた兄が、青年の行動に怒りを露に詰め寄ろうとするが、黙って様子を見ていたディランに、後ろから拘束され口を塞がれてしまった。
青年は少女の口に入れた舌を使って、少女から唾液を出させます。
少女の口から出た唾液を青年は美味しそうに飲んでいますが、途中から眉間に皺を寄せています。
しばらくすると、呼吸が苦しくなったか、少女が青年の胸に手をおし当てています。
意識が覚醒したわけではないようです。
青年は名残惜しそうに、少女の口から自分のそれを抜き取り、唇を舐めました。
先ほどまで、小さく荒い息遣いをしていた少女の呼吸が穏やかになっています。
「あ~、旨い。溺れそうだ」
青年は愉悦を含んだ、声でそう言った。
「どういう仕組みなんだ?」
ディランは首を傾げながら、青年に質問した。
「俺はこいつの契約獣だから、こいつの魔力を食えるんだよ。まあでも、俺じゃなきゃ受け止めきれなかったな。俺でもキツいぜこの量は」
「だからといってくっ口付けする必要があったのか!?」
ディランに口を塞がれていたクラウスが、悲鳴混じりの声でそう言う。
「意味ならある。口からの方が吸いやすい。今のは唾液を魔力に置き換えてんだよ」
クラウスの言葉に青年はそう答えた。
その後、青年の腕の中にいる、少女が身動ぎした。
少女のその瞼はゆっくり開かれた。
少女の視界は、目覚めたばかりでボヤけていたが、ゆっくりまばたきをして、周りを見る。
その間、誰も何も喋らない。
「紫、皇?」
たどたどしく、青年の名を呼んだ。
「遅いお目覚めだな。俺の眠り姫?」
青年はそう言い、少女グレーティエに笑いかけ、その額に口付けをした。
グレーティエはなんの反応も示さなかった。
「グレーティエ!良かった。意識が戻って」
クラウスはグレーティエの無事を喜びます。
気のせいか、若干声が大きくなっている。
(自分を気にして欲しいのだろう)
グレーティエはクラウスの方に向き、
「先生、えっとみなさん、無事ですか?確かフェニクスっぽいのがいたような」
目覚めたばかりで記憶が曖昧なのか、確かめるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ああ、鳥野郎ならそこにいるぞ」
グレーティエの言葉に真っ先に答えたのは、紫皇で、フェニクスがいる方に視線を向けた。
「鳥野郎?」
グレーティエはそう言いながら、紫皇の視線を追い、フェニクスを見て、
「うーん。これ、どうすればいいんでしょうか?」
クラウスにそう尋ねた。 
「あ、ああ。とりあえず、王に報告しなければならないだろう。グレーティエ、この檻を、檻ごと移動させることは可能かい?」
「多分、できると思います」
クラウスの質問に少し自信がなさそうに答えた。
「じゃあ、王宮についてきてくれるか?」
その時、グレーティエの心の中で警鐘が鳴った。
とてつもなく面倒なことが起きる予感が。
グレーティエはその嫌な予感から逃げるために、苦笑いしながら、
「えーと、遠隔操作でやっちゃダメですか?」
「どうして?というか、可能なのかい?」
クラウスは純粋な疑問とそれは無理だろう、と思う気持ちの半々の顔をしている。
「あの、嫌な…じゃなくて、私にはその、荷が重いと思うので。見えれば距離は関係無いので、できます(気合でなんとかする)」
グレーティエはか細い声で答え、先ほどの躊躇いがちな答えと違い、今度はできると断言をした。
グレーティエの最初の言葉は、小声過ぎて、クラウスやディランには聞こえなかった。
それが聞こえた、ただ1人の男紫皇はグレーティエにばれないように、笑っています。
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