7 / 33
カブトピン・2
しおりを挟む
森で会った魔女は、ヴィオラを弟子にとることをすぐ了承した。彼女によれば、ヴィオラの錬金術スキル自体はよくあるものだとしても、そう使い方やレベルはかなり貴重だという。
「特にあんたが屋敷で使用人達と使ってたこのピンとかね」
「あ、それは」
ヴィオラが前世の記憶を頼りにスキルを使って創造したそのピンは、前世ならカブトピンと呼ばれていたものだ。一本の針金を曲げて作るそれは、他の素材を必要としない。作りも単純だが細かいので(そもそも全体として小さなものだ)、ある程度のスキルもしくは技術が無ければ制作できない。
「どこから思い付いたのかは聞かないよ。だがあんたには他にも色々タネがありそうだ。こき使ってやるから覚悟おし」
にやにや笑う老婆にヴィオラは深々頭を下げた。
「よろしくお願いします」
家から出た以上、魔女の弟子として生きていくのが一番無難だ。増してどうやら気に入ってもらえた手応えも感じる、ここで食いつかなければどうする。
偽悪的な振る舞いはするものの、魔女は気前が良かった。ヴィオラを引き取ると同時に、元執事とメイド長の老夫妻にも住み込み仕事を斡旋してくれた。
それが魔法街全体の事務職で、魔女や魔法使い達の苦手とするところを埋める人材を探していたのだという。
「まああの二人じゃいつ死ぬかわからん老いぼれだけども、下っ端もつけたし、死ぬまでに仕事を叩き込んでくれりゃあいいさ」
「また師匠、そういうことを……」
魔女や魔法使いは、特殊なスキルの持ち主が多い。調薬や効果の付与、呪いや先見等多種多様だ。
ヴィオラの師匠である魔女が得意とするのは調薬と呪い。共に内容は多岐に渡る。
調薬一つとっても滋養強壮からある種の病を起こさせるもの、気力を増すもの削ぐものや容姿に関わるもの等々。
呪いの方は、薬によらずそれ等を起こさせるものだが、その分効果は曖昧になりがちらしい。
もちろん魔法街の住人の中には、そちらが得意な者もある程度いる。だが色々目をつけられ易いスキルでもあるだけに、それを使うにはちゃんと契約を結ぶべきだということになって、雇われたばかりの老夫婦も重宝された。
「ヴィオラ、あんた5歳のスキルの儀は受けたのかい?」
「?『スキルの儀』ですか?……心当たりがないです」
「……マリサが言ってたが、あんたの親もだいぶイカれてるねえ」
マリサは元メイド長の名で、その連れ合いはヨゼフという。今やどちらも魔法街に無くてはならない人物だ。
『スキルの儀』は子どもの持つスキルを調べる儀式だ。通常5歳で神殿に行き、スキル解析のスキルを持つ神官に調べてもらう。
しかしヴィオラはそれを受けた記憶がない。おそらくリリィもだろう。
スキルを調べるということは、問題になりそうなスキルを発見したら矯正や監視されるということだ。
「特にあんたが屋敷で使用人達と使ってたこのピンとかね」
「あ、それは」
ヴィオラが前世の記憶を頼りにスキルを使って創造したそのピンは、前世ならカブトピンと呼ばれていたものだ。一本の針金を曲げて作るそれは、他の素材を必要としない。作りも単純だが細かいので(そもそも全体として小さなものだ)、ある程度のスキルもしくは技術が無ければ制作できない。
「どこから思い付いたのかは聞かないよ。だがあんたには他にも色々タネがありそうだ。こき使ってやるから覚悟おし」
にやにや笑う老婆にヴィオラは深々頭を下げた。
「よろしくお願いします」
家から出た以上、魔女の弟子として生きていくのが一番無難だ。増してどうやら気に入ってもらえた手応えも感じる、ここで食いつかなければどうする。
偽悪的な振る舞いはするものの、魔女は気前が良かった。ヴィオラを引き取ると同時に、元執事とメイド長の老夫妻にも住み込み仕事を斡旋してくれた。
それが魔法街全体の事務職で、魔女や魔法使い達の苦手とするところを埋める人材を探していたのだという。
「まああの二人じゃいつ死ぬかわからん老いぼれだけども、下っ端もつけたし、死ぬまでに仕事を叩き込んでくれりゃあいいさ」
「また師匠、そういうことを……」
魔女や魔法使いは、特殊なスキルの持ち主が多い。調薬や効果の付与、呪いや先見等多種多様だ。
ヴィオラの師匠である魔女が得意とするのは調薬と呪い。共に内容は多岐に渡る。
調薬一つとっても滋養強壮からある種の病を起こさせるもの、気力を増すもの削ぐものや容姿に関わるもの等々。
呪いの方は、薬によらずそれ等を起こさせるものだが、その分効果は曖昧になりがちらしい。
もちろん魔法街の住人の中には、そちらが得意な者もある程度いる。だが色々目をつけられ易いスキルでもあるだけに、それを使うにはちゃんと契約を結ぶべきだということになって、雇われたばかりの老夫婦も重宝された。
「ヴィオラ、あんた5歳のスキルの儀は受けたのかい?」
「?『スキルの儀』ですか?……心当たりがないです」
「……マリサが言ってたが、あんたの親もだいぶイカれてるねえ」
マリサは元メイド長の名で、その連れ合いはヨゼフという。今やどちらも魔法街に無くてはならない人物だ。
『スキルの儀』は子どもの持つスキルを調べる儀式だ。通常5歳で神殿に行き、スキル解析のスキルを持つ神官に調べてもらう。
しかしヴィオラはそれを受けた記憶がない。おそらくリリィもだろう。
スキルを調べるということは、問題になりそうなスキルを発見したら矯正や監視されるということだ。
3
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~
冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。
「道路やばくない? 整備しよ」
「孤児院とか作ったら?」
「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」
貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。
不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。
孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。
元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち――
濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。
気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。
R8.1.20 投稿開始
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる