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《第一話a》あの日
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僕はいつも通り学校から帰宅していた。部活終わりなのでもう外は暗く、人通りも少ない。
僕が住んでいる街は住民の平均年齢が七十歳ぐらいであることからあまり活発でなく常に静かだ。また、街自体が古く街灯も家の外壁も壊れ、おそらく政治家の選挙ポスターであっただろうそれも今や何党の誰のものなのか、区別は不可能だ。友達を家に呼んだときには「昼間は日当たりが良くて趣のある感じが日本らしいけど、夜になると逆にそれが不気味でちょっと嫌」と言われ、家を訪れる宅配会社には「引っ越しされないのですか」と聞かれるほどだ。まあ、否定はしない。確かにそれぐらいに古い。しかし、僕はその不気味な部分もこの街の特徴だと考えているし、僕自身は別に嫌いじゃない。どちらかといえば好きだ。そもそも僕はうるさい都会があまり好きではないし、近所付き合いというのも無い方が嬉しい。
夕飯時になるとこのあたりはどの家も美味しそうな匂いを発し、帰る僕のお腹をことごとく空かせていく。最近ではその匂いでその家の夕飯が何かを当てられるようになるという変な特技が身についてしまった。例えば、今通りかかったこの赤い屋根の家はカレー、向かいの緑の屋根の家は肉じゃが、その二つ隣の家はステーキだ。
そんなことを考えながら僕は道の突き当たりにある運営しているかも謎な駄菓子屋を左に曲がり少し歩いて自宅についた。普段なら他の家と同じように僕の家も夕飯の匂いがするわけだが今日はしない。なぜなら今日の僕の夕飯は僕が今左手に持っているこのビニール袋のコンビニ飯だからだ。実は今日母が用事で家に帰る時間が深夜を回ることから夕飯を買ってくる必要性があることを伝えられていた。母のご飯が好きな僕からすると残念だが「コンビニ飯」というのもなかなか魅力的なサウンドだ。
ブレザーのポケットから家の鍵を取り出し鍵穴に挿す。ガチャッという音とともに空いたドアを引いて開け家に入る。普段なら母が家で夕飯を作っている時間なので明かりがリビングの方から漏れているが今日はいないのでもちろん暗い。手探りで玄関の照明をつけるためのスイッチを探しそれっぽいものを押す。すると眩しい光が辺りを照らした。
「ただいま」
誰もいないが癖でそう言い、靴を脱ぎリビングに向かう。そこもやはり人がいないので暗く先程と同じく明かりを点ける。そのままソファに座り込み今日も疲れたと思いながらテレビをつけようとリモコンに手を伸ばしふと気がつく。机の上に飲み残しが入ったままのコップがあった。
「あれ、めずらしいなどんなに忙しくても絶対綺麗にしていくのに忘れてる」
母はものすごく綺麗好きで掃除も二日に一度していて食器はすぐにシンクで洗い、ノートやペンなども出ていればすぐに片付ける。そんな母の性格は忙しく時間が押している時でさえ発動しコップを置き去りにしているところを見るなど初めてに近しいほどだ。
驚きながらもコップに跡が付いてしまうと母は言うだろうと思いコップを持って台所に向かった。その時僕はテレビでやっていた音楽番組に気をとられていて足元に注意していなかった。コップを持ったまま目はテレビに釘付け状態、そんな状態で歩けば、人は転ぶ。案の定なにかにつまずき転んでしまった。
「うわっ」
ドテと床に倒れた僕はコップを落としてしまい中身がこぼれてしまったことに慌てた。
「よりにもよってカーペットはないでしょ。どうしよう、かあさんになんて言おう、、、」
確実に小言をもらうと確信していたため、ため息を吐いた。
僕はその事柄すべての元凶であるつまずいた「それ」に気を留めずそのまま立とうとした。そして足元に目向けたとき僕は「それ」の正体に体が凍てついた。
僕が住んでいる街は住民の平均年齢が七十歳ぐらいであることからあまり活発でなく常に静かだ。また、街自体が古く街灯も家の外壁も壊れ、おそらく政治家の選挙ポスターであっただろうそれも今や何党の誰のものなのか、区別は不可能だ。友達を家に呼んだときには「昼間は日当たりが良くて趣のある感じが日本らしいけど、夜になると逆にそれが不気味でちょっと嫌」と言われ、家を訪れる宅配会社には「引っ越しされないのですか」と聞かれるほどだ。まあ、否定はしない。確かにそれぐらいに古い。しかし、僕はその不気味な部分もこの街の特徴だと考えているし、僕自身は別に嫌いじゃない。どちらかといえば好きだ。そもそも僕はうるさい都会があまり好きではないし、近所付き合いというのも無い方が嬉しい。
夕飯時になるとこのあたりはどの家も美味しそうな匂いを発し、帰る僕のお腹をことごとく空かせていく。最近ではその匂いでその家の夕飯が何かを当てられるようになるという変な特技が身についてしまった。例えば、今通りかかったこの赤い屋根の家はカレー、向かいの緑の屋根の家は肉じゃが、その二つ隣の家はステーキだ。
そんなことを考えながら僕は道の突き当たりにある運営しているかも謎な駄菓子屋を左に曲がり少し歩いて自宅についた。普段なら他の家と同じように僕の家も夕飯の匂いがするわけだが今日はしない。なぜなら今日の僕の夕飯は僕が今左手に持っているこのビニール袋のコンビニ飯だからだ。実は今日母が用事で家に帰る時間が深夜を回ることから夕飯を買ってくる必要性があることを伝えられていた。母のご飯が好きな僕からすると残念だが「コンビニ飯」というのもなかなか魅力的なサウンドだ。
ブレザーのポケットから家の鍵を取り出し鍵穴に挿す。ガチャッという音とともに空いたドアを引いて開け家に入る。普段なら母が家で夕飯を作っている時間なので明かりがリビングの方から漏れているが今日はいないのでもちろん暗い。手探りで玄関の照明をつけるためのスイッチを探しそれっぽいものを押す。すると眩しい光が辺りを照らした。
「ただいま」
誰もいないが癖でそう言い、靴を脱ぎリビングに向かう。そこもやはり人がいないので暗く先程と同じく明かりを点ける。そのままソファに座り込み今日も疲れたと思いながらテレビをつけようとリモコンに手を伸ばしふと気がつく。机の上に飲み残しが入ったままのコップがあった。
「あれ、めずらしいなどんなに忙しくても絶対綺麗にしていくのに忘れてる」
母はものすごく綺麗好きで掃除も二日に一度していて食器はすぐにシンクで洗い、ノートやペンなども出ていればすぐに片付ける。そんな母の性格は忙しく時間が押している時でさえ発動しコップを置き去りにしているところを見るなど初めてに近しいほどだ。
驚きながらもコップに跡が付いてしまうと母は言うだろうと思いコップを持って台所に向かった。その時僕はテレビでやっていた音楽番組に気をとられていて足元に注意していなかった。コップを持ったまま目はテレビに釘付け状態、そんな状態で歩けば、人は転ぶ。案の定なにかにつまずき転んでしまった。
「うわっ」
ドテと床に倒れた僕はコップを落としてしまい中身がこぼれてしまったことに慌てた。
「よりにもよってカーペットはないでしょ。どうしよう、かあさんになんて言おう、、、」
確実に小言をもらうと確信していたため、ため息を吐いた。
僕はその事柄すべての元凶であるつまずいた「それ」に気を留めずそのまま立とうとした。そして足元に目向けたとき僕は「それ」の正体に体が凍てついた。
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