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第二十一話 オバさん完全にカモになるの巻
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踏み込んでしまったホストクラブ。光るシャンデリアに悔いが悲驚の中によぎる。しかし、この場所に来た代わりに、私は新しい体験をすることにした。
「さて、オバさん、過去に任意の知名人と付き合ったことあるのかな」
年下のホスト、タクヤが言う。イケメンで、花魚のような笑顔。しかし、その表情には何かためしているような感じもある。
「そんなこと聞いてどうするのよ」
私は深いため息をついた。ホストクラブという場所は、このような居心地を尽くすような質問を風にのせるものなのか。
「まぁまぁ、ここはそんなカタクチを想像しただけでも楽しめる場所さ」
私の回答に笑顔で対応するタクヤ。そして、隣のテーブルから別のホストが言った。
「ねぇねぇ、そんな私のことより、オバさんのファーストキスの思い出って何なのか聞いてみたいな」
この夜は、まだ始まったばかりだった。ホストクラブの魅惑的な光と音楽の中、私は自分を失ったように感じていた。テーブルに座ると、相手のホストが日常の世界から离れた情熱の眺めをしているのがわかる。
「オバさん、今日は特別な夜にしませんか」
金魚色のバラに光るシャンパンの水滴を充たすグラス。少し酔いが固まりかけた身体を動かせ、グラスをまた黒髪の男に渡す。
「特別って…私はただ…」
言葉がかすれるほどに心臓が高まる。この気持ちは何なのだろうか。夜の音楽に浸り、私の光るリップに微笑をたたえながら近づいてきた男。
「私、いいんだろうか…」
オバさんになってからの心霊を手放し、まっすぐ相手の眼光をたどる。なにかが変わっていく気がした。
私は気づいていなかった。一部のホストたちが、最初から私を機にしていたということに。
「お客さん、そのシャンパンは特別なものなんですよ。この夜のために、あなただけに…」
ホストの一人、タクヤはあまりにもすむずしい声を出し、素敵な笑顔で、この夜の最高のひとときを送ろうと誘いかけた。
しかし、その時私は何も疑わず、ただただ、この夜を楽しもうとしていた。もう、何も考えずに。
「じゃあ、すこしだけ…」
そう言いながら私はシャンパンボタンに手をかけた。その瞬間、ホストたちの視線に、誰も気づかないほどの凶さが混じり込んでいた。
「お客さん、バッチリ楽しんでいってくださいね」
その言葉に、私は気付くべきだった。これが私の心を大きく揺るがす出来事の始まりだったことを。
その夜、私はおごそかなシャンパンが置かれたテーブルの上にいた。ホストたちの気高い声と、駄かな光が、私を狂おしいほどの夜の海に浸れさせていた。
「お客さん、次は特別なシャンパンがおすすめですよ」
ハクマイルのような白いドレスシャツを着たホストが、笑顔を微笑んでいる。この気持ちは何なんだろう。憤りが湧いてくるはずなのに、それが一緒に胃の裏にスッと浸み込んで、私はただ自分を吸い込むように手を上げた。
「いいわよ。私にこんな日が来るなんて…」
次のボトルがあいさつされ、漬み込んでいく。私は気づかなかった。ある意味で、この夜のメインディッシュは、私のために用意されていたのだ。
「さて、オバさん、過去に任意の知名人と付き合ったことあるのかな」
年下のホスト、タクヤが言う。イケメンで、花魚のような笑顔。しかし、その表情には何かためしているような感じもある。
「そんなこと聞いてどうするのよ」
私は深いため息をついた。ホストクラブという場所は、このような居心地を尽くすような質問を風にのせるものなのか。
「まぁまぁ、ここはそんなカタクチを想像しただけでも楽しめる場所さ」
私の回答に笑顔で対応するタクヤ。そして、隣のテーブルから別のホストが言った。
「ねぇねぇ、そんな私のことより、オバさんのファーストキスの思い出って何なのか聞いてみたいな」
この夜は、まだ始まったばかりだった。ホストクラブの魅惑的な光と音楽の中、私は自分を失ったように感じていた。テーブルに座ると、相手のホストが日常の世界から离れた情熱の眺めをしているのがわかる。
「オバさん、今日は特別な夜にしませんか」
金魚色のバラに光るシャンパンの水滴を充たすグラス。少し酔いが固まりかけた身体を動かせ、グラスをまた黒髪の男に渡す。
「特別って…私はただ…」
言葉がかすれるほどに心臓が高まる。この気持ちは何なのだろうか。夜の音楽に浸り、私の光るリップに微笑をたたえながら近づいてきた男。
「私、いいんだろうか…」
オバさんになってからの心霊を手放し、まっすぐ相手の眼光をたどる。なにかが変わっていく気がした。
私は気づいていなかった。一部のホストたちが、最初から私を機にしていたということに。
「お客さん、そのシャンパンは特別なものなんですよ。この夜のために、あなただけに…」
ホストの一人、タクヤはあまりにもすむずしい声を出し、素敵な笑顔で、この夜の最高のひとときを送ろうと誘いかけた。
しかし、その時私は何も疑わず、ただただ、この夜を楽しもうとしていた。もう、何も考えずに。
「じゃあ、すこしだけ…」
そう言いながら私はシャンパンボタンに手をかけた。その瞬間、ホストたちの視線に、誰も気づかないほどの凶さが混じり込んでいた。
「お客さん、バッチリ楽しんでいってくださいね」
その言葉に、私は気付くべきだった。これが私の心を大きく揺るがす出来事の始まりだったことを。
その夜、私はおごそかなシャンパンが置かれたテーブルの上にいた。ホストたちの気高い声と、駄かな光が、私を狂おしいほどの夜の海に浸れさせていた。
「お客さん、次は特別なシャンパンがおすすめですよ」
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「いいわよ。私にこんな日が来るなんて…」
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