あの世に行ったら追い返された

交渉偏

疫病神の交渉と言う名の脅し

何度もいうようでめんどくさいが、あえてもう一度言おう。意味わからん。
私はそれほど思い残したこともないので、生きかえるのは遠慮したい。というかこの男の言っていることすべてに何故かいやーな予感がする、こういう時の人の感覚は当たることが多いと、相場が決まっている、従ってこの男の言葉に耳を傾けないのが正解だと思う。
だから私の答えは一つだ。
「いや、私は生きかえらなくていい、このまま三途の川を渡って閻魔様の前に行く」
私の答えにマジかという顔をしながら、男はすごい勢いでこう言った。
「いやいや普通この場面はハイ生きかえりたいですと返すところだろ。どう考えても、だいだい  お前まだ成人してもいないか、子供は遠慮なんかするなよ正直に答えろな」
と私を何故か説得しにきた、なんか必死すぎる、この男の必死な顔で説得しようとされると逆に私の嫌な予感が正しいと裏付けられた気がする、断固拒否だな。
私は説得には応じないという顔で同じ回答をした。
「生きかえらなくていい、むしろそういうことは生きかえりたい人に言えばいい私は遠慮するというか嫌だ」
「はあ、お前マジ変わってるまあしゃあないな、じゃあこう言うのはどうだ？お前三途の川を渡ると言うがさっきのおばばとの話ではお前、六文銭を持っていないと言っていたな、ならお前はあの川を渡るためには裸になるかもしくは溺れるのを覚悟で泳ぐという手しかないぜ」
男は私に川を指さしながらこう言った。確かに川を渡るために必要な六文銭を、私は持っていないが、だからと言って私がこの男の言葉に耳を傾けるかは別問題だ。
私はそれなりに泳ぎの自信はあるから、向こう岸に渡るために泳ぐのは別にかまわないと思う。
だから私は別にそれでかまわない。向こう岸まで泳いで行くと言った。
男は私の言葉に呆れ、何度目かのため息を吐いて私に最大級の脅しを投下してきた。
「お前の覚悟は痛いほどに分かった、だが俺もいろいろな理由でお前を死なせるわけにはいかないだよ、あまり良いことじゃないがお前がそういうなら仕方ないお前が無事にあっちの岸に辿り着いたら俺はお前の身柄を地獄の最下層に連れて行く手配をしてやる。お前はまだ子供だがこちらの提案を断るならそれ相応の覚悟を決めて渡れよ」
男はそんな脅しをしてきた、まだ幼気な子供である私に、大体この男にそんな権限があるのか怪しいがこの態度から嘘には感じられない。
地獄の最下層か、確かに脅しにしてはあまり良いものではないな。脅しの域を超えている。
この男の言葉に乗るのも嫌だ、だが地獄の最下層はもっといや、なら仕方がないか。
私は違う意味で覚悟を決め男に聞いた。
「貴殿はなぜ私にそんなに生きていてほしいの？」と