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学園編
53話
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「あの、嫌な…じゃなくて、私にはその、荷が重いと思うので。見えれば距離は関係無いので、できます」
「いや、お嬢ちゃんそれマジで言ってんの?」
グレーティエの言葉に真っ先に口を開いたのは、ディランだった。
ディランが驚くのも無理はない。
グレーティエの言った、「見えれば距離は関係無い」の言葉は、確かにその通りだが、遠くを見るには、千里眼という高位魔術などが必要になる。
この千里眼は、ファルーア王国でも上位の術者、(他国も同様)が使える、かなり難しい魔術だ。
それを僅か五歳の子供が使えるなんて、信じられないのも、無理はない。(大事な事なので二回言った)
「おいおい、こいつができると言ってんだからできるに決まってんだろ」
グレーティエ本人が答える前に、彼女の契約獣が口を出してきた。
「ちょっと紫皇、割り込まないでよ」
グレーティエは紫皇に小さく注意をした。
「あん?俺としては、物体を遠くにやるくらい、お前なら簡単に出来るって思ってるぜ」
『はあ!?』
皆の声が揃った。(紫皇とグレーティエを除く)
「えぇ!マジか。信じらんねぇ」
ディランは驚き、頭を両手で抱えています。
言葉通り、信じられず、脳が理解を拒否しているようだ。
「嘘じゃねえよ。こいつならそれくらい簡単なはずだ」
ディランの疑いだらけの声に、ムッとした紫皇は、グレーティエの頭をグシャグシャにしながら、言い切った。
「紫皇、痛いから止めろ」
頭をグシャグシャにされたグレーティエは、紫皇の手を叩いて抗議する。(子供の力なので、全然痛くない)
「で、結局どうすんだ?」
脱線しかけた所をディランが戻した。
「俺はティエが城に行っても行かなくても、どっちでもいいが、今回はさすがに行ったほうがいいんじゃないか?」
グレーティエはものすごく嫌そうな顔をしながらも、諦めたようにため息をつき、
「こればかりは仕方ないか」
と無理やり納得したようです。
「まあ、今日は俺がやってやるよ。ティエ」
グレーティエの髪を撫でながら紫皇は、蚊帳の外にいたディランとクラウスに向き直ります。
「城ってどっち?」
「あっち」
ディランが先に城の方角を指した。
「じゃあティエ、魔力もらうぞ」
「ああ」
そのやり取りが終わると、紫皇はグレーティエの手を握ります。
握る二人の手から魔力が移動していきます。
紫皇はグレーティエの魔力を吸い、フェニクスと自分たちの回りに風を吹かせ、その風で一気に城に移動させてしまう。
グレーティエたちが城に来る少し前
ファルーア王国の王都ルクラにある、スティーラ城の執務室。
「へっ陛下ー!大変です!」
伝令役を長いことやっている男性が、動揺も露に王の執務室に駆け込んだ。
男性のいきなりの登場に、中で執務を行っていた王は驚きます。
だが、そこは一国の王、すぐに驚きから回復して要件を聞く態勢になる。
「どうした、ドミニク、そんなに慌てて」
呼ばれた男性、ドミニクが呼吸を落ち着けながら、話し始めた。
「大変なのです。キルト魔法学園にS級幻獣フェニクスが侵入したのです」
ドミニクのその報告には、一国の王であろうとも驚きが隠せないようだ。
「なっ、被害状況はどうなのだ?」
驚きが隠せなくとも、状況判断をするところは流石は王ということか。
「はっ、一年生の教室の窓が大破したとのことですが、それ以外の被害は今のところ確認できておりません」
「ふむ、そうか。とりあえず、コクランを呼べ。それと将軍、宰相もだ」
「了解いたしました。すぐにお呼びいたします」
ドミニクが執務室を退室し、目的の人物を呼びに行く間、王は一人、どう対処すべきを考えていた。
「陛下!お呼びいたしました」
数分でドミニクは3人を呼んできた。
「入れ」
入室の許可を出された、3人は「失礼します」
と言い、入室した。
「お呼びと聞き、参りましたがいったい何が起きたのです?」
政務の邪魔をされた、宰相ティエール・ファルストーク・ギレストは眉間に皺を寄せながら、聞いた。
「ティエール、邪魔をしたのは悪いと思うが、これは一刻を争う。キルト魔法学園にフェニクスが現れた。被害は拡大されていないが、いつまでもつか分からん。その前に対策を立てるためにお前たちを呼んだんだ」
「なっ学園にですと!グレーティが危ない、早く言ってください。すぐに助けに行かなくては。陛下、すみませんが、休みを貰います」
「待て待て、落ち着け、被害はまだ出ていない。早まるな」
宰相がおかしな方向に暴走しかけているのを王が止めた。(物理的にドミニクが宰相を抑えている)
「確かに大変だ。俺が出ましょうか?」
宰相を無視し、将軍と王の会話が流れる。
「ふむ、あまり刺激しすぎるのもいかんが、さりとてうまい解決策もない。…出てくれるか?」
少しの沈黙の後に王は、将軍の申し出を受ける形の問いをした。
「お任せあれ。建物に被害が出るかもしれませんが、生徒たちの安全は守ってみせます」
将軍は王の問いに頭を下げ、了承の意を表す。
「うむ、それでは頼む。魔術師長、貴殿も出てくれ。建物の被害を減らすために結界などで将軍の援護を」
「分かりました」
王の命に、淡々と答えたコクランの目には先ほどよりも強い、好奇心の光が宿っている。
話が纏まりだしたころ、王に念話が。
念話とは、テレパシーのようなもの。
『あー、聞こえますかー?陛下』
「む?この声はディランか?」
『そうっす、聞こえてますね。今俺、学園にいるんすけど、フェニクスそっちつれてくんで、謁見の間に移動しといてくれます?』
「は?ディランちょっと待て、どういう意味だ
、話が見えん」
『どういうも何も、フェニクスがでかいからですよ。謁見の間なら広いから、大丈夫でしょ。じゃあそういうことで、よろしくお願いしまーす』
「待てディラン!」
「どうなさいました、陛下?」
「私も分からんが、ディランがフェニクスをこちらに連れてくると言った」
「「「は?」」」
三者三様に疑問の声が上がる。
「とりあえず、謁見の間に移動しよう。ディランはふざけた言動だが、嘘はつかん」
「そ、そうですね。考えても分からないですし」
「では、いくぞ」
王の声により、5人は執務室から出た。
宰相はドミニクに引きずられて移動した。
「いや、お嬢ちゃんそれマジで言ってんの?」
グレーティエの言葉に真っ先に口を開いたのは、ディランだった。
ディランが驚くのも無理はない。
グレーティエの言った、「見えれば距離は関係無い」の言葉は、確かにその通りだが、遠くを見るには、千里眼という高位魔術などが必要になる。
この千里眼は、ファルーア王国でも上位の術者、(他国も同様)が使える、かなり難しい魔術だ。
それを僅か五歳の子供が使えるなんて、信じられないのも、無理はない。(大事な事なので二回言った)
「おいおい、こいつができると言ってんだからできるに決まってんだろ」
グレーティエ本人が答える前に、彼女の契約獣が口を出してきた。
「ちょっと紫皇、割り込まないでよ」
グレーティエは紫皇に小さく注意をした。
「あん?俺としては、物体を遠くにやるくらい、お前なら簡単に出来るって思ってるぜ」
『はあ!?』
皆の声が揃った。(紫皇とグレーティエを除く)
「えぇ!マジか。信じらんねぇ」
ディランは驚き、頭を両手で抱えています。
言葉通り、信じられず、脳が理解を拒否しているようだ。
「嘘じゃねえよ。こいつならそれくらい簡単なはずだ」
ディランの疑いだらけの声に、ムッとした紫皇は、グレーティエの頭をグシャグシャにしながら、言い切った。
「紫皇、痛いから止めろ」
頭をグシャグシャにされたグレーティエは、紫皇の手を叩いて抗議する。(子供の力なので、全然痛くない)
「で、結局どうすんだ?」
脱線しかけた所をディランが戻した。
「俺はティエが城に行っても行かなくても、どっちでもいいが、今回はさすがに行ったほうがいいんじゃないか?」
グレーティエはものすごく嫌そうな顔をしながらも、諦めたようにため息をつき、
「こればかりは仕方ないか」
と無理やり納得したようです。
「まあ、今日は俺がやってやるよ。ティエ」
グレーティエの髪を撫でながら紫皇は、蚊帳の外にいたディランとクラウスに向き直ります。
「城ってどっち?」
「あっち」
ディランが先に城の方角を指した。
「じゃあティエ、魔力もらうぞ」
「ああ」
そのやり取りが終わると、紫皇はグレーティエの手を握ります。
握る二人の手から魔力が移動していきます。
紫皇はグレーティエの魔力を吸い、フェニクスと自分たちの回りに風を吹かせ、その風で一気に城に移動させてしまう。
グレーティエたちが城に来る少し前
ファルーア王国の王都ルクラにある、スティーラ城の執務室。
「へっ陛下ー!大変です!」
伝令役を長いことやっている男性が、動揺も露に王の執務室に駆け込んだ。
男性のいきなりの登場に、中で執務を行っていた王は驚きます。
だが、そこは一国の王、すぐに驚きから回復して要件を聞く態勢になる。
「どうした、ドミニク、そんなに慌てて」
呼ばれた男性、ドミニクが呼吸を落ち着けながら、話し始めた。
「大変なのです。キルト魔法学園にS級幻獣フェニクスが侵入したのです」
ドミニクのその報告には、一国の王であろうとも驚きが隠せないようだ。
「なっ、被害状況はどうなのだ?」
驚きが隠せなくとも、状況判断をするところは流石は王ということか。
「はっ、一年生の教室の窓が大破したとのことですが、それ以外の被害は今のところ確認できておりません」
「ふむ、そうか。とりあえず、コクランを呼べ。それと将軍、宰相もだ」
「了解いたしました。すぐにお呼びいたします」
ドミニクが執務室を退室し、目的の人物を呼びに行く間、王は一人、どう対処すべきを考えていた。
「陛下!お呼びいたしました」
数分でドミニクは3人を呼んできた。
「入れ」
入室の許可を出された、3人は「失礼します」
と言い、入室した。
「お呼びと聞き、参りましたがいったい何が起きたのです?」
政務の邪魔をされた、宰相ティエール・ファルストーク・ギレストは眉間に皺を寄せながら、聞いた。
「ティエール、邪魔をしたのは悪いと思うが、これは一刻を争う。キルト魔法学園にフェニクスが現れた。被害は拡大されていないが、いつまでもつか分からん。その前に対策を立てるためにお前たちを呼んだんだ」
「なっ学園にですと!グレーティが危ない、早く言ってください。すぐに助けに行かなくては。陛下、すみませんが、休みを貰います」
「待て待て、落ち着け、被害はまだ出ていない。早まるな」
宰相がおかしな方向に暴走しかけているのを王が止めた。(物理的にドミニクが宰相を抑えている)
「確かに大変だ。俺が出ましょうか?」
宰相を無視し、将軍と王の会話が流れる。
「ふむ、あまり刺激しすぎるのもいかんが、さりとてうまい解決策もない。…出てくれるか?」
少しの沈黙の後に王は、将軍の申し出を受ける形の問いをした。
「お任せあれ。建物に被害が出るかもしれませんが、生徒たちの安全は守ってみせます」
将軍は王の問いに頭を下げ、了承の意を表す。
「うむ、それでは頼む。魔術師長、貴殿も出てくれ。建物の被害を減らすために結界などで将軍の援護を」
「分かりました」
王の命に、淡々と答えたコクランの目には先ほどよりも強い、好奇心の光が宿っている。
話が纏まりだしたころ、王に念話が。
念話とは、テレパシーのようなもの。
『あー、聞こえますかー?陛下』
「む?この声はディランか?」
『そうっす、聞こえてますね。今俺、学園にいるんすけど、フェニクスそっちつれてくんで、謁見の間に移動しといてくれます?』
「は?ディランちょっと待て、どういう意味だ
、話が見えん」
『どういうも何も、フェニクスがでかいからですよ。謁見の間なら広いから、大丈夫でしょ。じゃあそういうことで、よろしくお願いしまーす』
「待てディラン!」
「どうなさいました、陛下?」
「私も分からんが、ディランがフェニクスをこちらに連れてくると言った」
「「「は?」」」
三者三様に疑問の声が上がる。
「とりあえず、謁見の間に移動しよう。ディランはふざけた言動だが、嘘はつかん」
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王の声により、5人は執務室から出た。
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