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何に重点を置こうか
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「ふむ。……皆、私はちょっと団長とお話ししてきますので、こちらをよろしくお願いします」
「はぁい」
マリウスは他の魔法使い達に言い置いて騎士団長を部屋の外へ連れ出した。適当な別の部屋に入る。
「それで?どこからそんな話が?」
改めて向かい合うと、今までのどこかとぼけた人の良さそうな雰囲気は払拭され、むしろ玲悧な印象が強い。
騎士団長は一つ溜息を吐いて応じた。
「私に直接話を持ち込んできたのは、騎士団の若い連中ですが……おそらくは息子か、その腰巾着どもにそそのかされたのでしょうな」
騎士団長は実はマリウスとの付き合いはそこそこ長い。この一見温厚で人畜無害に見える魔法使いが、実はなかなかに腹黒く敵に回すと厄介な男であることも承知済みだ。
「ではどうされます?正直言ってまだそれほど量は作れないので、そういう意味でも騎士団に回すのは難しいですよ」
決定権をこちらに丸投げにしているようでいて、その問に対する答えで相手を測っているところが怖い。大人しそうな彼を侮って追い落とされた者を団長は幾度となく見てきた。これはこれで、マリウスの処世術なのだ。かなり容赦ないが。
「何、騎士団も今すぐという訳ではない。……少し様子見しよう。急かす者は、却って怪しいな」
もっとも団長も、そのマリウスの状況を理解できる程度には彼を……そして彼を取り巻いていた環境を知っている。彼が一見大人しそうな擬態を身につけたのも、故あってのことだ。
「では、そちらの炙りだしはお任せしましょう。……子ども達にも、困ったものだ」
「色々と、考え違いをしているようですな」
「……そんなことがあったんですか」
「全く、ワガママなお子様で困るのよ」
紗江は研究室の一角で、先日起こったもめ事の話を聞かされていた。
魔法使い達曰く『甘やかされたワガママなお子様』である騎士団長の息子が、魔法使い達の研究成果に対し「そんな穢らわしいものを騎士団に持ち込むな」と声を荒げたらしく、彼等を怒らせた。王城の職員食堂には少しずつこの新しい料理を持ち込んでいるが、騎士団の食堂に導入する予定はないと通告したところ、騎士団長直々やってきた、ということらしい。
その魔法使い達の情報なので多分に主観が入っているが、今回もめた騎士団長の子息は今までにも何かともめ事の多い人間らしい。
騎士団長と言えばそれなりに権力を有し王城では一目置かれる人物であるが。この息子の方は剣の腕はそれなりに立つものの人の上に立つ技量はないと見なされ、ずっと一介の騎士のまま。既に二十代も半ばで、他の同期は小隊を率いたり地方で中隊以上を任されたりしているが、彼に限っては父の監視下に置かれた状態だ。
ちなみに騎士団長には他にも息子がおり、こちらは順当に功績を積んでいることから、後継者はこちらの弟だろう。
「ま、あの男はバルディログ殿下のオトモダチだからなー。それだけで使えないって良くわかるよ」
「そ、そういうものなんですか?」
「はぁい」
マリウスは他の魔法使い達に言い置いて騎士団長を部屋の外へ連れ出した。適当な別の部屋に入る。
「それで?どこからそんな話が?」
改めて向かい合うと、今までのどこかとぼけた人の良さそうな雰囲気は払拭され、むしろ玲悧な印象が強い。
騎士団長は一つ溜息を吐いて応じた。
「私に直接話を持ち込んできたのは、騎士団の若い連中ですが……おそらくは息子か、その腰巾着どもにそそのかされたのでしょうな」
騎士団長は実はマリウスとの付き合いはそこそこ長い。この一見温厚で人畜無害に見える魔法使いが、実はなかなかに腹黒く敵に回すと厄介な男であることも承知済みだ。
「ではどうされます?正直言ってまだそれほど量は作れないので、そういう意味でも騎士団に回すのは難しいですよ」
決定権をこちらに丸投げにしているようでいて、その問に対する答えで相手を測っているところが怖い。大人しそうな彼を侮って追い落とされた者を団長は幾度となく見てきた。これはこれで、マリウスの処世術なのだ。かなり容赦ないが。
「何、騎士団も今すぐという訳ではない。……少し様子見しよう。急かす者は、却って怪しいな」
もっとも団長も、そのマリウスの状況を理解できる程度には彼を……そして彼を取り巻いていた環境を知っている。彼が一見大人しそうな擬態を身につけたのも、故あってのことだ。
「では、そちらの炙りだしはお任せしましょう。……子ども達にも、困ったものだ」
「色々と、考え違いをしているようですな」
「……そんなことがあったんですか」
「全く、ワガママなお子様で困るのよ」
紗江は研究室の一角で、先日起こったもめ事の話を聞かされていた。
魔法使い達曰く『甘やかされたワガママなお子様』である騎士団長の息子が、魔法使い達の研究成果に対し「そんな穢らわしいものを騎士団に持ち込むな」と声を荒げたらしく、彼等を怒らせた。王城の職員食堂には少しずつこの新しい料理を持ち込んでいるが、騎士団の食堂に導入する予定はないと通告したところ、騎士団長直々やってきた、ということらしい。
その魔法使い達の情報なので多分に主観が入っているが、今回もめた騎士団長の子息は今までにも何かともめ事の多い人間らしい。
騎士団長と言えばそれなりに権力を有し王城では一目置かれる人物であるが。この息子の方は剣の腕はそれなりに立つものの人の上に立つ技量はないと見なされ、ずっと一介の騎士のまま。既に二十代も半ばで、他の同期は小隊を率いたり地方で中隊以上を任されたりしているが、彼に限っては父の監視下に置かれた状態だ。
ちなみに騎士団長には他にも息子がおり、こちらは順当に功績を積んでいることから、後継者はこちらの弟だろう。
「ま、あの男はバルディログ殿下のオトモダチだからなー。それだけで使えないって良くわかるよ」
「そ、そういうものなんですか?」
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