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学園編
54話
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ファルーア王国、王都ルクラにあるスティーラ城、謁見の間に繋がる回廊にて。
「陛下、大丈夫ですか?」
「はあはあ、だ、大丈夫だ何とか」
謁見の間に向かっている、5人のうち1人(王)は息を切らしていた。
それもそのはず、当代のファルーア王国の王は、今年で63歳になる。
この歳になっては体力が落ちるのも当たり前。
それに加えて、王は最近まで執務室に缶詰状態で政務をしており、あまり運動をしていなかった。
そんな状態で全力疾走は身体に堪えるだろう。
それを心配した将軍だが、こちらは涼しい顔で王の隣を走っている。
言い忘れていたが、この将軍の名前はシャンティス・スワイル・カイラ。
そして、黒髪の1人、コクラン・ファルガウスも息を乱すことなく、走っている。
こちらは王のことを気にする様子もない。
そうして、もう1人いや、もう2人は1人がもう1人を引きずるように進んでいた。
「はあ、いい加減自分で走ってくださいよ」
「そういうならばこの手を離せ!」
「離したら閣下、学園に行っちゃうでしょ」
「当たり前だ!グレーティに何かあったらどうしてくれる!」
「だからそれを確認するために謁見の間に行くんですよ。わかってくださいよ」
このような会話がされている。
ちなみに、引きずられている方がこの国の宰相で、氷の宰相と恐れられているが、この会話を聞いたら、恐怖など生まれようもないだろう。
引きずっている方は、元は宰相の部下であった、現在は王の伝令役だ。
宰相のことを恐れず、ずけずけとものを言う態度から、まわりのものたちの尊敬を集めていた。
宰相と元部下のそんな会話がなされながらも、5人は謁見の間へ向かっていく。
ほどなくして、5人は謁見の間の扉の前についた。
謁見の間の扉の前には、常に見張りと護衛の役目の兵士が3人いる。
3人の兵士たちは、王や宰相、将軍たちの突然の登場に、いったい何事だろうかと、とても驚いていた。
まあ、当然の反応だろう。
5人を代表して、一番身分が低いドミニクが(ティエールの拘束は解かず)兵士たちに要件を伝えた。
「仕事、ご苦労さん。ちょっと謁見の間に用があるから開けてくれ」
「はっはい、ただいま」
年嵩の兵士が返事をし、残りの2人は扉を開けるために動いた。
グレーティエの魔力を使って、紫皇は、グレーティエ、フェニクス、クラウス、ディラン、(ラルは学園に残り、生徒たちの面倒をみている)を王宮の、謁見の間に飛ばした。
クラウスとディランは浮遊感を感じた直後に、気づいたら床に落っこちていた。
「うわっ」「痛っ」
グレーティエは紫皇に抱えられて、ゆっくりと床に降りた。
フェニクスは檻の中にいるので、特に痛みはない。
謁見の間の扉が開いた。
「グレーティ!」
ティエールは扉が開くと、ドミニクの拘束を振り切って、愛娘のもとに駆け寄った。
紫皇はその前に、グレーティエを床に下ろしている。
「と、父様?」
グレーティエはいきなりの父の登場に驚きを隠せません。
ティエールは、感動の再会とばかりに、グレーティエを抱きしめます。
感情の高ぶりのせいなのか、ティエールは力の加減を忘れています。
「く、くるし。痛っ」
火傷した足にも痛みがはしったようだ。
「おいおい、俺の大事なティエに何してんだよ」
紫皇は、俺の大事なのところを殊更強調して、グレーティエを奪いとります。
(ティエールがグレーティエのくるし発言により、我にかえって力を緩めたところを狙った)
呆然とことの成り行きを見守っている一同。
その衝撃からいち早く立ち直ったのは、この国の王である、ジェイラス・ファルーア・ルクラである。
「ティエール」
その一言は、謁見の間に響き渡った。
「お前の娘を思う気持ちはよくわかったから、とりあえずは落ち着け」
「グレーティ、すまない」
ティエールは威厳ある王の言葉に一切の反応をせず、グレーティエに謝った。
「父様、大丈夫です。これは自業自得ですから」
グレーティエは父に自分は大丈夫だというために、笑顔で答えた。
「そうか、良かった。でも、その怪我はどうして負ったの?」
ティエールは娘の言葉に安心したようですが、火傷した足を見て、一瞬般若のような恐ろしい顔をしながら、問うた。
「えーと、これは、あそこにいるフェニクスに…」
「そう、そこにいる鳥のせいなんだね?」
氷の宰相は、ゆっくりとした口調で確認するように、檻の中にいるフェニックスに視線を向けます。
それは絶対零度のように、聞いたものすべてを凍らせるような声音です。
「凍れ」「ティエール!やめろ!」
氷の宰相は一言、そう言うだけでフェニクスのまわりが一瞬で、氷漬けになります。同時に王の制止の声が重なるが、宰相は無視した。
「おや、これはどういうことだ?」
「父様、檻は中からも外からも攻撃を無効にするから」
氷漬けにする対象がフェニクスなのに対して、まわりだけが凍ったことに疑問を持った宰相に、娘からの答えが返る。
「あの檻はグレーティが作ったのか」
「はい、彼が暴れるから」
「そうか、流石は私の娘だね、あれほど見事な檻を作れるなんて」
ティエールは怒りを忘れ、娘の成長を喜んでいる。
氷結を遮られたことなど、まるで気にしていないようだ。
「喜ばしいようだが、私の話を聞いてくれないか?」
どうやら、ティエールが忘れたのは、怒りの感情だけでなく、王の存在も含まれていたようだった。
「陛下、大丈夫ですか?」
「はあはあ、だ、大丈夫だ何とか」
謁見の間に向かっている、5人のうち1人(王)は息を切らしていた。
それもそのはず、当代のファルーア王国の王は、今年で63歳になる。
この歳になっては体力が落ちるのも当たり前。
それに加えて、王は最近まで執務室に缶詰状態で政務をしており、あまり運動をしていなかった。
そんな状態で全力疾走は身体に堪えるだろう。
それを心配した将軍だが、こちらは涼しい顔で王の隣を走っている。
言い忘れていたが、この将軍の名前はシャンティス・スワイル・カイラ。
そして、黒髪の1人、コクラン・ファルガウスも息を乱すことなく、走っている。
こちらは王のことを気にする様子もない。
そうして、もう1人いや、もう2人は1人がもう1人を引きずるように進んでいた。
「はあ、いい加減自分で走ってくださいよ」
「そういうならばこの手を離せ!」
「離したら閣下、学園に行っちゃうでしょ」
「当たり前だ!グレーティに何かあったらどうしてくれる!」
「だからそれを確認するために謁見の間に行くんですよ。わかってくださいよ」
このような会話がされている。
ちなみに、引きずられている方がこの国の宰相で、氷の宰相と恐れられているが、この会話を聞いたら、恐怖など生まれようもないだろう。
引きずっている方は、元は宰相の部下であった、現在は王の伝令役だ。
宰相のことを恐れず、ずけずけとものを言う態度から、まわりのものたちの尊敬を集めていた。
宰相と元部下のそんな会話がなされながらも、5人は謁見の間へ向かっていく。
ほどなくして、5人は謁見の間の扉の前についた。
謁見の間の扉の前には、常に見張りと護衛の役目の兵士が3人いる。
3人の兵士たちは、王や宰相、将軍たちの突然の登場に、いったい何事だろうかと、とても驚いていた。
まあ、当然の反応だろう。
5人を代表して、一番身分が低いドミニクが(ティエールの拘束は解かず)兵士たちに要件を伝えた。
「仕事、ご苦労さん。ちょっと謁見の間に用があるから開けてくれ」
「はっはい、ただいま」
年嵩の兵士が返事をし、残りの2人は扉を開けるために動いた。
グレーティエの魔力を使って、紫皇は、グレーティエ、フェニクス、クラウス、ディラン、(ラルは学園に残り、生徒たちの面倒をみている)を王宮の、謁見の間に飛ばした。
クラウスとディランは浮遊感を感じた直後に、気づいたら床に落っこちていた。
「うわっ」「痛っ」
グレーティエは紫皇に抱えられて、ゆっくりと床に降りた。
フェニクスは檻の中にいるので、特に痛みはない。
謁見の間の扉が開いた。
「グレーティ!」
ティエールは扉が開くと、ドミニクの拘束を振り切って、愛娘のもとに駆け寄った。
紫皇はその前に、グレーティエを床に下ろしている。
「と、父様?」
グレーティエはいきなりの父の登場に驚きを隠せません。
ティエールは、感動の再会とばかりに、グレーティエを抱きしめます。
感情の高ぶりのせいなのか、ティエールは力の加減を忘れています。
「く、くるし。痛っ」
火傷した足にも痛みがはしったようだ。
「おいおい、俺の大事なティエに何してんだよ」
紫皇は、俺の大事なのところを殊更強調して、グレーティエを奪いとります。
(ティエールがグレーティエのくるし発言により、我にかえって力を緩めたところを狙った)
呆然とことの成り行きを見守っている一同。
その衝撃からいち早く立ち直ったのは、この国の王である、ジェイラス・ファルーア・ルクラである。
「ティエール」
その一言は、謁見の間に響き渡った。
「お前の娘を思う気持ちはよくわかったから、とりあえずは落ち着け」
「グレーティ、すまない」
ティエールは威厳ある王の言葉に一切の反応をせず、グレーティエに謝った。
「父様、大丈夫です。これは自業自得ですから」
グレーティエは父に自分は大丈夫だというために、笑顔で答えた。
「そうか、良かった。でも、その怪我はどうして負ったの?」
ティエールは娘の言葉に安心したようですが、火傷した足を見て、一瞬般若のような恐ろしい顔をしながら、問うた。
「えーと、これは、あそこにいるフェニクスに…」
「そう、そこにいる鳥のせいなんだね?」
氷の宰相は、ゆっくりとした口調で確認するように、檻の中にいるフェニックスに視線を向けます。
それは絶対零度のように、聞いたものすべてを凍らせるような声音です。
「凍れ」「ティエール!やめろ!」
氷の宰相は一言、そう言うだけでフェニクスのまわりが一瞬で、氷漬けになります。同時に王の制止の声が重なるが、宰相は無視した。
「おや、これはどういうことだ?」
「父様、檻は中からも外からも攻撃を無効にするから」
氷漬けにする対象がフェニクスなのに対して、まわりだけが凍ったことに疑問を持った宰相に、娘からの答えが返る。
「あの檻はグレーティが作ったのか」
「はい、彼が暴れるから」
「そうか、流石は私の娘だね、あれほど見事な檻を作れるなんて」
ティエールは怒りを忘れ、娘の成長を喜んでいる。
氷結を遮られたことなど、まるで気にしていないようだ。
「喜ばしいようだが、私の話を聞いてくれないか?」
どうやら、ティエールが忘れたのは、怒りの感情だけでなく、王の存在も含まれていたようだった。
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