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学園編
57話
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『小娘、お前にならば、使役されてやってもいいぞ』
そう、フェニクスが答えると、グレーティエのすぐ近くにいる紫皇からものすごい怒りの感情が伝わってくる。
向けられているのはフェニクスなのに、近くにいるだけで、びりびりするような、凄まじい怒りである。
「鳥野郎。お前、俺のティエと契約したいだと?ふざけるなよ。こいつの契約獣は俺だけでいいんだよ!」
『それを決めるのはお前ではないだろう?単細胞獅子』
「ぶふぉっ」
フェニクスの言葉に、グレーティエは噴き出してしまう。
「おい」
その態度に、怒りを露にしていた紫皇は、その矛先を納め、呆れたような顔でグレーティエを睨む。
先ほどの凄まじい怒りはグレーティエのおかげで、鳴りを潜めたようだ。
グレーティエに紫皇の怒りを鎮める意図はなく、むしろ反射といってもいいほどの行動ではあったが。
「はぁー力抜けちまったよ。ティエ、俺は反対だぜ、こんな鳥野郎がお前の契約獣になるなんて」
言葉通り、脱力感を漂わせながら紫皇はグレーティエにこう言う。
「紫皇、陛下がやれって言ったら、私に逆らう権利なんてない。相手はこの国の最高権力者なんだ。いくら父が宰相で実家が侯爵でも、王様に逆らう権利はないよ」
紫皇の反対意見に、心の底から同意しながらも(ここでの同意はフェニクスと契約すると後々面倒なことになると考えているからであり、決してフェニクスとの契約が嫌というわけではない)、グレーティエは王の命令は絶対だから断る権利はない、そう答える。
確かに、グレーティエの言葉は至極当然のことである。
しかし、紫皇というより、幻獣にはそんなこと関係ない。
上位種に位置する幻獣である紫皇には全く関係なかった。
「俺にとっちゃどうでもいいんだが?」
グレーティエは、たっぷり15秒程の間息を吸い、その倍以上の時間をかけて、ため息を吐いた。
「紫皇、確かにお前には関係ないかもしれないが、私にはこの国の貴族としての責任というものがあるんだ。例え私が年端もいかぬ子供であろうともだ。それに私と契約しているのなら、お前にも私の契約獣としての責任が生じることになるぞ。今からそれでは、先が心配になるが」
「はぁー、ティエが言うなら我慢しますよ」
「決まったようだな。では改めて命じよう。グレーティエ・ファルストーク・ギレストよ、当代ファルーア王ジェイラス・ファルーア・ルクラの名で命ずる。フェニクスと契約せよ」
ジェイラス王は仰々しく、そう命じた。
グレーティエはその仰々しい王の姿を見て、儀礼的なものがあるのだろうと考えた。
家臣の礼である、片膝をつきながら頭を下げる格好になり、(小説で得た知識だ)グレーティエも仰々しく、
「陛下の命、ファルストーク侯爵家第四子、グレーティエ・ファルストーク・ギレストが承りました」
言葉が途切れることもないはっきりとした口調で、一桁の年齢の子供ができるはずがないと思わされるほど、その礼は洗練され、美しいものだった。
王はその礼に、応えるように手をかざし、
頷く。
「それでは早速、契約してもらおうか」
王の言葉により、グレーティエはそれまで張っていた結界を解く。
結界が解かれ、フェニクスは解放された。
グレーティエは、契約を行うためにフェニクスの側に行きます。
しかし、フェニクスは結界から解放されると、
『ふはは!、我のような高貴なものが人間などの下につくわけなかろう!結界から解放されればこちらのものだ!先ほどと同じことができると思うなよ!小娘!』
そう叫び、近くに寄ってきたグレーティエに、攻撃を仕掛けようと突撃してきます。
グレーティエはそのフェニクスの変貌に、一瞬驚きはするが、すぐに臨戦体勢になる。
兵たちも臨戦体勢になってはいたが、フェニクスは迷うこともなく、グレーティエしか見ていなかった。
「押さえろ」
グレーティエはそう叫びながら右手をフェニクスに向け、下に降ろします。
すると、突撃してきたフェニクスはまるで何者かに押さえつけられたかのように、地面(城内なので正確には床)に縫い止められた。
『ぐっ!この!』
フェニクスは渾身の力で足掻きますが、ピクリとも動くことはできなかった。
「君ってプライド高いんだね。私も不本意ではあるけど、お願いだから契約してほしいんだ。じゃないと陛下は問答無用で君のことを殺せって、私に命令しなきゃいけなくなっちゃう。でも私は、こうやって会話をした君を殺すのはいやなんだよ。(動物虐待みたいになるし)」
グレーティエは縫い止められたままのフェニクスに近づき、そう話しかけます。
最後の呟きは空気とともに消えた。
グレーティエの言葉は、淡々として温度のない冷たい口調ですが、その顔は命をとらなくてはいけないかもしれない、そんな恐怖を表す表情をしています。
実際、グレーティエは貴族といえどもまだ子供であり、命のやりとりなどしたこともありません。
怖いと思うのは当然といえば当然でしょう。
それに加え、生来優しい気性をしており、動物好きな部分も相まって、とても辛く感じるのでしょう。
そんな顔をしてしまったグレーティエを見たフェニクスは、萎れた植物のように弱々しく、
『我は単純な力比べに負けたのだ。仕方ないから、我はお前に従う。そのような顔をさせる気はなかった。すまない』
縫い止められて満足に動くこともできない身体を無理やり動かして、直面したことのない恐怖に身震いするグレーティエの顔に嘴を寄せるのだった。
それを聞いたグレーティエは、くしゃっと子供らしく、愛らしいという言葉があう笑顔になり、
「ありがとう」
そう答えるのだった。
そう、フェニクスが答えると、グレーティエのすぐ近くにいる紫皇からものすごい怒りの感情が伝わってくる。
向けられているのはフェニクスなのに、近くにいるだけで、びりびりするような、凄まじい怒りである。
「鳥野郎。お前、俺のティエと契約したいだと?ふざけるなよ。こいつの契約獣は俺だけでいいんだよ!」
『それを決めるのはお前ではないだろう?単細胞獅子』
「ぶふぉっ」
フェニクスの言葉に、グレーティエは噴き出してしまう。
「おい」
その態度に、怒りを露にしていた紫皇は、その矛先を納め、呆れたような顔でグレーティエを睨む。
先ほどの凄まじい怒りはグレーティエのおかげで、鳴りを潜めたようだ。
グレーティエに紫皇の怒りを鎮める意図はなく、むしろ反射といってもいいほどの行動ではあったが。
「はぁー力抜けちまったよ。ティエ、俺は反対だぜ、こんな鳥野郎がお前の契約獣になるなんて」
言葉通り、脱力感を漂わせながら紫皇はグレーティエにこう言う。
「紫皇、陛下がやれって言ったら、私に逆らう権利なんてない。相手はこの国の最高権力者なんだ。いくら父が宰相で実家が侯爵でも、王様に逆らう権利はないよ」
紫皇の反対意見に、心の底から同意しながらも(ここでの同意はフェニクスと契約すると後々面倒なことになると考えているからであり、決してフェニクスとの契約が嫌というわけではない)、グレーティエは王の命令は絶対だから断る権利はない、そう答える。
確かに、グレーティエの言葉は至極当然のことである。
しかし、紫皇というより、幻獣にはそんなこと関係ない。
上位種に位置する幻獣である紫皇には全く関係なかった。
「俺にとっちゃどうでもいいんだが?」
グレーティエは、たっぷり15秒程の間息を吸い、その倍以上の時間をかけて、ため息を吐いた。
「紫皇、確かにお前には関係ないかもしれないが、私にはこの国の貴族としての責任というものがあるんだ。例え私が年端もいかぬ子供であろうともだ。それに私と契約しているのなら、お前にも私の契約獣としての責任が生じることになるぞ。今からそれでは、先が心配になるが」
「はぁー、ティエが言うなら我慢しますよ」
「決まったようだな。では改めて命じよう。グレーティエ・ファルストーク・ギレストよ、当代ファルーア王ジェイラス・ファルーア・ルクラの名で命ずる。フェニクスと契約せよ」
ジェイラス王は仰々しく、そう命じた。
グレーティエはその仰々しい王の姿を見て、儀礼的なものがあるのだろうと考えた。
家臣の礼である、片膝をつきながら頭を下げる格好になり、(小説で得た知識だ)グレーティエも仰々しく、
「陛下の命、ファルストーク侯爵家第四子、グレーティエ・ファルストーク・ギレストが承りました」
言葉が途切れることもないはっきりとした口調で、一桁の年齢の子供ができるはずがないと思わされるほど、その礼は洗練され、美しいものだった。
王はその礼に、応えるように手をかざし、
頷く。
「それでは早速、契約してもらおうか」
王の言葉により、グレーティエはそれまで張っていた結界を解く。
結界が解かれ、フェニクスは解放された。
グレーティエは、契約を行うためにフェニクスの側に行きます。
しかし、フェニクスは結界から解放されると、
『ふはは!、我のような高貴なものが人間などの下につくわけなかろう!結界から解放されればこちらのものだ!先ほどと同じことができると思うなよ!小娘!』
そう叫び、近くに寄ってきたグレーティエに、攻撃を仕掛けようと突撃してきます。
グレーティエはそのフェニクスの変貌に、一瞬驚きはするが、すぐに臨戦体勢になる。
兵たちも臨戦体勢になってはいたが、フェニクスは迷うこともなく、グレーティエしか見ていなかった。
「押さえろ」
グレーティエはそう叫びながら右手をフェニクスに向け、下に降ろします。
すると、突撃してきたフェニクスはまるで何者かに押さえつけられたかのように、地面(城内なので正確には床)に縫い止められた。
『ぐっ!この!』
フェニクスは渾身の力で足掻きますが、ピクリとも動くことはできなかった。
「君ってプライド高いんだね。私も不本意ではあるけど、お願いだから契約してほしいんだ。じゃないと陛下は問答無用で君のことを殺せって、私に命令しなきゃいけなくなっちゃう。でも私は、こうやって会話をした君を殺すのはいやなんだよ。(動物虐待みたいになるし)」
グレーティエは縫い止められたままのフェニクスに近づき、そう話しかけます。
最後の呟きは空気とともに消えた。
グレーティエの言葉は、淡々として温度のない冷たい口調ですが、その顔は命をとらなくてはいけないかもしれない、そんな恐怖を表す表情をしています。
実際、グレーティエは貴族といえどもまだ子供であり、命のやりとりなどしたこともありません。
怖いと思うのは当然といえば当然でしょう。
それに加え、生来優しい気性をしており、動物好きな部分も相まって、とても辛く感じるのでしょう。
そんな顔をしてしまったグレーティエを見たフェニクスは、萎れた植物のように弱々しく、
『我は単純な力比べに負けたのだ。仕方ないから、我はお前に従う。そのような顔をさせる気はなかった。すまない』
縫い止められて満足に動くこともできない身体を無理やり動かして、直面したことのない恐怖に身震いするグレーティエの顔に嘴を寄せるのだった。
それを聞いたグレーティエは、くしゃっと子供らしく、愛らしいという言葉があう笑顔になり、
「ありがとう」
そう答えるのだった。
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