巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと

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この世界で

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「色々お世話になりましたわ」
リリの姉という女性にも初めて会った。
貴族令嬢と言われて予想するタイプそのものの、上品で淑やかな美女だ。ドレスも派手ではなく、落ち着いた……しかし高価たかそうなものを嫌みでなく着こなしている。
「えーと、『お世話』と言われましても。特に何も、していないんですが……」
「あら、本当に謙虚な方」
コロコロと笑い声さえ品がある。リリも細かい仕草とかが上品な印象はあったが、姉は更に上だ。
「ですが確かにそうですわね。……実はわたくし、婚約者がおりましたの」
「は、はい?」
彼女、ラーラが語るには。
彼女には幼い頃からの婚約者がいたという。それなりの身分の、年の近い異性。家同士の話し合いで決められただけの相手だが、子どもの頃から親交はあった。だが彼は野心家で、ラーラと婚姻することで得られる地位にあきたらず、更に高い地位と権力を求めていた。そのこと自体は構わないとラーラは言う。
 貴族同士の政略結婚は、あくまで家同士のつながりで、個人の意思が介在する必要はない。政略結婚も、国や時代によって求める内容は変遷する、その時々で柔軟に対応すれば良いと考えるラーラに対し、婚約者はそもそも彼女が相手では自分の能力が十全に発揮できぬと苛立っていたらしい。
「そんな程度で発揮できない能力なら、その程度のことでしょうに」
相変わらず上品に笑うラーラだが、腹に据えかねていたらしい。当の婚約者が何事か企んでいるのを承知で内密に調査させていたという。その結果、異世界からの『聖女』の召喚を目論んでいることをわかっていて放置していた、と。
「ですから、サエ、貴女にはご迷惑おかけしました。リリはじめ、私どもも貴女の味方として、出来る限り協力させていただきますわ」
「あ、ああ……あの、最初に会った人、ですか……」
もうずいぶん前のような気がする。この世界に落ちてきた天使を『聖女』として選んだあの男が、ラーラのいう婚約者なのだろう。
「『聖女』に仕えるので婚約を破棄する、と仰ってね。遠慮なく、縁を切らせていただいたの。何でも今後は、『聖女』様と共に魔境で世界の歪みを正すのだとか」
「へぇー」
紗江は呑気に感心しただけで済ませたが、実は彼等の扱いは殆ど流刑に近い。人里離れた不便で危険な土地に、限られた者だけが魔物の襲来に怯えながら暮らすことになり、『聖女』に付き従うと明言したバルディログ及びその腰巾着達はそこから出ることも叶わなくなる。もちろん『聖女』天使アンジュも同様だ。
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