婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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魔女令嬢と森の守護者 2

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「全くあの王子ときたら、考え無しにも程がある」
「何を今更。最初からわかりきっていたことでしょう」
フォレストの言った通り、森の奥に建つ小さな小屋は清潔に片付いてずっと無人だったようには見えない。
陽当たりの良い広場の一画に、岩壁を背にして建つその小屋はセイラが幼い頃いた場所だ。物心つくかどうかのうちからこの森で暮らしていた彼女の側には、常にこの『守護者』がいた。
「とりあえずセイラもしばらくは休むといい。『国母の魔女』も人使いが荒いな」
「あの方は人を動かす術を心得てらっしゃるもの」
『国母の魔女』はこの国に希に生まれる偉大な魔女だ。存在するだけで国土を護るという守護者。個人としての能力はさておき、そうした存在が確かに在る。必ず高い地位を持つ貴族家に生まれ、王室に嫁ぐ運命さだめという。
現在の王太后が、己れの宿命について語ることはまずない。若い頃ならいざ知らず、夫の前王無き後は息子の現国王を支え国内の安寧を第一に考えている。
それはある意味で個人の意思や尊厳を置き去りにすることもあるが、彼女はその意味を良く弁えている。だからこそセイラも、『人の一生の間だけ、この国に力を貸してほしい』という王太后の要請を容れた。
魔女は寿命も個人差が激しい。ヒトの胎から『魔女』として生まれた場合は普通の人間よりは長いという程度が殆どだが、最初から『魔女』として在る者はとても長いのが通例だという。セイラもその辺りの自覚があるからこそ、彼女の頼みを聞いたのだから。
言ってしまえば、人より寿命が長いのだから、ちょっと時間を無駄にするくらいはしてもいいか、と思ったのだ。その辺は魔女同士の連帯感というものもある。彼女なりに『国母の魔女』には敬意を抱いてもいた。
もっとも甘やかされた王子の世話をする気は端からなかった。婚姻を結んでもそれはあくまで政略結婚。極論、『魔女の森』を含む侯爵領の統治さえ邪魔されねば構わなかったのだ。『魔女』のセイラでは彼の子を孕むことが出来たかもわからない、他に愛人を持ってもらうのもいいだろう、子どもが出来たらそれはその時の話、という程度の判断。
「王子には元々の侯爵領を治めてもらうそうよ。しばらくは侯爵夫人が指導について」
「……あの根性無しにそんな技量があるのか」
「もちろん他にも補佐役がいらっしゃいます。……実質そちらに引き継ぐことになるのでは?」
フィリシウス王子に領地経営できる能力がないことはセイラも否定しない。一応教育は受けていたはずだが、それが疑わしいレベルなのだ。
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