婚約破棄された魔女令嬢

あきづきみなと

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元王子は動揺する

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「フィル、どうして私達が王都を出ていかなきゃならないの?」
目に涙をいっぱい溜めて、腕に取りすがる少女はとても愛らしい。少なくともすがられているフィリシウス本人にとっては、唯一この手に残った宝物だと言えよう。
「気を落とすことはない、ノリエッタ。王都は煩い連中も多い、しばらく領地でゆっくりして、また戻ればいい」
彼の言葉にノリエッタは不承不承頷く。
実際、彼等が王都に戻るには国王夫妻に加え王太后の許可が必要なので、いつになるやらわからない。だが今の王都では彼等に冷ややかな目を向ける者も思っていたより遙かに多く、ノリエッタが望むような夜会だの観劇だのに参加すると遠巻きにひそひそやられる上、誰もまともに挨拶さえしてこない。これが甘やかされて育った王子様には結構な苦痛だった。
「それよりもノリエッタ、領地のことを教えてくれないか」
だったらいっそのこと、言われるまま大人しく領地に引きこもり、その発展に寄与することで両親達の怒りを解こうと考えたのだが。
「……領地、って……侯爵家のなら、ほんとに田舎よ、何の面白味もないし年寄りばっかで嫌な連中しかいないんだから」
ぷんと頬を膨らませてそっぽを向くノリエッタは可愛らしいが、思ってもみない発言にフィリシウスは目を白黒させた。
貴族の子女は幼い頃は領地で育てられる者が多い。そうすることで帰属意識を高め、思い入れを持たせる。それが将来国に対する忠誠心につながると考えられているからだ。実際、己れの領地を誇る者はひいては国を誇ることも多く、方針としては間違っていないのだろう。
フィリシウスは友人が少ないが(彼の側近になっても利が少ないと、親が望まなかったため)、その数少ない友人達や彼等の話だと、皆それぞれに先祖から受け継いだ領地を大切にし、誇っていた。あまり誇る程取り柄のない土地だという者も、いつか自分の手で栄えさせたいと夢を語るように。
フィリシウスは既に臣下に下ったとは言え、この国の王族だった。この国というそれ自体に対する愛着はあり、皆の領地への思い入れがそれと同様であろうと理解していた。だからこそ愛する少女の意外な発言が上手く呑み込めない。
「ノリエッタは……実家の、侯爵領のことが嫌いなのか?」
「当たり前じゃない。ほんっとにつまんない田舎なのよ、ドレスもお菓子も売ってないし、何であんな処に行かなきゃいけないの?」
更に拗ねる彼女の、こういうところが問題なのかとようやく両親や祖母の危惧を理解する(ほんの一端だが)。
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