転生したら55歳の中年オバさんでした

綾羽 ミカ

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第二十話 オバさん夜の道玄坂でナンパされるの巻

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私は一人、道玄坂を下りながら、ぼんやりとした頭で考えた。今日は一人で食べたラーメンとギョーザ。そして、レバニラ炒めまで追加したのだ。

「大人なんだから、こんな夜中に食べすぎちゃダメよね」

 自分で自分に言い聞かせながら、私は大きくため息をついた。オバさんになると、こんなにも自分に言い聞かせることが増えるものなのか。

「ねぇ、その光る粉帯、めちゃくちゃ素敵ですね」

 いきなり声をかけられた。しかも、すごく輝いた笑顔の年下の男性に。私はおもわず身体を小さくするようにして、返事に迷った。

「あっ、そのリップもめちゃくちゃおしゃれですね。ぜひぜひ、こんな美しい方とお話ししてみたい。ご一緒にドリンクでもいかがですか」

 なんだこれ。私はナンパされているのか。そんな考えが浮かんできたが、その一方で、こんな年でもこんなことがあるんだな、とこの年で始めての体験に万感を抱いた。



 しかし、その男は一緒に歩いているうちに、するっと私を渋谷の裏街に導いていった。不思議に思いながら付いていくと、そこにあったのは、魅惑的な光を放つホストクラブの大きなドアだった。

「ここ、僕の店なんです。まぁまぁ、突っ立してないで一杯だけでも」

 私は気づいた。この男は、ホストなのだと。しかし、もうこの導き方に抱く対抗感よりも、「渋谷のホストってどんなところなんだろう」という興味が勝っていた。
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