気がつけば、おマサさん

くさなぎ秋良

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おマサさん

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 杉山家の話をする上で欠かせない存在が、夫の父方の祖母です。

 彼女は大正2年生まれで、毒舌かつ豪胆な女性でした。戦争を生き抜き、5人の子を育て上げ、嫁や娘たちに代わって何人もの孫の育児を一手に引き受けた猛者であります。
 残念ながら十数年前に他界しているので、私は写真の彼女しか知りません。

 このエッセイでは、彼女を『おマサさん』と呼んでいきたいと思います。

 何故『おマサさん』なのか。それは、近所の子どもたちから『マサイ族』というあだ名で呼ばれていたから。

 なんでもおマサさん、夏場は上半身裸で胸をぺろんと出して過ごしていたそう。
 ある夏の日、小学生だった夫のもとに、近所の友人たちが遊びにきました。出迎えたのは胸を丸出しにしたおマサさん。

「おう、あがっていけ」

 そう言って手招きした祖母を見た友人たちは、「お前のばあちゃん、すげえな! マサイ族かよ」と驚き、それ以来、彼女を『マサイ族』と呼ぶようになったのでした。

 マサイ族の名誉のために書いておくと、彼らはとても誇り高い民族です。きちんと服で身を包み、綺麗なアクセサリーを身につけます。むしろ露出が多いと下品だと思われたりするそうです。

 小学生の脳裏に浮かんだのはきっとテレビなどで観た他の民族だと思われます。マサイ族の方にはとんだ失礼な話ですが、小学生の語彙力やイメージによる結果でしょう。

 しかしおマサさんは自分がそんなあだ名で呼ばれているとはつゆ知らず、庭仕事までその格好でしていたそうで、草むしりをすると垂れた胸がぷらんぷらんと時計の振り子のように揺れていたらしいです。

 今でも頻繁に思い出話が聞かれるほど、杉山家の中では伝説的存在です。
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