婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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王太后と国王夫妻、頭を抱える

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何故なにゆえそのような暴言を吐いたのやら」
見た目は質素ながら高級な素材を潤沢に使って作られた、実は最高品質のソファにもたれて王太后は呻く。その姿は一時に十も歳をとったように見えた。
「……ハーリット侯爵は、確か先代の娘婿でした」
それに固い表情で応じたのはその息子である国王だった。
「元は、隣国の出身ではなかったかと」
「……なればまだ、わからぬ話ではない、が」
その説明に王太后は苦い顔のまま頷く。そこへ王妃が言葉を添えた。
「更に言えば元々侯爵家の、夫人はもう何年も病気だとかで表に出てはおりません。私ももう何年もお会いした記憶がございませぬ」
「もう一人の娘がいるのではなかったか?」
貴族女性に関しては、王妃の方に情報が集まる。ただそれによれば、ハーリット侯爵家の噂は芳しくない。
「ノリエッタ嬢は侯爵が愛人ともうけた庶子だそうです。他に子どもはありません、その娘と養女に迎えたセイラ嬢のみ」
「ですから!あの魔女ではなくノリエッタを妻にすれば良いではないですか!」
深刻な大人達の会話についていけず黙り込んでいたフィリシウス王子が声を張り上げる。それに返されたのは祖母と父の失望したような冷ややかな目線と、母の更に冷めきった声音だった。
「あなたがどうしてもその娘と添い遂げたいのなら、王族の籍を捨てて侯爵家に婿入りなさい。ただしその場合、王家から援助はしませんし、離婚も許しません」
その口調より先に言われた内容を理解して彼の表情がぱっと輝く。
この末っ子の王子は、他の兄姉とは歳が離れている。また実に可愛らしい容姿もあって幼い頃からたいそう甘やかされて育った。さすがに両親始め周囲も危機感を抱いて最近は教育を厳しく(それでも普通並み)したのだが、今度はそれを厭ってサボりがちになる。
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「ありがとうございます、母上!」
「それと、『魔女』に対する不適切な発言についてはきちんとお祖母様にお詫びなさい」
「……は?」
喜色満面で礼を言う息子に、王妃はごく事務的に返す。きょとん、とした彼に父親である国王が深々と溜め息を吐いた。
「母上……おまえのお祖母様が『魔女』であることさえ忘れておるのか、フィリシウス」
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