前世は仕事のやりすぎによる過労死を経験したので次の人生ではのんびり生きたい

ライ

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学園編

56話

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王とティエールの脱線した会話が途切れたとき、水の檻に閉じ込められている、フェニクスが暴れ始めた。
『おい!そこの小娘!くだらない話をしていないで、さっさとこの檻を解け!』
どうやら、王とティエールの会話にうんざりして、暴れ始めたようだ。
「そういえば忘れていたな」
王は言葉通り、本当に忘れていたようだ。
水の檻を作った当の本人も「そういえば」というような顔をしていた。
その、皆の態度にフェニクスは、
『貴様ら、良い度胸だな、我の存在を忘れるとは』
怒りが臨界点を突破したようで、一周回って冷静になったようだ。
その声音は静かな怒りを湛えている。
「結局どうすんだ?こいつ」
先ほどからずっと黙っていた紫皇が、そう口にする。
「ふむ、フェニクスか、殺すのもおしいな。誰かと契約してもらうのが一番だが」
『ふんっこの我が人間なぞに従うものか』
王の言葉に全面否定をするフェニクス。
「では、死にたいのか?」
フェニクスの言葉に、王は軽い口調で、そう言う。
『はっ、笑わせる。人間ごときにこの我が殺されるわけない』
「ほお?ティエールの娘に不様に捕まったのにか?」
『ぐっ、そこの小娘には油断しただけだ。次やれば我が勝つ』
「いやいや、ティエに勝てるわけないだろ。確かにさっきのお前は本気出してねぇけど、それはこいつも同じだ」
紫皇はグレーティエの頭に手をのせ、ぐりぐりと撫でながら言う。
撫でられているグレーティエは嫌そうに紫皇のことを睨んでいるが、王の御前なので文句は言えない。
『ほう?それは、全力の殺しあいをしてみたいものだな』
「いやだよ」
好奇心のままに発したフェニクスの言葉に、グレーティエは被せるような形で否定を口にする。
「まあそんなことはどうでもいい。契約に関しては、こちらにもフェニクスと契約できるやつがいないから無理だ。まったく、どうしたものかな」
ため息を吐きそうな表情で、王は悩む。
フェニクスはじーっとグレーティエを見て、爆弾を投下する。
『小娘。お前にならば、使役されてやってもいいぞ』と。
フェニクスはグレーティエの瞳を見つめ、そう言ったのだった。


その頃、アルシェイドは。
学園から強制連行され、動けないように椅子に縛りつけらていた縄を外されていた。

アルシェイド・ファルバリーズ・ルグレンは、ファルバリーズ公爵家の長男だ。
公の名がつく彼は、6位といえど王位継承権を所有している。
国にとって彼は所謂、スペアだ。
普通の人からすればその考えは非人道的と言わざるを得ないが、大国の王公貴族ならば、その考えは当たり前のことと捉える。
そして、アルシェイド本人もそのことをしっかり理解してはいた。
しかし彼は理解はしても、その通りに動く気など、全く考えていない。
もし、仮にアルシェイドの上の地位にいる兄たちが、何らかの理由で死、あるいは王を継ぐことが不可能な状態になっても、アルシェイドは王などどいう地位に昇る気はこれっぽっちも無い。
アルシェイド本人に、王になる気はさらさら無いが、彼の能力はかなり高く、そんな彼だからか 、権力に固執しない才能ある者たちに人気がある。
ほとんど、自分の力を試したいというような者たちだ。
そして、彼らはアルシェイド本人の安全を何より優先してしまう。
そこにはアルシェイドの意思をも無視することがあり、アルシェイドはそんな彼らに呆れながらも特に強く非難することはなかった。そう、このときまでは。 
アルシェイドは少し前まで、ナグシェルによって学園から遠ざけられ、学園に戻られないように椅子に縛りあげられていた。(この椅子は特別な造りで簡単には壊れない仕組みをしている)
ナグシェルらは、アルシェイドの身を守ることを最優先に、この様な手段をとっていたが、当の本人はその行為自体に怒りを覚えていた。
「お前たち、よくもティエを危険に晒したままにしてくれたな?俺はあの場に残っていても危険であった等とは思っていない。お前たちは俺の実力を見誤りすぎだ。今までは特に実害がなかったから何も言わなかったが、今度、ティエの身に危険が迫るときに俺を遠ざけてみろ?ただで済むと思うなよ?」
アルシェイドは六歳という歳では規格外の実力を有しているが、腕力、体力はまだ子供のそれと何ら変わらない。
ナグシェルらが行ったように、腕力で拘束してしまえば、身動きができない。
但し、アルシェイドが彼らナグシェルらのことを考えずに、本気で抜けようと思えば可能なことではあった。
アルシェイドにとって、ナグシェルらは鬱陶しい存在ではあるが、優秀で貴重な人材であることに代わりはなく、その場の怒りで殺してしまうには惜しい人材でもある。
しかし、アルシェイドとて幼くとも男であり、守りたいものがいることにも代わりはない。
妥協として、彼らを動かし事態の収集をすることで、その時無力であった自分に対する怒りを抑えていた。
アルシェイドがこれほどまでにグレーティエに執着するのには、とある理由がある。
常人では理解することが不可能な理由ではあるが。
彼アルシェイド・ファルバリーズ・ルグレンは物心ついたときから、努力とは無縁の生き方をしていた。
彼は、王位継承権を持っているが、身分は公爵子息なので、王族ではない。
しかし、継承権を有しているので、定期的に王宮に参じ、帝王学を学んでいる。
そして、彼はその時から異才を放っていた。
彼に帝王学を教える教師はころころ変わっている。
その理由は、すぐに教えることが無くなり、自信を喪失させられているからだ。
アルシェイドは覚えが良いだけでなく、一を教われば五十くらいを理解するような頭をしていた。
そんなアルシェイドだからか、心酔するものが現れるのも、必然なのかもしれない。
しかし、なんでも簡単にできてしまうということは、興味が芽生えないということにも繋がることがある。
実際、アルシェイドは世の中は簡単なもので、退屈なものだと感じていた。
退屈でつまらないものだと思っている時に、普通の子供ではないグレーティエに会い、彼は面白いおもちゃを見つけた子供(真実子供である)のように、グレーティエを求め、執着するようになったのだ。
執着される本人にとっては迷惑な話かもしれない。
そう、アルシェイドは思っていても、離す気はさらさらないのだった。
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