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フェルティングニードル・4
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「それにしても……まるで物語のような出来事ですね」
魔女ヴィオラの言葉にジョゼフィーヌは溜め息を吐く。
「お話なら無責任に楽しむこともできるけれど……実際に目の前でやられては、興醒めですわ。フィールズ子爵家は、あまり知らない家ですけれど」
「……『フィールズ子爵家』?それがそのお嬢さんの家名ですか?」
「ええ。あまり知らない名なので、お父様に伺ってみたの。ごく小さな領地しか持たない、とりたてて目立つところもないおうちだそうだけれど……」
再度物憂げな溜め息を吐くジョゼフィーヌに、魔女は少し考えている様子だったが、問いかけてきたのは意外なことだった。
「お嬢様、学園というのは寮があると聞いておりましたが。お嬢様もそちらに?」
「あら、いいえ。寮はあるのだけれど、入っているのは王都に屋敷を持たない家の子ばかりよ。今はそうね、3分の1くらいかしら、寮に入っているのは。自分の家が王都に無くとも、母親の実家や親族の屋敷に住まわせてもらえばいいのだもの」
裏を返せば、寮に入っているのは、王都に屋敷を持って子どもを住まわせるだけの力も持たない家の子、というわかりやすい事情だ。もっとも数では貴族の大半を占める子爵家男爵家は大概王都に屋敷がない。或いは子どもを預けられるような相手もない、そうした場合は寮に入る。
裕福な子どもと親しくなれば、その家に住み込ませてもらえる場合もあり、ジョゼフィーヌも父から紹介された子爵・男爵の令嬢を侍女として預かっているのだ。
そういう位の低い子女は、上位者に仕えることで将来の仕事や結婚相手など、身の振り方を模索する。よほど勉強が出来るとか魔法に優れているとか、そうした特質がない者は仕える相手を決めるのもなかなか難しい。ましてやまだ親の庇護下にある未成年者だ、その親の指示があればそれに従わざるを得ないのがいろいろ難しいところ。個人の好き嫌いでどうこうできるものでもないのだ。
その辺りを弁えないリリィ・フィールズ子爵令嬢は、既に学園内で浮いた存在になっている。もちろん彼女は寮生で、庇護者はいない。ちやほやしている学生達も、その彼女にきちんと状況を教えてやらないのかと不審がられ自分達が注意されている始末だ。
「そうした諸々を、そのご令嬢はわかっていないのでしょうね。学ぶ気持ちがないのか、他に思うところがあるのかはわかりませんが」
「そう、ねえ……ねえ、魔女ヴィオラ。貴女さえ良ければ、私のお友達に貴女を紹介させてもらえないかしら。皆、婚約者やまとわりつく相手に困っているのよ」
魔女ヴィオラの言葉にジョゼフィーヌは溜め息を吐く。
「お話なら無責任に楽しむこともできるけれど……実際に目の前でやられては、興醒めですわ。フィールズ子爵家は、あまり知らない家ですけれど」
「……『フィールズ子爵家』?それがそのお嬢さんの家名ですか?」
「ええ。あまり知らない名なので、お父様に伺ってみたの。ごく小さな領地しか持たない、とりたてて目立つところもないおうちだそうだけれど……」
再度物憂げな溜め息を吐くジョゼフィーヌに、魔女は少し考えている様子だったが、問いかけてきたのは意外なことだった。
「お嬢様、学園というのは寮があると聞いておりましたが。お嬢様もそちらに?」
「あら、いいえ。寮はあるのだけれど、入っているのは王都に屋敷を持たない家の子ばかりよ。今はそうね、3分の1くらいかしら、寮に入っているのは。自分の家が王都に無くとも、母親の実家や親族の屋敷に住まわせてもらえばいいのだもの」
裏を返せば、寮に入っているのは、王都に屋敷を持って子どもを住まわせるだけの力も持たない家の子、というわかりやすい事情だ。もっとも数では貴族の大半を占める子爵家男爵家は大概王都に屋敷がない。或いは子どもを預けられるような相手もない、そうした場合は寮に入る。
裕福な子どもと親しくなれば、その家に住み込ませてもらえる場合もあり、ジョゼフィーヌも父から紹介された子爵・男爵の令嬢を侍女として預かっているのだ。
そういう位の低い子女は、上位者に仕えることで将来の仕事や結婚相手など、身の振り方を模索する。よほど勉強が出来るとか魔法に優れているとか、そうした特質がない者は仕える相手を決めるのもなかなか難しい。ましてやまだ親の庇護下にある未成年者だ、その親の指示があればそれに従わざるを得ないのがいろいろ難しいところ。個人の好き嫌いでどうこうできるものでもないのだ。
その辺りを弁えないリリィ・フィールズ子爵令嬢は、既に学園内で浮いた存在になっている。もちろん彼女は寮生で、庇護者はいない。ちやほやしている学生達も、その彼女にきちんと状況を教えてやらないのかと不審がられ自分達が注意されている始末だ。
「そうした諸々を、そのご令嬢はわかっていないのでしょうね。学ぶ気持ちがないのか、他に思うところがあるのかはわかりませんが」
「そう、ねえ……ねえ、魔女ヴィオラ。貴女さえ良ければ、私のお友達に貴女を紹介させてもらえないかしら。皆、婚約者やまとわりつく相手に困っているのよ」
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